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スピンオフ『ネルのねるねる大冒険/蛍の逃避行』  作者: きぬごし一兆


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(2)初めて見る砂漠は赤かった

『ネルのねるねる大冒険』本編で当初お母さんの名前は詩織になっていましたが蛍に変更させていただきました。ご了承ください。

 ポーンという音がしてベルト着用のランプが灯りました。

 アラビア語、続いて英語でアナウンスがあり、旅客機はカイロ空港に向けて高度を下げ始めました。

 隣の席の闘四郎はトランジットで寄ったドバイ以降ずっと爆睡しています。

 蛍は自分の太ももの上に置かれた闘四郎の手を闘四郎の膝に戻して、闘四郎のシートベルトのバックルをカチャリとめてあげました。

 先程、雲の上を飛んでいる時は、遠くの太陽がじっと動かないので飛行機が空中で静止しているような錯覚に囚われましたが、今、窓の外では雲が物凄いスピードで過ぎ去っていきます。

 試しにスマホでググってみると、旅客機の飛行速度は秒速300メートルとのことでした。

 秒速300メートルというのは一秒間に300メートル進むということです。

 よーいドンで、300メートルでしょう?

 蛍は一秒間で300メートル進む感覚を想像してみましたが、余り上手くいきませんでした。

とにかくとんでもなく速いということは分かります。

こんな大きな物体が、ジェット噴射っていう何か気体っぽいものを噴射してそれだけのスピードを出すって、ちょっと信じられないし、そもそも空を飛んでいるのだって不思議です。

 飛行機が空を飛ぶ原理は判ってないという話を聞いたことがあるけれど、もし今この瞬間、どこかの物理学者が「飛行機が空を飛ぶということは物理学の法則上ありえないということを証明した!」なんてことがあったら、飛行機は「やっぱ、そうだよね。俺もなんか無理しているなって自分で思ってたんだよ。じゃあ、これから墜落しまーす」ってことにならないかしら。

 心配だわ。

 蛍がそんなことを考えていると、旅客機は雲を抜けました。眼下に砂漠が広がっています。

 砂漠の砂って随分と赤いのね。蛍はそう思いました。

 江の島とかの海岸の砂の色とは違って、禍々(まがまが)しささえ感じます。

 蛍は家族を残してアイロンズのライブツアーに来てしまった自分の心の中にも禍々しいものが渦巻いているのを感じない訳にはいきませんでした。


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