退職日 その1
早朝3時に目が覚めた。
今日は会社員最終日、今日で会社員を退職する。
(会社員としての有給を消化していた)
昼過ぎにはむらさき町での面接や研修、お仕事になる。
早くもそわそわして落ち着かない。
緊張で食べ物も受け付けない、困った。
動画を見たりして気持ちを落ち着かせようとする。
朝6時すぎシャワーを浴びる。
会社に自分の忘れ物を思い出した。
後日会社の方にお願いしてもよかったのだか、
また忙しい中にお願いをするのも、何とも心苦しいと思ったから。
会社に忘れ物を取りに行って、
その足でむらさき町に行こう。
そう思い、可愛い1人娘のももちゃんに、
今日は会社に忘れ物を取りに行って、
そのままバイトに行くからね、いい子にしてるんだよ。
いい子にしててね、ってフレーズは何歳までの事なんだろう、と思う。
少なくとも私は一度も親からは言われた事は無い。
だからこそ、自分の可愛い娘には何歳になっても言ってあげたい。もう高校生だけど、小さな頃と変わらずに愛してあげたい。
わかったー、ママ今日何時頃帰ってくるの?
んー、ママもよくわからないんだよね、
バイト行ってやり方聞いたりとか、今日初めての日になるからいろいろバタバタすると思うからさ、もしだったらパパと先にご飯食べててね。
ママ、夢の為に、みんなの為に頑張るから…。
わかったー!
むらさき町で面接、研修をしたのちに即お仕事だろう、
むしろやりますという気持ちだった。
ももちゃんと離れて寂しいというよりも、今は仕方ない、
頑張るしかない、と娘と自分に言い聞かせた。
いい子でね…。
いつも玄関を出るとき、ももちゃんがドアを閉めてカギをかけるため、来てくれて、
いつものように目を合わせてドアを閉めた。
よし、頑張ろう。
本当にその思いしかなかった。
まずは会社に向かい、自分の忘れ物を取りに来た旨を他の従業員に伝える。
探してみるのだが、思っていた場所にはどうしても無い。
捨てられたかな、それなら仕方ない。
でももう少し探してみよう。
なかなか時間がかかってしまった。
でも見つかってよかった。
長にも顔を合わせる事が出来、ご挨拶をして忘れ物を取りに来た旨を伝えた。
ゆっくり休んで、後から言ってくれてもよかったのに、と
言われて嬉しかった。
でもお手間をかけるわけにはいかないとお話し、
今日私もこれから知り合いのところにお手伝いに行くんです、と伝えた。
頑張ってね。と少し寂しそうな笑顔をもらった。
この瞬間がなぜか忘れられない瞬間になった。
とてもありがたかった。
よし、頑張るぞ。むらさき町に向かう。
昨日ショートメールで教えてもらった住所をナビに入れる。
付近にコンビニがあった。
前から知っていたコンビニだった。電話をかけかコンビニではない。用を足す。カフェオレを飲んで気合いを入れる。
ショートメールが来る。
場所はわかりますか?と丁寧な文章だった。
場所は大丈夫です、もう15分後着の予定です、と返信した。
また緊張が走る。
夢の為だ、こわくない、頑張ろう、
目的地の駐車場に着き、車で待つ。
もう少しで到着する、と電話が来る。
向かいの駐車場に車が入ってきた。あの車なのかな?
女性が降りてきてこちらに来た。
鈴木さんですか?
はい、そうです。よろしくお願い致します。
ありがとうございます。では、中の方でお話させていただきますね、
はい。
駐車場の隣の家の中で面接をする事となった。