表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/72

24話 ~開始~

 


「腰紐奪い合い対決」の開始のゴングが鳴らされた。



「フノォオオオオオオオオ!」


 開始と同時に前の牛みたいな顔の縮れ毛が殴りかかってきた。ちょっと待てなんだその目のバキバキ具合は、興奮しすぎだろ。


 心の準備はしていたとはいえ少し驚いたが、相手の動きは遅い。


 拳が当たるよりも少しだけ早くサイドステップで攻撃を躱す。目標の亡くなった相手の手が空を切り体勢が崩れる。


 バランスを崩すためだけの軽い掌底を相手の脇腹に入れる。


「フゴォオオオオオオオオ!」


 そんなに強くは入れてないはずなのに牛みたいな声を出すなよ。すごい悪いことをした気持ちになるじゃないかよ。


 倒れてくれたので、「1本目の腰紐頂き!」と思ったところで視線を感じた。


 見るとひょろながで唇の青い奴がこっちをガン見していた。そうか。俺が牛の腰紐を取っている隙に、こいつは俺の腰紐を狙っていたんだ。


 睨みつけてやると、唇をさらに青くしながら逃げていった。


 これはなかなか難しい。


 道場でも偶に集団戦をやってはいるが、屈んで腰紐を奪うなどという動作は無い。相手を倒せばOKだと思い込んでいたが、取るまでがセットなのだ。


 周囲を威嚇しながら牛の青い腰紐を引っ張ると、簡単に取ることが出来た。これで腰紐は2本になった。持っている腰紐は、全部腰に巻き付けておかなければいけないルールなので、ポケットとかに入れておくことは出来ない。


 このルールのせいで誰が沢山腰紐を持っているのかがバレてしまうから、なかなかに面倒だ。一回で2本とも奪われないように、左右に分けて結わえておこう。


 そしたらすぐに辺りを見渡す。


 一番の要注意は金色の腰紐を付けたこの学校の教師。取れば一発合格という点と、佇まいから見て間違いなく手練れ。もしかすると武術を担当する教師なのかもしれない。


 スタート前の時点で離れた所に場所を取るようにはしていたけど、近くにいるかどうかはちゃんと確認しなければいけない。大丈夫、遠くにいる。背が頭一つ分は大きいから、見分けることは簡単だ。


 周りを見つつ柵の方へと移動する。


 いくら集団戦の稽古をしているとはいっても、360°警戒しなければいけないのは厳しい。背後に柵があれば敵は後ろからは来ない。そのほうがかなり楽だ。


 敵が狙って来た。


 前と横から、同時に二人もだ。落ち着いてサイドステップを使って間をすり抜けようとしたところで、後ろにいる誰かとぶつかった。


 敵?いや多分偶然だ。


 そうじゃなければ背中と背中がぶつかるはずがない。


 しかし俺にとってはかなりタイミングの悪い偶然だ。前からは色白おかっぱ男とスキンヘッドのっぽが狙って来ている。


 足が止まったところに敵の手が伸びてくる。


 取られる。


 その瞬間、ほとんど無意識に伸びてきたを拳を殴っていた。さらにもう一本の腕も反動を利用して裏拳で殴りつける。


 悲鳴がして敵の動きが止まる。


 その隙に体制を整えて周囲を見渡すが、今すぐに襲い掛かってきそうなやつはいなかった。


 やってしまった。


 拳を使った攻撃をするつもりは無かったのにとっさに出てしまった。


 相手の腕への攻撃というのは道場で教わったものではない。これは前世で見た動画で、「システマ」というロシアの軍隊格闘術のインストラクターが解説していた攻撃方法だ。


 申しわけないと思いつつ、倒れているふたりから一本ずつ、合計2本を取る。



 それからは柵を背にして自分を守りつつ、時間を見ながら積極的には戦わない。観察していると腰紐が無くなった参加者は、審判に退場するように促されているのが見える。


 人数が減ってだんだんと動きやすくなってきた。


 残り時間18:39。


 時間はまだある。心と体を落ち着かせながら状況を整理しよう。


 この競技は後半勝負だ。


 周りを観察すると、参加者たちの腰紐が増えていくのがわかる。腰紐を2本持っている参加者同士が戦えば、勝者の腰紐は4本になるからだ。


 それなら戦うのは後半の方が良い。戦う回数が同じでも得られる腰紐の数が違うからだ。基本はこの考え方で大丈夫だろう。


 近くで戦っていた二人がどっちも倒れた。


 チャンス!


 素早く近づいて行って、立ち上がろうとしている所から腰紐を奪った。


 大量ゲット!


 ふたり合わせて10本以上ある。しかもその中に一本だけ赤の腰紐があった。ということは上級生の誰かがやられたらしい。かなり自信がありそうな顔をしていたくせに情けない奴め。


 普通の参加者の青い腰紐は1Pだが、上級生の赤い腰紐は5Pだからかなりのお得だ。


 俺に腰紐を取られた二人は恨みがましい目を向けながら、退場して行った。


 残り時間は8:01.



 心身ともに落ち着いてきたからそろそろ狩るか。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ