表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/72

42話

 


「次のお休みはクラスの女の子とケーキ屋さんに行く約束をしたの」


 黒髪天才剣術少女ことシャルル・ド・ゴールは誇らしそうに胸を張りながら言った。


「おお!」


 素晴らしい、素晴らしいじゃないかシャルル。


 学園生活初日に誰とも話すことが出来ずに登校拒否をしていた貴女のことを考えればとんでもなく素晴らしい。最初は俺がサポートしてあげなければ他の生徒と話すこともできなかったのに、今では女の子と同士で普通に話している姿をよく見る。


 しかし………。


「誰か大人と一緒に行くのか?」


「何言ってるの、私たちだけで行くのよ」


「それはあまりにも危険だろう」


「はぁ?なんでよ」


 何で、と言われてもこの世界はとにかく危ないとしか思えない。


 プテラノドンは空から人間を喰いにやって来るし、鬼婆も追いかけてくる。さらには子供を攫うことを専門にした犯罪組織もあると聞いた。


「プテラノドンがーーー」


「またその話?あんなの滅多に来ないってば」


 確かにあれ以降一度も見たはいないが、それでも危ないだろう。というか「またその話?」なんて言わないでくれ。確かに前に何回かシャルルに話したことはあるけれど、それくらい俺にとってはインパクトのある出来事だったんだよ。


「一度来たっていうことは何回でも来る危険性はあるだろ?」


「そうかもしれないけど私がついてるんだから大丈夫でしょ!」


 いやいやいや………。


「そりゃあシャルルは自分の身は自分で守れるかもしれないけど………」


 この学園に来て分かったことがある。それはほとんどの生徒が戦いが出来るような水準には到底達していないという事だ。


 確かにこの世界には魔法があり貴族の子息にはその根幹となる魔臓を持っているものも多くいるが、しょせんは小学生だ。前世の子供と比べれば能力が高いことは間違いないがそれだけ。


 だからこそこの学園で俺が大手を振って歩けるという事でもあるのだが、とにかく頼りない。プテラノドンに対抗できるようなのはこのクラスではシャルルしかいないだろう。実はそれだって少し怪しいと思ってさえいる。


「何よ文句ばっかり言って!」


 そんなこと言われてもなぁ………。


「シャルルは魔物と戦ったことあるのか?」


「う、」


 こいつやはり………。


 今まで道場の中で稽古をしている姿は何度も見ているが、逆に言えば道場の中でしか見たことが無い。


 俺が道場に入ってから魔物を相手にした稽古など一度も無かったのだ。


「魔物が出てきたらみんなびっくりして動けなくなるぞきっと」


「ううう、、」


「急に走り出す子も出てくるだろうし」


「うううううう、、、、」


 野犬みたいな顔をしながら唸っている。お前とお前の友達のために行ってあげてるんだからそんな目で俺を見るなよ。


「友達がプテラノドンに攫われて行ったら辛いだろうなぁ………」


「う、ううううううううううう………」


 おお、効いてる効いてる。


 もしかしたらシャルルは何かあった時に自分一人でみんなを守れるか不安に思っていたのじゃないだろうか。だからわざわざ俺にみんなと一緒に出掛けることを報告してきた。違うかな?


「喝!!」


 急に叫ぶな。


 それってお前の父親が稽古を見に来た時にたるんでる道場生を見たらよく言ってるやつじゃないか。やっぱり親子というのは似るんだな。残念だよ。


「それじゃあんたもくればいいじゃない!」


 なんで?


「どうせそれが目当てなんでしょ!?」


 それは全然違いますよシャルルさん。


 クラスメイトが悲惨な目にあってほしくないと思っているだけ。正直言って小学女子の群れの中に入って一緒にスウィーツを頂きたいとは思わない。男と女は違う生きものだと誰かが言ったらしいがその通りだと思う。会話だってかみ合わないだろう。


 なぜシャルルがそんな考えになるのか理解できないくらいだ。


「甘いのが食べたいのなら食堂で食べればいいじゃないか」


「バカバカバカバカ!ぜんっぜん分かってないわあんた!」


 そんなにバカを連呼しなくてもいいじゃないか。


「私たちが行くのはいま街で評判の美味しいケーキ屋さんなんだから食堂じゃだめなの!なんでわからないの?」


 分からんよ。


 ここは王立ワシントン学園、この国の小等教育で最も格式のある学校だ。その中にある食堂だってちゃんとした料理人がいてちゃんと美味しいものを作ってくれている。それなのに何が不満だというのだ。


「結局そんなに変わらないだろ?」


「バカバカバカバカ!ぜんっぜん違うわよ!毎日たくさんの人が並んでて、特に天使のふわふわプリンなんて売り切れ続出で買えたらラッキーだって話なんだから」


 並ぶ?冗談だろ。


 そういうのって並んだ割には普通だったりするんだけどな。高級食パンだって一時期は大人気だったのが、しばらくすれば売れなくなって倒産するんだぞ。


「プリンなんかそんなに変わらないって」


「バカバカバカバカ!全然違うのよ!」


 食べたことも無いくせに。


 というか今日一日だけでとんでもなくバカって言われてるな。


「良いからついて来なさい!わかったわね!?」



 ちょっと待ってください、小学女子の群れとスイーツはきついですよシャルルさん。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ