(19)ピラミッド深く
「ジュン君、後でホテルでゆっくり話さない?」
その言葉を聞いた瞬間、闘四郎の身体からさっと血の気が引きました。
蛍が俺を近づけないのは、倫理観のせいであって、本当は俺のことが好きなんだ――しかも俺だけを。
そんな都合のいい思い込みを、自分は疑いもせず抱いていたのだと、そのとき初めて思い知らされたのです。
闘四郎は薄暗い通路をトボトボと進みながら考えます。
昔、蛍と付き合ってた頃、さんざん浮気してたのは俺だったものな。
その頃、蛍の痛みになんて全然気付いていなかった。
蛍と抱き合う瞬間が、俺にとって一番尊いものだった。
それはエッチなんてものじゃなくて、俺の全てをさらけ出し、それを全て受け入れて貰う瞬間であり、蛍がさらけ出した全てを受け入れる瞬間だった。
そのことを蛍も分かってくれていると勝手に信じていた。
でも、蛍は俺から去った。
今の俺を見てみろ。
あんなちんけなコスプレ野郎に色目を使う蛍を見て、蛍がちんけに見えてきたじゃないか。
蛍への気持ちなんてもう全然冷めちまったよ。
あの頃の蛍も、きっと今の俺と同じ目で俺を見ていたんだろうな。
ピラミッドの横穴を奥に進むにつれて、肌に触れる空気が次第に冷えていくのでした。




