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60話

 


「はらへった!」


 声が聞こえる。どう考えてもこいつしかいないよな、まさかハロルドがそんなこと言うわけは無いし。


「はらへった!おまえ、肉、くわせろ!」


「俺は肉じゃないぞ」


「はらへった!おまえ、肉、くわせろ!」


 駄目だ話が通じない。魔物が乗っている本を読めば大抵はドラゴンは賢いと書いてあるので期待していた。


 というのも、昔からドラゴンの背中に乗って戦う竜騎士に憧れていたから。いやいや、こいつはまだ幼体だからだ。何歳かは分からないが年齢によっては言葉を話せているだけですごい、ということも十分に考えられる、ガッカリするのはまだ早い。


 それにしても耳が痛い。血は止まって乾いてきているが、それでもまだズキズキ痛む。


「ハロルド、こいつ腹が減っているみたいです」


「お前、こいつが何を言っているのか分かるのか?」


 どうして驚いた顔をしているんだろう、片言ではあるがさっきからしゃべっているじゃないか。


 もしかして………。


「ハロルドには聞こえないのか?」


「聞こえん。さっきから「シャー」とか「シュー」とかしか言ってないじゃないか」


 マジか!?


 まさか俺って魔物使いの才能があったりするのか?!


 それだったら一大事だぞ。魔物を知液出来ることが出来る人間がいるというのは聞いたことがあるが、それはほとんど伝説か作り話とかのレベルだったはずだ。


 それならもしかして竜騎士になることも可能なのか?!


「そのチビ助はなんと言っとるんだ?」


 そうだ。


 もし俺が竜騎士の才能があったとしてもこいつはまだだいぶ小さいから、乗れるようになるには何年もかかるだろうな。


「こいつは俺を喰おうとしています」


「なんだ、そのチビ助は腹が減っているのか」


 腕組みをしているハロルドが頷く。


「浄化肉ならあるぞ。そいつに喰わせてやったらどうだ」


「浄化肉をですか?」


 なぜ?


「ちょうど魔物に浄化肉を喰わせたらどうなるか、試してみたかったんだ。そいつが腹ペコならちょうどいい。早速やってみよう」


 つまりハロルドはこの機会に実験をしようとしているらしい。なんだかハロルドがマッドサイエンティストに見えてくる。


 怖っ。


「よし、待っとれよ」


 そう言うとハロルドはすぐに隣の部屋に行って、不自然な赤色をした浄化肉を皿に乗せて持って来た。


 皿なんか必要か?と思ったが、浄化肉は浄化液でびちゃびちゃなので、そのままだと本とか書類を汚してしまうと思ったのかもしれない。



「ほらチビ助、肉を持って来たぞ食え」


 そう言いながら近づいていくと、すぐに「シャー!」と言う音が響いた。


「おおぅ、驚いた。小さいくせに随分と狂暴じゃないか」


 慌てふためきながら戻って来た。


「シャー!」


 大分警戒しているようだ。この分だと食べないかもしれないな。魔物は基本的には人間には懐かないと言われているから。


「チビ助、この肉喰わないのか?」


 聞いてみる。


「いらん、いらん、いらん!」


「ものすごくおいしい肉なんだけどなー」


「肉はニンゲンにもらうもんじゃない!」


 小さいながらもプライドがあるらしい。さすがに猫や犬みたいにはいかないか。


「おれはじぶんでくう、お前をくう!」


「俺を喰うな!」


「くう!くう!」


 駄目だこいつ。ドラゴンが賢いという情報はどうやら出まかせだったらしい。


 さてどうしたものか。こっちとしては耳を齧られたわけだから、放っておいても良い気もするが、相手が言っていることが分かるとなんだか情が湧いてくる。


 飛べないほど弱っているのは事実なのだから、食べて寝て体力を回復させて元気になってもらいたい。


 それならこの作戦はどうだ?


「それじゃあこのおいしい肉は俺が食べちゃおーっと!」


 本当にドラゴンが賢いならこんな手には引っかからないとは思うけどな。


 そう思ってちらっと様子を見てみたら、チビ助は口を開けたまま何も言わなかった。


「勝手にしろ」とか言われるかと思ったがそうでもないようだ。


「よかったーちょうど腹ペコだったんだよな。このおいしい肉は全部俺のものだ!おれがもらった!」


 そう言いながら皿に手を伸ばす。


「シャー!」


 唸り声をあげられたので、手を引っ込める。危ない、なんだかもう少しで飛び掛かって来そうだった。こいつ、小さいけれどスピードはあるな。まさかコブラみたいに毒液を吹きかけてきたりしないだろうな。


「あれーどうしたんだ?これはもう俺の肉なんだぞ?」


 少しビビっていることは見せないようにして煽る。


「おれの肉とるな!」


「お前の違う、俺の肉、だ」


「おれの肉!とるな!」


 もう一度さらに手を伸ばそうとしたその時。


 食べた。


 浄化肉を食べた。


「おれの肉!おれの肉だ!」


 さっきの食べない発言は何だったのかと思うほど、すごい勢いで食べ始めた。


 取りあえず作戦成功。


 外傷は無さそうだから、飯を食って寝れば元気になるんじゃないだろうか。


 そしたらきっと空を飛ぶ元気も出るはずだ。いまでも十分に元気に見えるけど。自分の体よりも大きいくらいの肉をガツガツ食べているからな。これ以上元気になったらどうなるんだろう。


「うまいか?」


「まずい!へんな草のにおいがする、まずい!」


 そういえば浄化液は薬草とか茸とかを配合して作っていると言っていた。どうやら味覚もしっかりとあるようだな。


 これは魔物図鑑には書かれていない貴重な情報だ。


 役に立つかは知らんけど。




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