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58話

 


 レイとカネナリとラーテルの3人は荷物を抱え、王立ワシントン学園の大きな門の前に立っている。


「はえー!やっぱすげーな。これが王立ワシントン学園、この国の中で一番いい学校だろ?すげーよ、すげよマジで」


 口を大きく開けているのが強盗の群れにひとりで突進していったラーテル。あのあと、理詰めで説教をしたので反省していると思っていたのだが、この様子を見るともう忘れているかもしれない。


「こんなお城みたいな学校に通えるなんてうらやましいよ」


 言われてみて気付く。


 確かに自分が初めてここに来た時には広い敷地と、ヨーロッパの城風の校舎に驚いていた。それが何度も通ううちに当たり前になり、ただの風景になっていた。 


「レイ頼む!」


 急に両手を合わせて頭を少し下げてきた。


「前にここを通った時から一回で良いから、この中に入ってみたかったんだよ。頼むからなんとかできないか?」


 それはどうだろうか。


 門の前には衛兵がいて、部外者が学園の中に入れないようになっている。この学園は王子や貴族の子弟が通う場所だから安全面はかなり厳しい。


 衛兵に聞きに行ってみるとなんとOKだという。今日は学園が休みなので1時間くらいと言う制限付きだが、生徒の知り合いなら入ってもいいそうだ。


 思っていたよりも全然厳しくないんだな、大丈夫かこの学園。


 早速名簿に記入してから学園の中に入っていく。ラーテルはいちいち大きなリアクションをしながら歩いて行く。学園は広いのである程度早歩きじゃないと往復で一時間と言うのは結構ギリギリだ。


 ラーテルが抱えている大きなリュック。その中にはストームドラゴンの幼体の死骸と市場で買った魔物の肉、そして強盗たちから奪った魔武器や魔道具が入っている。


 奪ったというか、もう強盗なんてできないように取り上げたというか。こういうのは買えば結構な値段になるので、慰謝料としてありがたく利用させてもらおう。


「ところでラーテルさぁ」


「なんだ?」


「何回か相手の攻撃を貰ってるように見えたんだけど、本当に大丈夫なのか?」


「全然大丈夫だよ。俺の皮膚って分厚くてしっかりしてるから剣が当たっても切れないんだよ。次の日にちょっと腫れたりとかはするけど」


「不思議な体質だけど便利だよな」


「けどさぁ………」


 ラーテルの眉間にしわが寄る。


「さっきの戦いでちょっと反省したな」


「なにを?」


「だってレイもカネナリさんもスゲー強いんだもんな。もし俺がカネナリさんのあの槍でぶん殴られたら無事じゃすまないような気がして、鳥肌が立ったんだよ」


 たしかにカネナリの活躍はすごかったな。強盗の半分以上は倒していたはずだ。


「相手が弱すぎたでしょ。明らかにあいつら素人で身体強化もまともに使えてなかったし。あんまりやり過ぎないように魔力を通さないように気を付けてたくらいだよ。腕とか足とかバンバン飛んでったらさすがにグロいでしょ」


 確かにその映像は結構きついな。強盗とは言えある程度ボコったら許してやるつもりだったから、丁度いいくらいかもしれない。いままで一緒にいてみてカネナリと言う男はなかなか空気を読める男だというのは知っている。


「レイの体捌きも上手かったな。動きながら相手の横を取って攻撃を貰わない様にしてただろ?」


 見られていたことに少し驚く。戦いに夢中で、周りが見えていないんじゃないかと思っていたから。


「レイには怒られたけどさ、俺って戦いになると頭がカッとなって突っ込んで行っちゃうんだよ。どうにか直さないとマズいよな」


 まあ確かにそれは良くないな。


「けど俺は消極的すぎるって良く怒られているからね」


「そうなの!?」


 実はそうなのだ。


 自分自身では良いと思っているのであまり変える気は無いのだが、シャルルの道場は、戦いの上での気合と攻撃の積極性を重要視しているので結構怒られる。


「俺ももっと強くなりたいよ」


 十分に強いとは思うけどな。ラーテルは骨格からしてまだまだ子供。それなのにソロで冒険者をできているのは凄いことだと思う。強盗に対しても怯まずに何人も倒していたし。


「それなら鶏肉をたくさん食べた方が良い」


「鶏肉?」


「ラーテルは線が細すぎるんだよ。タンパク質をちゃんととらないと筋肉がつかないぞ」


「たんぱくしつ?」


「筋肉の元になる成分のことだよ。魔力があるとは言っても体格が良くて困ることなんかないんだから食べるものはしっかり考えて行かないと損するぞ」


「レイってなんだか難しいこと知ってるんだな」


 意外そうな顔をして見てくる。


「俺なんか全然腹も減ってないのに、道場の稽古の途中の休憩時間に鶏肉を食べてるから」


「そんなことやってんの?」


「そりゃそうだよ、強くなりたいからね」


「そうか………俺も強くなりたい」


「それなら鶏肉を食べた方が良い。運動したらすぐに食べるといいんだよ」


「確かにレイってすごい体格良いもんな」


 ジロジロと上から下まで舐め回すように見る。


「これも全部鶏肉のおかげ。ラーテルももっと筋肉付けた方が良いんじゃないの?」


「俺も食うよ鶏肉!」


「いっぱい食べろ。食べたくなくても食べろ、強くなるために食べろ」


「わかった!今日からいっぱい鶏肉食べるよ」



 楽しく話しながら学園の中を歩いて行く。




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