(23)ビンゴッ!
軽くシャワーを浴び、豪華なアメニティーの林立する洗面所でブラレットとロゴバンド・ソングを身に着けた蛍が戻ってくると、もう一つあるシャワールームからローライズトランクスに着替えたジュンが横チン補正をしながら出てくるところでした。
「分かってる? 指一本……」
「分かってますよ……」
「童貞ですから。でしょ?」
「はい」
ジャグジーのあるウッドデッキに出ると、オレンジ色の夕焼けをバックに、大きく歪んだ太陽が砂漠の向こうの地平線に沈んでゆくところでした。
三つのピラミッドが、太陽に向けた顔を赤く染め、融解した太陽の最後の一滴が砂漠に吸い込まれるところを、目を細めて眺めています。
不思議な静寂が降りてきて二人を包みました。
「地球最後の日みたい」蛍がぽつりと言いました。
「最後の日にしませんか?」ジュンが蛍を見つめながら言います。
ドキッとした蛍がわざと大げさに音を立ててジャグジーに飛び込みます。
その横にジュンが滑り込みます。
「でもどうして、金持ちのイケメンが今まで……」蛍がジュンの横顔を点検しながら言います。
「好みがうるさいせいかもしれません」ジュンは真上の群青色の空を眺めています。
「どんな?」
「はい、僕は音楽や文学の趣味を共有できる人じゃないとダメなんです。ドアーズやトマス・ピンチョンの話ができる人に、僕の初めての人になって欲しいんです」
ジュンは真剣に後を続けます。
「そして、もちろんアイロンズのことが好きな人」
「ドアーズのジム・モリソンは好きだな」蛍が言います。
「本当ですか?」ジョンの顔が輝きます。
「あと、ピンチョンの『ヴァインランド』は良かった」
「マジっすか?」ジョンの目がとろんとします。
「当然アイロンズのことは好き」蛍が言うと、ジュンが叫びます。
「ビンゴッ!」




