(25)アフターマス
アフターマス(すなわち、数学上の発見を成し遂げた後/AFTER-MATH)のジュンは、名実ともに一皮剥け、抑制を失った欲望をそのまま推進力に変え、27クラブに向けて驀進することになるのですが、それはまた別のお話。
一方で、蛍にとってこの夜は、異なる意味を帯び始めていました。
指は一本も触れさせないというルールは厳格に守らせたものの、「指二本だったら良いですか?」という、理屈としてはもっともな提案を受諾した蛍は、いつしか境界線をなし崩し的に曖昧にしていってしまいました。
もはや「これはギリ浮気ではありません」と宣言することは出来ません。
では、良心の呵責に苛まれたのかというと、そういう訳でもありませんでした。
精神のバランスを保つために、蛍の取った態度、それは「開き直り」でした。
「これちょっと質問なんですけど。もしこれ、私が男性だった場合を想像してもらえます?」
蛍は誰に向けるでもなく、心の中でそう問いかけました。
「こんなの一夜のちょっとした火遊びで済まされる話じゃありません?
これくらいで不貞を働いたとんでもない嫁だなんてレッテル貼られるのはおかしいと思います。
男性なら許されて女性は許されないなんて、今のこの時代に、あってはならないことなんじゃないかしら?」
蛍は、高級女性向け風俗店を後にでもするように、スッキリとした気分のまま、キング・スイート・グーデンビューを後にしました。




