(26)童貞キラー
一方、蛍とジュンが二人してエレベーターに乗って消えた後――
ロビーに取り残された闘四郎は……。
「あー、これマジでヤバいんじゃないの?」
闘四郎は急に不安に襲われ、頭を掻きむしりながらロビーを往復し始めました。
「ヤバい、ヤバい、絶対にヤバい!」
闘四郎は二人の後を追おうとして、エレベーターのボタンを押しました。
最上階から戻ってきたエレベーターの扉が開きます。中に入った闘四郎は最上階のボタンを押します。
しかしボタンのランプが点きません。
「何これ、壊れてんの?」
焦ってボタンを連打する闘四郎に対し、冷ややかに無言を貫くボタン。
「すいませーん、店員さーん! これ壊れてるんですけど!」と叫ぶ闘四郎。
迷惑そうな顔をしたベルボーイが慌てず騒がず近づいてきます。
「お客様、どうなさいましたか?」
「これ、ボタンが壊れてるんだけど。ほら」更に強くボタンを押す闘四郎。
「最上階ですか?」胡散臭そうに聞くベルボーイ。
「そう、キングなんとかのスイートルーム」
「申し訳ございません。キング・スイート・グーデンビューのカードキーはお持ちですか?」
「いや」
「最上階へはお部屋のカードキーをこちらのリーダーに通して頂かないと行けないようになっております」
「なんだって!」ダメもとで、ポケットから自分の部屋のカードキーを出してリーダーに通し、最上階を押す闘四郎。まるで冷たい目で見返すかのようなボタン。
「お客様、それはエコノミータイプのお部屋のキーでございますね?」ボタンに同調するベルボーイ。
「エコノミーって何だよ。確かに俺の部屋からの眺めは歌舞伎町のアパホテルと一緒だけど、君、自分でエコノミーって言っちゃダメでしょう」
「いや、正確にはアンダー・エコノミータイプでして」
「んんん……何だとー!」闘四郎はエレベータから飛び出すと「どこだ? 階段はどこだ?」とロビーを駆け回っているところをキースに抱き留められました。
「闘四郎、ほら、蛍ちゃんのことは心配しなくても大丈夫よ。大人なんだから」
「いや、大人だから心配なんだよ」
「どうしちゃったの? 珍しいわね。闘四郎らしくもない」
「どうもこうも、俺はこう見えてメンタルは童貞なんだよ。っていうか俺の童貞を奪ったのは蛍なんだよ。蛍は童貞キラーなんだよ」
「それは初耳ね。ま、でも、外野がジタバタしてもしょうがないわ。今夜は、気分を変えてクラブにでも踊りに行きましょうよ。ここのホテルのクラブは有名みたいよ」キースはそう言って闘四郎の背中を押しました。




