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27話 ~優勝後の驚き~

 


 表彰式を終えて汗だくで特設ステージから降りると、そこにはあのテレビクルーが待ち構えていた。もちろん早足で逃げる。


 こっちは朝から面接、テスト、作文をやってからしこたま体を動かした後で表彰式までやっているのでとてもじゃないがそんな体力も気力もない


「やったじゃない!」


 賞状と盾を持った俺をシャルルとアダチと母親が笑顔で迎えてくれた。ありがたいし嬉しいがとにかく疲れた。今はとにかく早く家に帰って休みたい。


「レイはかなり疲れているようだしそれじゃあ帰ろうか。ただ一か所だけ寄っていきたいところがあるんだよ」


 アダチがそう言うとシャルルと母親も頷いている。なんだかかなり深みのある笑顔をしている。なんだ、何かたくらんでいるのか?少し不安に思いつつも3人に付いて行くと、そこは屋台が並ぶエリアだった。


 なぜこんな所に?


 掲示板の地図でそう言うエリアがあることは知っていたが、来たことは無かった。食べ物も飲み物も母親が持ってきたものがあったし、競技が忙しかったからだ。


 その中で一番盛り上がっている場所があった。


 競技はすべて終わってあとは帰るだけのはずなのになぜ今頃になって盛り上がっている屋台があるのだろうと、疑問に思いながら近づいていく。


 そこは「賭け」が行われている屋台。


 ベニヤ板に貼られた注目選手のところには、レイの顔写真が貼ってある。


 驚いてその場に立ち尽くしたレイだったが、アダチ、母、シャルルは当たり前のような顔をして屋台の列に並んでいた。


 すぐさまシャルルに問いただすと、当たり前のような顔をしながら「あんたが筆記試験をしている間に買っておいた」と言った。しかも俺が勝つのに賭けていたらしい。


 知らなかった。


 どおりでシャルルの応援に熱が入っていると思ったんだ。どうりで競技で一位を取った時は自分が勝った時みたいに喜んでいたはずだ。


 何とも言えない感情に包まれるのレイにを見て、換金が終わってほくほく顔の人たちが肩を叩きながら感謝してくる。


 顔写真はどこから?、とかなんで注目選手なんだ?、とかいろいろと気になることはあるが倍率を見てみると単勝36.4倍、複勝7.8倍と書かれている。


 競馬かよ。


 しばらくすると、アダチが戻ってきた。


「あんたのおかげで儲けさせてもらったよ。なかなか頑張ったじゃないか、これで道場の名声も上がるし今日はいいことづくめだよ」


 アダチが顔をくしゃくしゃにしながら笑った。この人の笑った顔を見たのはこれが初めてかもしれない。


 母親も戻って来る。


「レイのおかげで家計が楽になったわ。パパが帰ってきたら何か美味しいものでも食べに行きましょうよ。ステーキの一枚や二枚、いえ、100枚くらい食べたって大丈夫よ。それにお家のリフォームとかもしたいわね」


 斜め上を見ながら楽しそうに妄想している。


 そして大きな革袋を鞄にしまって、代わりにゴツイ魔銃を取り出した。泥棒を警戒しているらしい。どれだけ儲かったんだよ一体。


 シャルルも戻ってきた。


「うしししし………」


 聞いたことのない声で笑っていて、その手にも大きな革袋を持っている。


 どれだけ勝ったのか聞いて見ると、革袋を開いて取り出したぴかぴかの大金貨を見せてくる。大金貨というのはこの世界で一番大きな価値を持つ貨幣で、一枚で100万ゴールド。それが革袋の中でチャリチャリいっている。


「私は単複両方で賭けてたんだけど、こんなことなら単勝をもっと買い足しておけばよかったわ。なんかあんたがあんまりやる気無さそうだったから怪しいかもしれないと思ってビビったのよね」


 あの中が全て大金貨だとすると相当な儲けになったに違いない。もしかしたら俺があれだけ大変な思いをしての賞金3,000万ゴールドよりもあるかもしれない。


 何ということだ………。


 茫然としているレイの前に小走りの女の子二人が現れた。


「あっ、」


 思わず声が出た。


 そのふたりの女の子に見覚えがあった。


 それは競技の合間にトイレに行こうとした時の事だった。二人組の女子に呼び止められて「頑張ってください」と応援されていた。その時の女の子だったのだ。


 あれだけ嬉しそうな顔をしているということは、賭けに勝ったに違いない。


 てっきり競技で活躍する姿を見て、声を掛けてくれたのだと思っていたが、ただ単に金をかけていたから応援しただけだったらしい。運動できる男子は女子にモテると勘違いして浮かれていた自分が恥ずかしい。


 あの子たちは自分の事など眼中にないに違いない。その証拠にレイとはそれほど距離が離れていないというのに二人の女子がレイに気付く様子はない。勝ったのが嬉しすぎて目にも入らないのだろう。


 返金が終わった二人はレイに気付くこともなく、金の入った革袋を持ったまま嬉しそうに去っていく。あの時の清楚はいったいどこへ行ったんだ、興奮で目がギラギラしてたぞ。


「疲れた………」


 自分でも気が付かないうちにレイは膝をついていた。



 こうしてあまりにも過酷な第一回 王立ワシントン学園一般入試は終了した。





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