66話
「今日はなんかいい感じのやつがいないなぁ………」
星と月が綺麗な夜の異世界を旋回しているストームドラゴンのドラが不満そうな声をあげた。
異世界の森を魔物を探して飛んでいるのだけど、ちょうどいい強さの魔物が見つかっていない。
白いゴブリンが2頭連れでいたからあれはどうかと聞いてみたら、あんな弱い魔物を相手にするために、わざわざ地上に降りるのは嫌だとドラに言われた。
本に書いている通り、やはりドラゴンと言うのはプライドが高い生き物だ。
俺とシャルルはまだ魔物と戦った経験が無いので弱い魔物の方がありがたい。だけど乗せてもらっている立場で、アレコレ言うのは良くないと思ってあまり言わない様にしている。無理そうだったらさすがに言うけど。
「もう今日はこのあたりにしておいてもいいんじゃないの?」
「なんでよ!まだ一度も戦ってないじゃないの」
俺の弱気な発言に対してシャルルが即座に言ってきた。
「ちょっと前から風が吹いてきたせいで寒くなって来たよ。学校も道場もあるのに風邪でも引いたら大変だよ。ね、シャルル」
「私は寒さなんて感じてない」
固い声でシャルルが言った。
この方も魔物と戦いたくてしょうがないから、無理してそう言っているに違いないと思う。
ドラの背に野ッと空を飛ぶという事で、一応寒さ対策をしてきたので俺はまだ大丈夫なのだが、シャルルは普段とそこまで変わらないように見える。
「けどさっき「うー、寒い」って言ってるのが聞こえたんだけど」
「そんなこと言ってない!」
「聞こえたんだけどな」
「言ってない!」
確かに聞こえたんだけどな。というか聞こえたからそろそろやめにした方が良いって言ったんだよな。
「あれ!?」
「どうしたのよ」
「さっき向こうの方で何かが光った気がする」
地上の森の方向を指さす。
「見間違いじゃないの?人が住んでそうな気配なんてないんだけど」
「チカチカって光が瞬いた気がしたんだけどな。ねぇドラ、ちょっとそこに行ってみてくれない?」
「そこってどこだよ」
どこと言われても目印がないから説明するのが難しいな。
「あ、また光った!」
「本当?私は全然見えなかったわ」
「あそこだよドラ、あそこ」
「あそこって言われても分かんないって!」
苦労しながらもなんとか光の瞬く方へ向かって飛んでもらう。
今度もしこういうことがあった時のために、ドラに行きたい場所を分かってもらう方法を考えておいた方が良いかもしれないな。
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地面に降り立ったレイが得意げな顔で言う。
「ほら!やっぱりあったでしょ?」
光に導かれてやってきた森の中には横長の洞穴の入り口があった。
「これってただの崖の割れ目とかじゃないわよね」
「中から魔力のにおいがするぞ」
鼻をクンクンさせながらドラが言う。
「っていうことは中に魔物がいるっていうこと?」
「多分ここはダンジョンの入り口なんだよ」
レイが答える。
「なんでそんなことが分かるのよ」
なんでと言われても………確かになんでそう思ったんだろう。自分でも分からない。
「ねぇ、なんでわかるの?」
「あの、なんとなく………勘で」
「なんなのよそれ」
確かにまあ、呆れられるのもわかる。
「入ってみようよ」
「なんでよ!?」
「シャルルは魔物と戦いたいんじゃないの?」
「それはそうだけど………」
「もしこれが今まで誰にも踏破されてないダンジョンだったらすごいよ。一番最初の宝箱からは一番いいアイテムが出て来るんだから」
「っていうかなんでそんなにやる気なのよ。ちょっと前まではすごい嫌がってたくせに」
そう言われてみればそうだ。だけど何だかここにはすごく良い物ががあるような気がするんだ。
「二人で行って来いよ、俺は外で魔物を探してるから」
「ドラは行かないの?」
シャルルが聞く。
「俺はこういう狭いところが嫌いなんだ。狭くて暗くてジメジメしてるこんなとこは俺みたいな偉大なドラゴンには似合わない。大空を羽ばたく空の王者が俺たちだぜ?」
たしかにこういう狭い所にドラは似合わないか。
「それじゃあダンジョン探査と行こうじゃないかシャルル」
「なんでだろう………」
シャルルが首をひねる。
「あんたがやる気になってるのを見ると、私のやる気は下がっていくのよね」
「行かないの?」
「行くわよ!」
ぶつくさ言い続けているシャルルと一緒にダンジョンの中へ足を踏み入れた。




