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34話 ~鬼の戦~

 


 レイフェリックスが検査のために上着を脱ぐと、付き添いの父ランド・フェリックスは驚きの声をあげた。


「お前、背中が変だぞ」


 変?


 そう言われても自分では確認できない。振り向けば医師も驚いた表情をしている。いったい何が起こっているのか、持ってきてもらった鏡を見て驚いた。


 自分の背骨が異様に浮き出ている。


 まるで炎のような背骨。


「鬼だ」


 レイはすぐに思い出す。これは宝物庫で見た鬼の背骨にそっくりだ。


「これは一体どうしたことですか」


 眼鏡の医師が興味津々といった感じで聞いてくるが、それはこっちが聞きたい。


「力加減の異常さと合わせて考えれば、やはりこれは鬼の影響だろうな」


 代わりに父が答える。


 最初は父の手を取った時に異常な握力が出た。床も凹んだしドアも壊れた。おかしいことになっているのは自分でも分かっている。



 しかし結局、健康に問題は見られず明日には退院できることとなった。





 ◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆




 その夜、夢を見た。


 黒い巨体の生物が何人もの人間を殺していく夢。


 腰まで届くほどの長い白髪と異常なほど盛り上がった筋肉は、ゴリラを連想させるが顔は人間に極めて近い。牙や角はあるがそのほかは人間だ。


 それは鬼。


 その背骨が炎の形に浮き出しているからすぐに分かった。きっとこいつは宝物庫で自分の体に入ってきたあの鬼に違いない。


 殺しながら笑っている。



 鬼の戦い方は非常にシンプル。


 武器も防具も持たず己の肉体で相手を破壊していく。これは身体操作の極みだ。


 騎士が振るった剣を肩で受け止め、お返しとばかりに手を振りぬくと、騎士の頭が吹っ飛んだ。


 鬼の体に一切の傷はない。そして何事も無かったかのように次の相手に向かって行く。


 速い。


 鬼の移動速度はまるで弾丸。踏み込んだ地面から爆風が起きるほどの踏み込みで動いている。


 人間たちは勝ち目がない事は分かっているだろう。しかし立ち向かうのは逃げることもできないからだ。


 人間が逃げる速度よりも鬼がおう速度の方が圧倒的に速い。そうすると鬼は距離を詰めてきて人間の背中を打つ。一瞬の間があった後、爆発したような勢いで腹から内臓が飛び出す。


 逃げることが出来ない。立ち向かってくるしかない。後ろから死ぬか前から死ぬか、自分だったらどちらを選ぶのだろうか。


 死を目の前にした人間達の表情のなんとグロテスクなことだろう。笑って、泣いて、怒って、その全てが混じり合った顔であり、ひとりひとり違う顔をして死んでいく。



 鬼の戦い方には特徴があった。


 攻撃の時に拳を握らずにてのひらで打つ。


 その瞬間、青紫色の光が漏れる。


 魔力だ。


 普通なら拳で殴った方が威力は高いのにそれをしない。手加減であるはずはない。なぜなら人間は一撃で死んでいるから。


 そんなやり方は今まで考えたことも無かった。


 これが鬼の戦い方。


 武器や防具を使う。それは自分の肉体だけでは弱いから、敵に勝つことが出来ないからだ。


 鬼は自分の肉体で戦う。


 どんなに剣の達人であろうとも自分の肉体以上に剣をコントロールすることは出来ないはず。


 自分自身の肉体こそが最上。


 鬼はそれを証明している気がした。



 これは重要なヒントかもしれない。


 いまの自分は自分の体をコントロールすることが出来ない。けれど異常な力を発揮することは出来る。


 これは間違いなく鬼の影響。


 それならば鬼の戦い方を知ることで、この力を生かすことが出来るかもしれない。


 目を伏せたい気持ちは意識から消して、戦い方を見ることに集中する。相手の実力が拮抗していればさらにいいのだが、それでも分析はできる。


 一番目が行くのはやはりその圧倒的な攻撃力だが、攻撃だけに目を向けすぎてはいけない。何をどう防いでいるか、防御もよく見ないといけない。


 なぜならばそこが弱点だから。


 人間だったら目、顎、金的を攻撃されないように守る。どんな達人であってもそう。それなら鬼はどこを守る?そこが鬼の弱点だ。


 お前の戦い方を見せてみろ。


 お前はただ突っ込んで行って引っぱたくしかできないのか?何も考えずにただ力に物を言わせて戦っているだけの獣なのか?



 そう思った瞬間に、鬼と目が合った。


 強烈な怒気を感じ反射的に跳び起きる。


 目が覚めたら真っ暗な中でひとり汗をかいていた。


 それにしてもすごい迫力だった。目が合っただけであれだ。きっと目の前に現れたら、何もできずに殺されるだろう。あそこにいた人間達と同じように。



 背骨に触れてみる。


 少し熱くなっている気がした。




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