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15話 ~運動したらたんぱく質~

 


 朝の王都の天然理心流道場に子供が二人。


 ひとりはシャルル・ド・ゴール。この世界では珍しい黒髪を持つ目つきの鋭い少女。道場生の誰もが口をそろえて天才と認めていて、ゆくゆくはこの国を代表する剣術家になると言われている。


 もう一人はレイ・フェリックス。この世界はでは珍し黒い髪を持つ目の大きな少年。道場生の誰もが口をそろえて変人と認めていて、ゆくゆくはなにかとんでもない大事件を起こす犯罪者になるかもしれないと言われている。


「あのさ、シャルル………」


「なに?」


 ストレッチをしているシャルルの元にレイが違づいていく。最初の頃はつんけんした態度でただ話しかけるだけで警戒して睨みつけるような様だったが、最近は普通に会話ができるようになっていた。


「これに見覚えない?」


 そういってポケットから手のひらサイズの白黒の犬の石像を取り出した。賢そうな顔をして舌を出している姿が愛らしい。


「なにこれ、見たことは無いよ」


 受け取ってしげしげと見つめてから言った。


「僕も知らないうちにいつの間にか上着のポケットに入っていたんだよ。その上着はあの悪霊屋敷に連れていかれた日に着ていたやつだから。多分あそこにあったやつじゃないかと思うんだ」


「えぇ!?そんなこと言われても分かんないよ」


「シャルルも無理やりあそこに入れられたって前に言ってただろう?もしかしたら覚えているんじゃないかと思ったんだけど」


「覚える余裕なんてあるわけないでしょ!怖すぎて死ぬと思ったんだから。あの時の事は思い出したくも無いわよ!」


 なぜか怒ったような勢いで喋る。


「これ、返しておいてくれない?」


「私が!?自分で行きなさいよ、私はもう二度と行きたくないんだってば。死ぬと思ったって言ってるでしょ?!」


「そうじゃなくてアダチさんに渡してもらいたいんだけど。そうすれば返したことになるでしょ?」


「なんだ、そういうこと?」


 ほっと息を漏らす。


「そうそう。危険な感じはしないけど、これもきっと魔道具なんだと思う。街で魔道具を売ってる店をちょくちょく見てみるんだけど魔道具って結構高いんだよね」


「あんたまだ魔道具に懲りてないの?怖さは散々知ったじゃないの」


「そうなんだけど、やっぱりどうしてもロマンだからね」


「意味が分からない」


 なぜわからないのか理解できない。魔道具なんてものがあったらどうしても欲しくなってしまうだろう。やはり男と女というのは違う生き物のようだ。


「貰っておけばいいじゃないの」


「え?」


「私が言うのもなんだけどあれはやり過ぎだったと思うわ。だからそれくらいは貰っておけばいいじゃないの」


「でも………」


「なんか可愛いし気に入ってるんじゃないの?」


「よくわかったね。実は気に入っていたんだよ」


 レイが驚いた表情を浮かべる。


「顔を見てれば分かるわよ、渡す時に少し寂しそうだったもの」


「さすがだなシャルルは………」


「そんなことないってば、別に」


 なぜか少し怒ったように言う。


「良いからもらっておきなさいよ。無くなったって言って騒いでないってことは、そんなに大したものじゃないと思う。もし後から騒ぎになったら私があげるって言ったって言うから大丈夫よ」


「それじゃあ貰っておこうかな。見ているうちにだんだん可愛く思えてきてたんだ」


「わかる!なんかいい感じよねその犬。とても魔道具だとは思えないくらい可愛い」


「ありがとう」


 礼をいいつつポケットに戻してから道着に着替えを始める。


「レイってば最近体が大きくなってきたんじゃない?」


「そう?自分じゃ気が付かないんだけど」


「なんだか筋肉がついてきた感じがする」


「まあ、運動してるしタンパク質をとってるからね」


「タンパク質?何それ、聞いたことのない言葉なんだけど」


「練習の間とかに鶏肉を茹でたやつをよく食べてるでしょ?あれがタンパク質。筋肉を作ってくれるんだよね」


「はぁ!?聞いてないんだけど」


「言ってなかった?けどまあ別に言わなくてもいいかなとは思うけどね………」


「あのパサパサの肉が筋肉を作る?!それなら何で言ってくれないのよ、お腹が空いてるからだと思ってたわ」


「運動した後はすぐにタンパク質を取ると筋肉に良いって、どこかで聞いたことがあるんだよ。だから食べるようにしてるんだよ」


 前世で漫画を読んで知ったとは言えないので誤魔化しながら話す。


「教えてよ!それなら私もすぐにやるのに!」


「けど一回勧めたけど「マズそう」とか、「私は食欲ない」とか言ってたから、いらないんだと思ってたし………」


「だって強くなるためにはその方が良いんでしょ?!」


「そうだね」


「思い出した、前に言ってた「食べることも練習」ってそういう意味だったのね!」


「そんなこと言ったっけ?」


「言ってたわ!わけ分かんないこと言うから、やっぱり変な奴だなと思ったからすごい覚えてる」


「やっぱり変な奴って………」


「だったらそう言ってくれればいいのに!強くなるためだったらあんなのだって頑張って食べるわよ!」


「あんなのって………」


「とりあえず今日の分は私によこしなさい」


「いやちょっとそれは………僕の分が無くなるしよ」


「じゃあ半分よ、半分よこしなさい」


「わかったよ、半分ね」



 その日からシャルルも蒸した鶏肉を食べるようになり、それは徐々に道場全体に広がるようになったという。



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