(11)側台塔回転二側台塔欠損斜方二十・十二面体
アイロンズはカイロのライブハウスで演奏した一週間後に、ギザ・フェスに出演しました。
これはギザのピラミッドをバックにした世界規模の音楽フェスです。
栃木県で開かれる地下アイドルの祭典、ギョーザ・フェスとは全くの別物です。
アイロンズは一年前からオファーを受けていながら、直前にボーカール兼ギタリストが追放されたので、出演不能の危機に陥っていました。
しかし、蛍の復帰で数万の観客をとち狂わせることができたのです。
フェスにはシベリアの先住民族バンドのオティケンや、ワールドミュージックバンドの3ムスタファ3も出ていて、熱烈ファンのキースは舞台裏でサインを貰って感激していました。
ギザ・フェスの翌日、ジョッキは残存アドレナリンで眠れなかったメンバーを尻目で一瞥しながら、ホテルを出ました。
行先はピラミッドの見えるKFC。すなわちケンタッキー・フライド・チキンです。
窓外のピラミッドを見ながらコーヒーを啜っているジョッキが何やらつぶやいています。
「それにしても、四角錐、それは底面積掛ける高さ掛ける三分の一、それが三つで三掛ける、だったらそれは四角柱、って確かにそうだけど不思議だな。同じ底面積で同じ高さの四角錐と四角柱では体積が3倍も違うってことでしょう? いやー、どう考えても3倍は無いよね。2倍よりは大きいような気もするけど」
ジョッキはスマホで四角錐のことを調べているうちに、ジョンソンの立体なるものの存在を初めて知りました。
「なになに、ジョンソンの立体とは整面凸多面体のうち、正多面体、半正多面体、アルキメデスの角柱、アルキメデスの反角柱以外のもの……か。なるほどわからん」
でも添えられた投影図や展開図を見ると、どういうものか納得できました。
たとえば、ジョンソンの立体の一つである正四角錐(ピラミッドっぽい立体)は底面の正方形、側面の正三角形、どの辺の長さも一緒です。それから正三角台塔なるものは底面の正六角形の各辺から正三角形と正方形の側面が交互に立ち上がり、上に正三角形の蓋をしたような立体です。
要は各面の形は様々でも辺の長さが一緒の立体のようです。
「ふんふん、こういうのが92個あるというのか。
三角広底球形屋根丸塔という奇天烈名称の立体は正三角形が13個、正方形が3個、正五角形が3個、正六角形が1個。
側台塔回転二側台塔欠損斜方二十・十二面体なんてのもあるぞ!
速綾三回旋順交順を思い出すな!」
ジョッキは中高時代に体育の授業で盛り上がった縄跳びのことを思い出しました。
「こうしちゃいられない。ジョンソンの立体のことをメンバーに教えてあげなくちゃっ!!」
ジョッキはやっと眠りについたメンバーを叩き起こすべく、コーヒーを「飲み残しはこちら」の穴にカップごとぶち込むと、ケンタを飛び出していきました。




