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52話

 


 魔道具を安全に強化するという前代未聞の実験は大成功に終わった。


「それではやはりこの研究を世間に公表するつもりは無いんですね?」


 レイフェリックスが聞く。


「無い。ワシは実験が成功してくれただけで満足だ」


「公表すれば先生の名前は世界に知れ渡って大きな名声を得られますよ?」


「いらんいらん、そんなのはワシにとって一番もいらん物だ」


 首を振ると顔の半分を覆う白いヒゲが揺れる。


 ツルツル頭で白いヒゲを生やし分厚い眼鏡をかけたこの老人は魔道具技師のハラトロ・モス。


 この国で最も優れた魔道具技師と言われる人物で、人嫌いの権力嫌いとと言われているがレイと話している姿はそう気難しい人物には見えない。



「何かを得れば何かを失う。ワシはもうこいつを作った時の様な騒ぎは二度と起こしたくない」


 魔道具技師のハラトロ・モスが手に取ったのは「魔力含有測定装置」。この装置を使えばたちどころにそれがどの程度の魔力を含んでいる物なのか測定できる装置だ。


「ハラトロ先生が完成させたこの装置の権利を貴族に奪われてしまったんですよね?」


「そうだ。今まで金を出してやったんだからと理由を付けて全部を持っていった。それだけじゃないぞ、裁判だなんだでとんでもない手間と時間を持っていかれた。そんなことをするくらいなら、少ない研究資金で細々と好きな研究を続けていきたいんじゃ」


「わかりました、それでは内緒にしておきましょう」


「さすがはレイだ」


「あの、ところで………」


「どうした?」


 言いにくそうなレイに聞く。


「魔道具に浄化した魔物の肉を食べさせて強化するというこの実験はもうやめてしまうんですか?」


「いや、一応成功はしたがまだ完全とは言えないからな。魔道具によって浄化肉を喰う魔道具とそうでない魔道具の判別ができないという大きな謎があるあるからの」


「そうですか、それを聞いて安心しました」


「何かやりたいことがあるのか?」


「あります。僕としてはこの杖の魔道具は気に入っているので、出来る限り強化を続けて戦いに役立てたいと思っているんです。もちろん先生が認めてくれればですけど」


「なんだそんなことか。ワシとしてもひとつの魔道具がどれだけの量の浄化肉を喰うかという実験はしたいと思っていたから、それならお安い御用じゃ」


「ありがとうございます。この魔道具がさらに強力な魔道具になってくれれば僕も嬉しいです。ぜひよろしくお願いします」


「しかしひとつ問題があってな………」


「問題というのはなんでしょうか」


「金だよ金、研究資金じゃ。さっきは偉そうなことを言ったが、その杖に食わせたガレズロードリスの肉を買うには有り金のほとんどをはたいたんじゃ。強い魔力を持った魔物の肉を喰わせたほうが魔力含有数の変化が分かりやすいと思ったからな」


「そうだったんですか………僕の貯金、少しだったらありますけど」


「いやいや、いくらなんでも子供に出してもらうのはワシのプライドが許さない」


 そう言って腕を組むハラトロは頑固そうな顔になった。


 これが悪化すれば人嫌いの権力嫌いと言われるようになるのだろう、というのが分ったので、このアイディアはすぐに諦めてレイは考えを変えることにした。


「何か売れるものとかがあればいいんですけど」


 部屋の中は魔道具や本や書類などで溢れている。


 この国で最も優れた魔道具技師と言われているハラトロなのだから、高値で売れるようなものを持っていたとしても不思議ではない。


「そういうことは今まで何度もやってきていてな。いまこの部屋に残っているのは二束三文にしかならないものか、絶対に手放したくないものしか残っていない」


「困りましたね………」


 すぐに思いつくのはアーサーに頼むこと。アーサーはこの国の第12王子なのでもしかすれば用意してもらえるかもしれない。


 けれどハラトロはそれを嫌がるだろうと思った。自分が発明した「魔力含有測定装置」の権利を貴族に奪われたという過去を持っているわけだし、金を借りることにすれば、この研究のことを話さなければならない。


 もしそうなればあっという間に話が大きくなってハラトロは静かに好きな研究をすることは出来なくなる。それは望むことでは無いはずだ。


 杖を売る気は無いし、浄化肉は売れない、ほかに売れるようなものは………。


「浄化液を使って浄化できるのは魔物の肉だけですか?」


「それはどういうことだ?」


「例えばですけど、この世の中には強力すぎて誰にも使うことが出来ない魔武器が沢山あると聞きました。そういうのは呪いの魔武器と呼ばれているそうです」


 鬼婆に連れ込まれたあの忌まわしき蔵の中にあったのはそういう類のものだと思っている。だからただそこにあるというだけで、あれだけ恐ろしい念を放っていたのだろう。


「そういったものを浄化して売ることが出来れば、かなりの金額になるんじゃないかと思うんですが」


「なるほどな、それは考えたことも無かった」


 腕組みをしながら顎髭を扱きながら考えている。


「しかしそれは難しいだろう」


「どうしてですか?」


「強力な魔力を持った魔物の肉が危険なのはその魔物の残留思念が原因だと言われておる。それに対して魔武器には悪魔の魂が憑りついていると言われている。このふたつは全く違うものだとワシは思う」


「そうなんですか」


「したがって魔物の肉を浄化するために作った浄化液で魔武器の呪いを解くことは出来ない。もちろんやって見るまでは絶対にそうとは言い切れないがな………」


 魔道具技師であり浄化液を作ったハラトロが言うのだからその通りなのだろう。いいアイディアだと思ったのだけど残念だ。他に何か金を稼ぐことのできる手段は無いだろうか。


「しかしレイのおかげでいいアイディアが思い浮かんだぞ」


 嬉しそうな顔をしながら白い髭をぐいぐい引っ張っぱる。


「魔武器を浄化することは出来ないが、ほかに浄化できそうなものがある。しかもそれは頻繁に、しかもなかなかの高値で取引されるものだ」


「すごいじゃないですか!それはなんですか?」


「魔石だ!魔物が残す魔石を浄化して売ればいい。魔道具を使うために頻繁に利用される魔石なら簡単に手に入る上に売るのも簡単だ。うまくいけばとんでもない大金が入って来るぞ!」


 ハラトロは興奮して叫んだ。



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