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47話

 


 学校についてすぐに呼び出しを受け落ち込むシャルルを引き連れて職員室へと向かう。たぶん昨日シャルルがケーキ屋の列で男と揉めたことについてだろう。


 扉を開けて担任のエメリー先生の席に行くと、「来たか」と言われて別の部屋へと案内された。ここで話が出来ないから場所を移したという事はかなり悪い話なのかもしれない。


 シャルルも不安そうな顔をしている。けが人もいなかったのだから注意くらいで済まされるんじゃないかと思っていたのだが、もっと大事な気がする。その部屋に入った途端、驚いた。


 そこには包帯で顔をぐるぐる巻きにした男が座っていた。


「シャルル・ド・ゴールとレイ・フェリックスだな、ここに座りなさい」


 男と一緒にいたのは学園長のサンボ・ヒョードル先生。座ったふかふかのソファーの正面には包帯を巻いた男、それは昨日シャルルがケーキ屋の列で揉めたあの男だった。


「っ………」


 人見知りのシャルルは声が漏れるほど驚いている。


「さて、と………」


 担任のエメリー先生が落ち着いた口調で話し出す。この女性の先生はいつもクールな眼差しで生徒を見守っていて、無駄なことは一切言わない。


 戦っているところは見たことが無いが物腰からかなり武術をやっていると思っている。それを言ったらこの学園の先生は大体そうなんだけど。


「こちらのかた、お名前をティンベー・カネナリさんと言いまして昨日私たちの学園の生徒からひどい暴行を受けて怪我をしたとおっしゃっています」


 なんと!


「シャルル・ド・ゴールあなたはこの方に見覚えがありますか?」


「な!私はそんなことしてません!」


「質問に答えてください。見覚えはありますか?」


 怒鳴るシャルルにエメリー先生が冷静な声で言う。


「それは、あります………」


「そりゃあそうだよね、昨日の事なんだから覚えてないわけがない」


 ティンベー・カネナリという男が言う。我慢しているようだがどこかニヤついている雰囲気もある。


「けど怪我なんかしていないはずです。私の攻撃は当たらなかったんですから」


「なるほど………」


「怪我をしたのは間違いないんですよ、それもかなりの大怪我だ。ああ、痛い痛い………」


「レイ・フェリックス、貴方はどうですか。そのとき現場にいましたよね?」


 急に名前を出されたので驚いた。


「正直言って全部は見えなかったです。遠かったですし助けに行くので目線を外している時もあったので」


 これは正直な回答だ。


「そんなのどっちだっていいでしょうが」


 カネナリが言う。


「実際にこの女の子が傘で俺に殴りかかってるところは沢山の人が見てるんだからね。それが証拠みたいなもんでしょ」


 最初は大人しかったカネナリがどんどん調子に乗ってきた。


「私の攻撃は全部避けられた」


「怖い。ほら見てくださいよ、今もこんな怖い顔で俺のことを睨んでるでしょ」


「落ち着きなさい、シャルル・ド・ゴール」


「はい………」


 シャルルの目にはまだ敵意が残っている。


「ずいぶんと大怪我のようですがどのような怪我なのですか?」


 エメリー先生が聞く。


「それはね、ちゃんと診断書を持って来たんでこれを見てもらえますか。そうすれば一発で分かると思いますよ」


 男が胸元から白い紙を取り出してテーブルの上に広げた。


「ほら、ここに書いてますよ。打撲と骨折と外傷ってね。昨日医者に行ってちゃんと診てもらったんですよ」


 ずいぶんと準備の良いことだ。これを見れば怪我をしたのは間違いなさそうだが、シャルルは自分の攻撃は絶対に当たっていなかったと言っている。


「それでね、ここからが肝心な話なんですけども」


 カネナリが得意げに言う。本当にこいつは怪我をしているのだろうか、骨折していたら相当痛いと思うのだが、とてもそんな風には見えない。


「確かにこの子がやったことは酷い、頭に来るくらい酷い。けどね、俺はこの子の将来を潰したくはない。これで退学になったりしたらあまりにも可哀そうだ。そこでね、俺はこの学園が責任を取って1千万ゴールドをくれるっていうなら、俺はこの子のことを完璧に許してあげるつもりなんですよ」


 なるほど、そういう事か。要はこの男は昨日の騒動を利用して金を強請りに来たわけだ。


「………」


 シャルルは何も言わずにカネナリを睨んでいる。


 偉いぞシャルル。


 多分シャルルはこの男が嘘を付いていることを確信しているはずだ。だから頭に来ているはずだ。それなのに我慢している。ケーキ屋の列では我慢できずに大騒ぎになったが、その時の事を反省しているんだよな。


 偉い。


 それなら俺も、できる限り助けてあげたいと思う。



「ちょっといいですか?」


 レイは声をあげた。




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