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2話 ~新たな幼馴染~

 


 高浜 睡蓮すいれんは、「レイ・フェリックス」として新しい世界に生まれ落ちた。


 父の名はランド・フェリックス、探索者をしている。母はアイラ・フェリックス、元パティシエで現在は専業主婦をしている。


 新しい家はわりと裕福で、お腹一杯ご飯を食べれて、お風呂に入れて、温かい布団でゆっくり寝れているのが本当にありがたい。


 遺してきた人達を幸せにしたいと思って転生したわけだけど、自分自身も、楽しくて、裕福で、幸福な人生を送りたい。今世こそは長生きしたいと思っている。



 新しい世界は驚きの連続だった。


 まずは家にテレビがあった。転生と言えば中世ヨーロッパじゃないのかと思いつつ見ていたら、その内容が異世界だった。


 それは「突撃!新米探索者」という番組で、「神の塔」という魔物と宝が出る不思議な塔に、新米の探索者が挑戦するドキュメンタリー。


 探索者と言えば父の職業だ。それをテレビで見ることが出来るなんてとても気になるじゃないか。


 登場したのはヤンキー丸出しの3人の若者。今までで一度も喧嘩で負けたことが無いので探索者になったのだそうだ。


「神の塔」の映像が写しだされる。


 サグラダファミリアに似た荘厳な構造物。神の手によって創られたと言われ、人々から恐れ敬われているという。


 最初は「やってやりますよ!」「世界最強の探索者になります!」などと大口を叩いていたのに、実際に目の前にすると口数が少なくなっていたのが面白かった。


「神の塔」へ入った途端、景色が変わった。


 まるで洞窟。


 薄暗くて天井が低くてコウモリが出てきそうな場所だった。


 武器と防具に身を包んだ新米探索者とテレビクルーが神の塔の内部を進む。まるで自分もそこにいるみたいな気がしてドキドキする。


 広い場所に入ると、そこには魔物がいた。


 体長1mくらいで、ヘドロのような体をした「ヘドロロロ」という種族。力は強いが動きが遅いという特徴を持っているそうだ。


 戦闘が始まった。


 そばかす顔の若者が走って行って剣を叩きつけると、その一撃で魔物は動かなくなって消えた。


 得意げにカメラにアピールする彼ら。


 倒したら消えるなんてゲームみたいだ。それにしてもたった一発で倒してしまうなんて、なんてあっけない。


 ナレーションによると、まず初日に50階層まで進めるかどうかで探索者としての才能がわかるのだそうだ。


 どきどきしながら見ていたら、隣にいる父が「適当なこと言いやがって」と言ったのが聞こえた。


 気になって話を聞いてみると、初日に50階層まで進めるかどうかで才能が分かるなんて話は、いままで聞いたことが無いそうだ。


 どうやらこの世界でもテレビの情報を当てにし過ぎてはいけないようだ。



 迷路のような構造に苦労しながらも10階層まで到達した。進んで行くと今までとは雰囲気の違う四角い部屋に入った。


 部屋の真ん中に魔物がいる。


 青いカマキリの魔物。


 見た瞬間鳥肌が立った。



 悲劇が始まった。


 カマキリは背中の半透明な羽を使って飛んできた。今までの魔物とは比較にならない移動速度。しかも人間よりも大きい。


 疲れか油断か。そばかす顔の若者は剣を抜くのに手間取っていた。


 危ない。


 そう思った直後、がら空きの首に青いカマキリが噛みついた。


 絶叫。


 噴射する血。


 仲間たちが声をあげながら一斉に剣を振る。しかしカマキリは両手の鎌を使ってほとんどの攻撃を防いだ。


 舐め回すように人間達とカメラを見た。


 狂暴そうな顔は逆三角形の顔はあまりにもグロテスク。人間の血で染まった口を、もぞもぞ動かしている様子が笑っているように見えた。


 そばかす顔の若者は血だまりの中で横たわって動かない。実力の差は明らかだった。


 映像が上下に揺れ、遠ざかっていく。戦っている彼らを残してテレビクルーが逃げているのだ。


 またひとり誰かが倒れた。



 ナレーションが説明を始める。


 あれは「ガマギリリ」といって、中堅かそれ以上の戦闘力を持つ探索者でないと倒すことが出来ない魔物なのだという。


 彼らの安否はいまも不明である、そういって番組は終わった。



 全部が初めて見る映像。


 確かにここは異世界だ。




 ◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆




 ある日、家族で食事に出かけた時の事。


 明らかに人間のものではない奇声がして空を見上げると、曇り空を羽ばたく十数匹の魔物がいた。


 まるでプテラノドン。


 鋭いくちばし、大きな翼、長い首を持つその魔物は、空を旋回していたと思ったら一斉に急降下して、つぎつぎと街に降り立った。翼を広げたその体躯は人間よりもはるかに大きい。


 奇声と悲鳴。


 それからはもう地獄絵図だった。


 プテラノドンはレイのすぐ近くにも飛んできたが、立ちはだかった父があっさりとその細長い首を刎ねてくれた。


「こいつらは図体がでかいだけの雑魚だ。俺が何百匹でも殺してやるから安心しろ」


 声を荒げることもなく淡々と語る父が頼もしかった。終始落ち着いた様子で、家族を勇気づけながら母と俺の前に立ちはだかってくれた。


 母に包まれながら震えていた。


 声を出してしまっては敵を呼び寄せてしまうから黙って震えていた。前世では高校生だったのに。そんな事しかできない自分が恥ずかしかった。


 全ての魔物が去るまでは時間にすれば30分やそこら。しかし受けた衝撃は途轍もなく大きかった。



 外食に出かけたら空から魔物が飛んでくる。


 やっぱりここは異世界だ。





 ◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆




 その夜、首の長い人間に首を噛まれる夢をみた。そしてそんな俺を見ながら微笑んでいる女神がいた。


 汗だくで跳ね起きると辺りはまだ真っ暗。


 恐ろしかった。


 あんな目に合うのなら外食になんか一生行かなくていい。家の外になんか一歩も出たくない。


 違う。


 プテラノドンは家を破壊し、中の女の人を空へ連れ去っていた。家の中だから安全ということでは全く無い。


 どうすればいいんだ、死にたくない。


 日が昇っても悩み続けるレイだったが、答えはすぐ近くにあった。それは寝ぐせを付けたままで目玉焼きを食べている父親の姿。


「そうだ………」


 プテラノドンの首をいとも簡単に跳ねた父こそが答えだ。


 探索者。


「神の塔」と呼ばれる魔物が生息する塔を探索し、宝物を得ることによって生計とする職業。


 戦いのプロだ。


 改めて見てみればその体は見惚れるくらいに引き締まり、強者のオーラを放っている。実際、あの時も慌てる素振りが一切なかった。


 勝てばいい。プテラノドンが襲ってこようがカマキリが襲ってこようがその全てをぶっ倒せばいいのだ。


 父はそうやって魔物から家族を守った。


「強くなりたい………」


 すぐ両親に伝えた。


 父親はすごく喜んで「俺が戦い方を教える」と言っていたが、父親は一度仕事に行くとなかなか帰ってこない。


 それでは駄目だ。


 前世ではスポーツや格闘技を見るのが好きだったので知っている。その道で一流になるためには子供の頃から始めないといけない。



 井上尚弥。


 日本ボクシング史上最高傑作と言われ、パウンド・フォー・パウンドで世界一位となった彼がボクシングを始めたのは小学校一年生の時。


 聞けば父も子供の頃から剣を習っていたという。いまの自分はもう5歳だ。これはもう今すぐに始めなくてはならない。


 俺が教えてやると言い張る父を必死に説得して、知り合いの道場に連れていくことを約束してもらった。



 運命の出会い。


 そうして訪れた道場でレイは出会った。



 きらめく朝の光の中。


 美しい黒髪を持つ剣術美少女「シャルル」と出会った。




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