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30話 ~アーサーの言い訳~

 


 王立ワシントン学園の優勝賞金3千万ゴールドを使いこんだことについての、第12王子アーサー・ペンドラゴンの弁明が始まった。


「お前に会うために王城に来たらさ、入り口のところできれいな女の人が頭を下げてたんだよ。それで、「なんだ?」って近づいて話聞いてみたらさ、キュリーさんっていう孤児院で働いてる人でさぁ」


 黙って聞くレイの眉間の皺が深い。


「孤児院の資金は今までとある貴族が出してくれてたんだけど、その当主が亡くなって息子に変わったら、急に資金の提供を止めるって言われたんだってよ。それで子供たちのためにどうにかできないかって相談に来てたんだ」


 レイの肩に手を置いて言う。


「それでさ、そんなこと聞いたら何とかしてやりたくてさ、もってた金を、「これ使ってください」って言って、全部言って渡したんだよ。それがお前の金ってわけ。分かるだろ?」


「分かるわけねぇだろこのドチンポ野郎!」


「へぇええええ?!」


「人の金を使うな!自分の金でやれ!」


「お、おま、どちんぽやろう、って、おま、」


 アーサーは明らかに戸惑っている。


「だってしょうがないじゃんよ、あの人困ってたんだぞ。しかもすごいきれいな人だったし………」


「何がしょうがないだ、結局お前はその人が綺麗だから格好つけたかっただけだろ。お前みたいなやつが王子なんてこの国終わってる!」


 王城という場所に対してのストレス、金を使われたストレスが爆発してレイは部屋中に響き渡るほどの大声で怒鳴った。


「なんだよ、そんな言い方って無いじゃんかよ」


「王子!ご無事ですか!」


 すぐさま完全防備の騎士が大量に部屋の中になだれ込んできた。


「あ、ああ、大丈夫、大丈夫だから下がっていいよ」


「しかし………」


 一番威厳のある騎士が不審者を睨みつけながら言う。


「全然大丈夫だって」


 アーサーは騎士のほうに歩いて行って、安心させるように肩叩く。


「ちょっと友達同士で声が大きくなっただけだからさ、心配ないよ。けどすぐに来てくれたのはさすがだよね、そのおかげで俺も安心していられるよ」


「ありがとうございます、しかし………」


「だから大丈夫だって、ね」


 しばらくして騎士は全員部屋から出ていった。部屋の外では明らかに人の気配がしているので厳重に警戒していることは間違いなかったが。


「いや、びっくりしたな。いきなり興奮しすぎでしょ。しかも「ドチンポ野郎」って生まれて初めて言われたよ、どこで覚えたんだよそんな言葉」


 ジョジョに決まってるだろ。


「光の魔道具を買おうと思っていたのに………」


「魔道具?魔武器じゃなくて?」


 そう。俺が欲しいのは魔道具だ。魔武器の方が値段が高いし派手だからそっちの方が人気があるのは分かるのだが、俺には苦い経験がある。


 アダチによって悪霊の巣窟のようなところに放置されたあの忌まわしい記憶。今でも偶に夢に出てくるトラウマ。


 調べたところによれば、強力な悪霊は強力な魔武器に寄生していて、人格に影響を与える可能性が高い。それに比べれば魔道具はまだ安全だと言われている。


 だから今の興味はもっぱら魔道具なのだ。


 魔道具は直接的な攻撃力は無いが、それも使いようだと思っている。強力な魔武器に頼らなくてもいいように自分が強くなればいい。そこに少しプラスするだけで戦闘力は大きく変わってくるはずだ。


 それなのにこいつのせいで全ては台無し。


 まさしくドチンポ野郎。


「それなら宝物庫に行けばいくらでも置いてあるぞ」


「馬鹿かお前は」


 こいつは何を言ってるんだ。確かに王城の宝物庫にならいくらでもいいものが置いてあるだろうが手に入らなきゃなの意味もないんだよ。


「馬鹿じゃないよ。好きなの選べばいいじゃん、そのことは俺から父さ、国王に言っておくから。それなら金がなくたって魔道具は手に入るだろ?」


「まじか!」


「まじまじ、おおまじ。なんたって俺は王子だからな、それくらいの事許されるのよ。いやー良かったよ、レイがそんなに嬉しそうな顔をしてくれるなんてさ。さっきまで俺のことぶん殴るつもりなんじゃないかと思ってたんだよ、良かった良かった」


 それなら話は違う。


 金が無くなったのは腹が立つが魔武器にしろ魔道具にしろ、買えばかなりの金額がするものだ。王城の宝物庫なら普通の店屋には無いようなとんでもなく素晴らしいものがあるに違いない。


 もしかしたら3千万以上の魔道具だったあるはずだ。


「光の魔道具はあるか?」


 俺が今一番欲しいと思っているのがそれだ。


「どうだろうな、あるんじゃないの?それって夜に道を照らすような奴だろ。なんでそんなのが欲しいんだよ」


「俺が欲しいのは光量が強いやつで、普通のライトはいらないんだ」


「そうなの?それだと行ってみないと分かんないな。とにかくいっぱいあるから何があったかとか覚えてないのよ。よし、今から行こうぜ!レイが欲しそうなやつを俺も一緒に探してやるからよ」


「いまから?」


「レイだって早い方が良いだろ」


 言われてみれば確かにそうだ。わざわざ次回に引き延ばす意味がないし、また王城に来ることになるのは嫌だな。


「そうだな。それじゃあ連れて行ってくれよ」


「わかった。あと俺が使っちまった3千万も後でちゃんと返すからな、少し時間はかかるかも知れないけど」


 おお!?


「返してくれるのか」


「あれ、そう言ってなかったっけ?」


 絶対に言ってない。


「もちろんちゃんと返すよ。少し時間はかかるかもしれないけど親父に話せばわかってくれると思うんだよね。もし駄目だって言われても小遣いを溜めて絶対に返す」


 こいつ………。


「さっきは言いすぎたよ、ドチンポ野郎なんて言っちゃってごめんなアーサー」


 頭を下げる。


「おま、いきなり頭なんか下げるなよ、そんなことされたら体がくすぐったいじゃん。というか、お前はそんなことしないやつだと思っていた」


「そんなことはないよ。悪いことをしたと思ったらちゃんと謝るように努力するさ。結構むずかしくて出来ないこともあるけどな」


「おお、わかるよそれ。自分が悪いって分かってても謝るのって難しいよな」


 まさか王子と共感することがあるとは思わなかった。


「俺も悪かったよ。王子として生きてきたら庶民の金銭感覚が分かんなくなるんだ。たった3千万ぽっちのことで、そこまでお前が怒るとは思わなかったんだ。だってさ、3千万なんてはした金だと思うじゃん」


「その言い方も腹立つな。めちゃくちゃ庶民を馬鹿にしてるじゃねぇか」


「ゴメン、ちょっと冗談言ってみた」


 舌を出して分かりやすくおどけた表情をする。


 こいつ………。


「なんかお前って………」


「なんだよ」


「案外いいやつなんだな」


 そういうとアーサーは本当にうれしそうな顔で笑った。




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