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22話 ~ナンパ~

 


 やる気満々のレイ・フェリックスが、詳しいルールの説明を求めて運営の元へ向かうと、そこはすでに人だかりになっていた。


 子供もいれば親もいて、みんな必死な顔をしている。


 聞き耳を立ててみればルールの確認をしているようだ。やはりみんなそこが気になっているのだ。この感じなら、あとで詳しいルール発表がある気がするから、それまでは大人しく待っていよう。


 こうして離れたところから見てみると、運営にルールを確認しているやつらは武術経験者で間違いないだろうな。自分たちの技術がどこまで使えるか確認しているのだろう。


 何しろこの競技は攻撃が許されている。


 何をしているんだろう、という顔で見ている受験生は、武術をやったことが無いに違いない。ひどい目に合う前に辞退するのが良いと思うが、同じ受験生の俺からそんなことを言うのも違うよな。


「みなさん!ただいま受験生の方々からルールについての質問が多数寄せられていまして、運営の方で現在ルールの詳細について確認中です。しばらくお時間がかかりますので皆さま席に戻って少々お待ちください。再会となりましたらまたアナウンスでお知らせします」


 初めてやる競技だから運営としてもルールが定まっていなかったようだ。席に戻ることにしよう。その途中で見覚えのある顔を見つけた。


 シャルルだ。


 黒髪天才剣術少女が男たちに囲まれて困った顔をしている。男と言っても子供だけど。もしかしてナンパか?


 近づいて見ると可愛いとか言われている。あらら、シャルルさんいつもの強気な感じはどこへ行ったというのだ。もしかしてか弱い女子を演じている?


 そんなわけないか。


 困っているようだから、その中に割って入る。


「なんだてめぇ、何の用だよ!」


 その中の一番背の低い奴が小型犬のように吠えてきた。普通の子供ならビビるかもしれないが、前世で俺は高校生だったんだ。小学男子に睨まれても怖くもなんともないわ。


 何も言わずに大きく息を吸いこんでそいつに一歩近づく。


「な、なんだよ………」


 ゼッケンをつけているから同じ参加者だ。ということは同い年。自慢ではないが、道場での運動とタンパク質の摂取によって俺は他の参加者よりも体が大きい。


 無言で体のデカさを見せつける。


 道場でも素振りと足の運びをメインに鍛錬しているから、背中は厚いし足は太い。体の大きさというのは人間も動物でも相手を威嚇する重要な要素だ。


 更に一歩近づいて上から睨んでやる。


「なんだこいつ気持ちわりぃな、なんか言えよ!」


 言わない。


 無言こそが圧力を放つのだ。


「ぶん殴るぞ!」


 十分脅したと思ったのだが、人数がいるせいだろうか相手は逃げて行かない。こうなったらしょうがない。素早くポケットに手を入れて取り出したものを小型犬の耳元へ持っていく。


 馬鹿みたいな顔をして止まった小型犬。


 押す。


 その途端に大音量のブザーが発生した。


 男共が面食らっている隙に、シャルルの手を引いて背中の後ろへ連れてくる。急な大音量のせいで周囲からの注目が一気に集まる。


 そこで両手を広げてシャルルを守ってる感じを出す。こうするとどちらが悪者であるか周りの人たちに簡単に分かるのだ。


 今日は特に人が多いぞ、どうだ、大勢の人に見られるのはプレッシャーだろ。


「くそっ、」


 男たちは周囲の視線に耐え切れずに散っていった。


「大丈夫だったか?」


 振り向いてシャルルに言う。


 頷いた。


 元気がない感じはするが大丈夫そうだ。というか普通の女の子ならともかくシャルルならあんな奴らなんか簡単にボコれるはずだ。


 おかしいな。


 手元に武器が無い場合の対応も武術の先人たち想定している。なのでシャルルも稽古をしているので恐れる必要は無い。


 なぜだ?


 レイが首をかしげていると、ブザーによって注目していた周囲から、女の子と守り切ったという事で拍手と歓声が出てきたので、恥ずかしくなってシャルルの手を取って退散する。


 懐かしい。


 前はよくこういうことがあった。


 前世の幼馴染の風花かざはな 羽藍うらんはとにかくナンパされるやつだった。目を離せばすぐにナンパされるのでその度に大変な思いをしていた。卓球で活躍してメディアに取り上げられると他の学校の生徒が来るようになってさらに大変になった。


 そうか、俺がマスコミが嫌いなのはそのせいもあったのだ。いま気が付いた。


 毎回毎回なので、どうすればいいのかと考えて思いついたのが防犯ブザーを持つことだった。これで周囲の目を集めれば男たちはそれから何もできなくなるのだ。


 いま持ってる音が鳴るだけの魔道具も、見つけた瞬間から欲しくなったのはそのせいだったのかと自分で納得する。


 席に戻ってきて紅茶を飲むシャルルをまじまじと見つめる。


「何?」


 俺は今大変なことに気が付いた。


「可愛いすぎる」


 今まで気が付かなかったがこのシャルルという少女。相当に整った顔立ちをしているじゃないか。将来は間違いなく美人になるだろう顔をしている。


「は?」


 これは良くない状況だ。


 前世で俺は幼馴染、風花かざはな 羽藍うらんのストーカーに殺された。それはあいつが必要以上に男にモテすぎたせいだ。


 そしていま俺の目の前には男たちにナンパされていたシャルルがいる。この顔立ちから判断すれば間違いなく今後もナンパされ続けるだろう。男にモテ続けるだろう。


 モテすぎる幼馴染と俺。


 これは全く同じ状況ではないか。



 レイは愕然とした。




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