(18)ジュン
人類の馬鹿の内部に入った四人はまず横穴を進みます。
すると向こうから出口に向かって歩いて来た日本人の青年が蛍を見て急に立ち止まりました。
「蛍さんですよねっ! 僕、焼売フェスの時からのファンなんですっ!」
そこに立っていたのは、ダークブラウンのつばの広い中折れ帽、レジャージャケット、ワークブーツという出で立ちの青年でした。インディ・ジョーンズのコスプレ?
「焼売フェスって、もう18年も前のことじゃない!」蛍が驚いて言います。
「はい、アイロンズがまだ混沌飴だった頃です。最古参ですね。僕はまだ7歳でした。母親に連れられて行ったんです」
「どうしてここに?」
「勿論、ギザ・フェスに蛍さんの復帰したアイロンズが出るっていう情報を耳にしたからですよ」
「そうなんだ。ありがとう」
「感激です。蛍さんに会えるなんて。『ギザの花嫁の踵に三つの四角錐』最高でした」青年は無意識に股間をまさぐりながら、もじもじしています。
「今『赤い砂漠の三角広底球形屋根丸塔』っていう曲の歌詞考えてるところなの。期待してて。本当は側台塔回転二側台塔欠損斜方二十・十二面体にしたかったんだけど、ちょっと長すぎるでしょう?」
「三角広底球形屋根丸塔でも十分長いですけど」
「いっそ三角木馬にしちゃったらどうかしら?」キースが口を挟みます。
「『三角木馬に乗って、君は』なんていうラブバラードどうかな?」闘四郎は蛍と親しげに話す若い男に警戒心と嫉妬心の一瞥を投げ掛けながら言いました。
「いいかも」と蛍。
目の前の可愛い青年を三角木馬に乗せ、鞭を振るう自分を想像して、ジュン、としてしまう自分がいました。
「握手して下さい! 僕、ジュンっていいます」青年が目を輝かせて言いました。
「ジュン君、後でホテルでゆっくり話さない?」
蛍はジュンの両手を握りながら微かな男の香りを探っていました。




