(27)ファジーネーブル
ホテルのパティオにあるクラブからは、ライトアップされたピラミッドと、夜空に掛かる天の川が見えました。
闘四郎は何度もホテルの最上階を仰ぎ見て、蛍たちの姿を探しましたが、何も見えませんでした。
時々上から降ってくる飛沫が、最上階のジャグジーでの激しさ由来であるとは、知るはずもありません。
飲み過ぎたキースとジョッキが部屋に戻った後も、もやもやした気分を振り払おうとするかのように踊っていた闘四郎は、ビアンカという女の子と知り合いました。
ロケット技師の父親の仕事の関係でカイロに来ていたドイツ人でした。
隠そうという意図と、見せようという意図の拮抗するシースルーのワンピースが闘四郎の心を簡単に鷲掴みにしました。
「君、もしかしてこの間のギザ・フェスに行ったりなんかしてない?」
闘四郎はナンパの常套手段を行使します。
「行ったわよ」
ファジーネーブルのグラスに口をつけながらビアンカが答えます。
「俺、出てたんだけど。アイロンズってバンド」
「本当?!」
ビアンカの瞳孔が開きます。
「……素敵!」
クラブの点滅するライトに照らされて、潤うビアンカの目が、闘四郎の目を真っすぐ見つめました。
闘四郎がビアンカの肩を抱いてホテルの部屋に戻ると、ベッドでキースとジョッキが寝ていました。
いびきをかくキースのスカートのポケットからカードキーをそっと抜き取りました。
そして二人は廊下の向かいの部屋へ連れだって入っていったのでした。
夜が明けて二人がベッドの上で毛布にくるまって寝ていると、ドアが開いて、入ってくる人影が……




