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猫髪家の一族  作者: 真山砂糖
9/45

9 家系図

続きます。

 私たちはしばらくティータイムを満喫していた。

「弥二郎さんも、豊さんとかと同じように、髪がなんか、ライオンのたてがみみたいでしたよね」

「あはは、一族の人間である証拠ですね」

「いや、遺産目当てのための、巧妙な作り物の髪かもしれませんよ」

 係長は3杯目のコーヒーをぐびぐび飲みながら言った。

「しし丸もー、髪型がー、ライオンみたいですねー」

「はい、だからしし丸と名付けたんですよ」

 京子は畳に転がりながらしし丸と戯れていた。

「では、そろそろ。母さん、行こう」

 豊さんと正代さんは部屋から出ていった。しし丸も一緒に。


「えーと、一太郎さんと大次郎さんが兄弟で、一太郎さんの息子が弥太郎さん、妻が昭恵さん。一太郎さんの妻が、えーと、えー……」

 係長はコーヒー片手に上を見ながら暗唱していた。

「……わからん!」

「係長ー、帝王大学卒ってー、そんなもんなんですかー」 

「おう、ややこしい家系図をちょっと見ただけで覚えられねえよ」

 係長は若干怒り気味だった。その時、それよりも大きな怒鳴り声が廊下の方から聞こえてきた。私たちは部屋から出た。隣の隣の部屋の前で、使用人の宇都宮さんが入り口の戸に聞き耳を立てていた。私たちはすぐにそこまで飛んでいった。

「宇都宮さん、どうしました?」

「あ、いえ、あの、こちらの部屋から大きな声がしましたので」

 係長は戸をドンドンと叩いた。

「すみません、どうかしましたか!」

 すると、戸が開いて、猿渡さんが出てきた。

「あれ、先輩……」

「おっ、なんだ村田か。皆さんも」

 猿渡さんはきょとんとしていた。

「何か怒鳴り声がしたので、それで……」

「あっ、すまない、戌井先生とちょっと……」

 様子が少し変な気がしたので、私は入り口から中を覗いた。

「あらら、少しうるさかったかしら?」

 戌井さんが言いながら近寄って来た。二人は特に険悪そうでもなかった。

「弁護士は、つい大声になって話してしまうことがありましてね」

「あ、いえ、先輩。別に、何もなければ、ええ」

 係長はぎこちなく引き下がった。特に怪しそうにもなかったので、私たちは客間へ戻った。


「おう、弁護士っていうのは、話してる時に、ついヒートアップする人が多いんじゃないか」

「そういえばー、そんな気がしますねー」

「おう」

「でー、家系図覚えて下さいねー」

「おう、ちょっと、見せろよ」

 係長は猿渡さんが置いていった家系図を見るために、私と京子の間に座った。



菊一(故)

 ‖―――――― 一太郎(96)(故)

とめ(故)  |    ‖―――――― 弥太郎(67)

     |    正代(95) |   ‖――――― 豊(34)

     |         |   昭恵(65)

     |         |

     |         ―― 弥二郎(?)

     | 

     |

     ――― 大次郎(93)

          ‖―――――― 小次郎(66)

          照子(95)     ‖――――― 進次郎(33)

                   フネ(67)



「おう、わかりやすいな」

 係長はコーヒーを飲みながら言った。

「ちょっとー、係長ー、近いー」

「おう、香崎、どう思う?」

「はい、豊さんだけ、名前が現代的な感じがします」

「おう、俺もそう思う。磯田は?」

「係長がー、美人のメイドをー、ナンパしないか心配でーす」

「あのなぁ……」

 係長は、京子に見張られていてナンパできないかもしれないという悲しみのオーラに包まれているようだった。


家系図ですね。

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