モテの価値観
さて、前話では一晩中ウンコを垂れ流すという失態を犯した私であるが、そんな姿からは想像もできないほどにモテた時期がある。……小学生の頃の話であるが……。
小学生の男子は足が速ければモテるという定説に、私は異を唱えたい。思うに、あれは足が速いからモテるのではなく、足が速い、延いては運動神経がいいのはすごいことだという普遍の価値観があるからこそ得られる地位・自信のおかげでモテるのではないか。
もし小学生の間で「勉強ができることは運動神経がいいことよりも数百倍すごいことだ」という価値観に塗り変わったとすると、運動神経は悪いが勉強のできる子はメキメキと自信をつけてあっという間に運動神経がいい子を追い抜きモテるようになるのではないか。そしてその頭脳を駆使して女子を侍らせ、この世の人間をIQごとにランク付けをし始める……。
……あれ、これは現実でもう起きているな。偏差値はその最たるものだろう。
はて、何の話がしたいのか自分でもわからなくなってきた。
とにかく、価値観には大きな力がある。
私は「足が速ければモテる」という価値観の恩恵を受けた男の一人である。
とにかく私は足が速かった。そのことを示すエピソードを一つ紹介したい。
あれは確か、小学五年生の時だった。
私の家から学校まで徒歩で10分ほどかかる。そして学校から私の家の反対方向に20分ほど歩くと祖父母の家があった。祖父母の家では小さな町工場を営んでおり、母もそこで働いていたので私は毎日祖父母の家に帰っていた。
祖父母の家までまっすぐな道で車の通りもほとんどなく、私は毎日そこを走った。足が速くなったのはそのおかげかもしれない。
その日もランドセルを派手に揺らしながらせっせと走っていると、前方に高校生と思われる男子二人組が歩いていた。私が特に気にせず彼らを追い抜くと、ざっざっと後ろから足音がついてくる。振り向くと、二人が私を追いかけてくるではないか!ここに、小学生vs高校生のデッドヒートが始まった。
走ることにおいて、私は自信とプライドを持っていた。一年生から五年生まで、運動会ではリレーの選手だったし、徒競走でも常に一位だった。自分が走りで負けるわけがないと信じて疑わなかった。
相手が高校生であろうが関係ない。私は足に力を込めて地面を蹴り続けた。今日は調子がいい、まるで背中に羽が生えているみたいだ!後ろから小さく声が聞こえる。
「やべえ、速ぇ……」
「追いつけねぇ……」
しばらくすると足音は聞こえなくなった。後ろを見ると、二人はもう歩いていた。勝ったのだ、小学生が高校生に!あの時は本当に嬉しかった。次の日に学校でも自慢したのを覚えている。(小学生の調子乗りだと思って暖かい目で見ていただきたい)
今はもう、あの頃の走りは見る影もない。本気で走ったことなんて、もう五年はないだろう。椅子から立ち上がる時には膝の骨がパキッと鳴るし、そもそも二分間走り続ける体力すらあるかどうか……。
あーあ、膝の骨が鳴る音がセクシーだなんて価値観、広まらねえかなあ。
この話、ぐだぐだすぎる………
殴り書きですが読んでいただけるとありがたいです