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50話 

 


 王立ワシントン学園に入学して1年が過ぎて、レイ・フェリックスは無事2年生となった。


「新しい制服はやっぱり気持ちがいいな」


 朝の光が差し込む新しい教室の中で大きく伸びをする。一年生の時のクラスがそのまま2年生に上がったのでクラスメイトに対して緊張しなくていいのが嬉しい。


 このクラスは一般人から入った生徒と、貴族の中でも魔臓を持たない生徒を合わせて出来ているクラスなので入れ替わることが無いのだ。



「あんたもしかしてまた体が大きくなったんじゃないの?」


 黒髪天才剣術少女のシャルル・ド・ゴールが言う。


 このクラスの中で彼女だけは例外で、貴族の家系であり魔臓も持っていながらこのクラスにいる。本来ならばは他のクラスに入れられるところを、無理やりねじ込んだらしい。


 剣術の腕もかなり上達していて、スピードに加えて最近はパワーも身に付けだしているのでこの学園の中でも一目も二目も置かれる存在となっている。



「まさかそんなはずないと思うけどな。服屋さんでサイズを合わせて大きめで作ってもらったのが、ほんの一週間くらい前なんだから」


「その割にはなんだかぴったりサイズに見えるけど」


「うーん、そう見えるか?」


「見える」


「実は僕も薄々そうじゃないかとは思ってたんだ」


 レイの最近の悩みは体の成長速度が速いことだ。この学園に入った時には、クラスの男子生徒の中ではある程度背が高いだけだったのに、今では一番背が高い。それも頭一つ分くらい大きくて一緒に並ぶと目立つほどだ。


 学園に入ったばかりの頃は、一般人ということで上級生から目を付けられがちだったのだが、最近はむしろ避けられるようになってきたほどだ。


「けど武術家としては良いことじゃないの。体が大きければリーチも長くなるから間合いが遠くなって有利だわ」


「まあ確かにそれはそうなんだけどね。ただ、買ったばっかりの服がもう大きくなったなんて言ったら母親に嫌味を言われるかもな」


「なんで?また買えばいいじゃないの」


「OH my God!」


「また分かんない言葉を使ってる」


 そりゃあ英語だって使いたくもなるさ。あんたらみたいな貴族には一般庶民の生活は分からないのだよ。


 服が小さくなったらまた買えばいい、思いきりマリーアントワネットそのものじゃないか、そのうち処刑されるぞ。思うだけで言わないけど。


「というかシャルルさぁ………」


「なによ」


「廊下にお前のことを見に来ている奴らが沢山いるんだけど」


 そう。


 この学園に入ったばかりの頃はそうでもなかったのだが、シャルルのことを見たいという他のクラスの生徒が、廊下に集まるようになってきているのだ。


「そんなこと言われても私は知らないし」


 少し怒ったように言う。


 もちろんそれは分かるんだけど俺としては前世のことを思い出す。あの時は幼馴染が可愛すぎて、俺はそのストーカーに刺されて死んだ。


 今のシャルルを見ると、なんだかあの時と似たような状況になっている気がして焦るのだ。


「覆面とか被って見たらどうだろう」


「はあ?!なんで私が覆面なんか被んなきゃいけないのよ」


 それはまあそうなんだけど。だってこいつらはシャルルの顔ファンなわけだから顔が見えなくなれば来なくなるんじゃないかと思う。


「そんなことしなくても授業が始まればいなくなるでしょ」


「うーん………」


 それはそうだけど、根本的な解決にはなってないんだよな。かといって何かいいアイディアがあるのかと聞かれればあるわけないし。


「何よその感じは。もういいでしょその話は」


 シャルルは話したくないようだが前世で刺されている身としては良くないんだよな。そんなことを考えていたら先生がやってきて授業が始まった。


 けれど大体の所悪くはない。最初は虐められてすぐにやめてしまうかもしれないと思っていた学園生活が順調なのがありがたい。


 けどまあ結局のところ、強くなるしかないよな。強くなりさえすれば刺されることは無いだし。


 道場に通い始めてからも一年はたったわけで、最初よりは剣術が体になじんでいる気がする。


 体格は運動後に鶏肉を食べているおかげで剣術よりもはっきり分かるくらいに成長しているから、そこは順調。


 それにシャルル自身も戦えるというのは大きいな。いざとなれば二人で協力して戦えるわけだから。


 結局のところ自分の頑張り次第かもしれない。




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