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エンディング

あすか:(スタジオ全体を見渡し、感慨深げに)「皆様、活発なご意見、そして視聴者からの真剣な問いへのご回答、本当にありがとうございました。トロッコ問題という、たった一つの思考実験から始まった今日の議論は、功利主義と義務論という二つの大きな倫理観の対立を浮き彫りにし、さらには政治における理想と現実、効率と人間性、そして、私たち一人ひとりが持つべき『正義』とは何か、という深遠なテーマにまで及びました。」


(あすかは、優しい眼差しで視聴者に語りかける)


あすか:「おそらく、この問いに唯一絶対の『正解』というものはないのでしょう。立場が変われば、時代が変われば、あるいは個人の経験によっても、その答えは揺れ動くのかもしれません。しかし、大切なのは、安易な答えに飛びつくのではなく、様々な視点があることを知り、悩み、考え続けること。そして、異なる意見を持つ相手とも、こうして対話を続けることなのではないでしょうか。今日の偉人たちの言葉が、皆さんがご自身の『倫理の境界線』について考える、一つのきっかけとなれば幸いです。」


(あすかは対談者たちに向き直る)


あすか:「それでは最後に、今日の議論を終えて、対談者の皆様から一言ずつ、メッセージをいただけますでしょうか。まずは、ベンサムさん、お願いいたします。」


ベンサム:(背筋を伸ばし、確信に満ちた表情で)「今日の議論を通じて、様々な意見があることは理解しました。しかし、それでもなお、私は確信しています。社会が進歩し、より多くの人々が幸福になるためには、感情や古い慣習に惑わされず、合理的な『計算』に基づいて判断することが不可欠である、と。功利主義こそが、人類をより良い未来へと導く、最も確かな羅針盤なのです。」


あすか:「ありがとうございます。続きまして、カント先生。」


カント:(穏やかな、しかし力強い声で)「結果がいかに魅力的であろうとも、道徳の法則を曲げてはなりません。人間が人間である所以は、自らの理性に照らして普遍的な義務に従い、互いの人格を目的として尊重しあう点にあります。どうか皆さん、目先の利益や感情に流されることなく、常に内なる道徳法則の声に耳を傾け、人間としての尊厳を守り抜いていただきたい。それが、真に価値ある生き方だと、私は信じています。」


あすか:「ありがとうございます。では、マキャヴェッリさん。」


マキャヴェッリ:(いつもの皮肉っぽい笑みを浮かべながらも、少しだけ真剣な眼差しで)「ふん、理想論ばかりでは世の中は動かん、ということは、今日の議論で少しは伝わったかな?世界は綺麗事だけでは成り立っていない。時には、手を汚し、非情な決断を下す覚悟も必要だ。それを忘れては、どんな立派な理念も絵に描いた餅に過ぎんぞ。まあ、今日の議論自体は、なかなか刺激的で退屈せずに済んだがな。」


あすか:「ありがとうございます。最後に、リンカーン大統領、お願いいたします。」


リンカーン:(誠実な眼差しで、ゆっくりと語りかけるように)「今日、私たちは異なる時代、異なる立場から、それぞれの正義や信念を語り合いました。意見の対立もありましたが、それぞれの言葉に、学ぶべき点があったと感じています。人間は完璧ではありません。過ちも犯しますし、迷いもします。しかし、だからこそ、互いの声に耳を傾け、共感し、より良い道を探し続けることが大切なのではないでしょうか。困難な時代であればあるほど、理性と共に、人間性…他者を思いやる心を失わず、希望を持って未来へと歩んでいきたいものです。」


あすか:(深く頷き、全員を見渡して)「皆様、心のこもった、そして示唆に富むメッセージ、本当にありがとうございました。」


(あすかはカメラに向き直り、優しい笑顔で)


あすか:「偉人たちの魂の声、いかがでしたでしょうか。時間はこの特別な空間でも流れていきます。名残惜しいですが、『歴史バトルロワイヤル』、今宵はここまでとなります。」


(スタジオの照明がゆっくりと落ちていく)


あすか:「また、時空を超えた場所でお会いしましょう。さようなら。」


(あすかが深々とお辞儀をする。感動的なBGMと共に、エンドロールが流れ始める。)

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― 新着の感想 ―
 漫画『勇午』(講談社刊[原作:真刈信二、作画:赤名修])のインドシナ編やUK編を思い出す作品でした。
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