表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/35

1-6  パーティー

 グオー、と、吠え立てたイノシシグマの右手が振り下ろされた。


 ナイトハットの大きな頭部にヒット、バランスボールみたいにしてボスンボスンとふっとんでいく。


 死んでしまったかもしれない。ナイトハットに駆け寄っていく。


「大丈夫ですか。生きていますか」


「うう…」


 虫の息。


 振り返れば、3匹のイノシシグマの狙いは、飛び込んできた僕へと変わっている。


 笑い声なのか、ただ単に鼻息が荒いだけなのか、グフグフと音を立てながら歩み寄ってくる。 


「フン。いい気になって。何がイノシシグマだ! イノシシとクマとのただの雑種だろう!」

 

 案の定、イノシシグマは3匹とも目を回し、でっぱった鼻の下の口端くちはしからあわを垂らした。


 旅人のナイフを抜く。ここぞとばかりにイノシシグマを刺していく。さすがにLv1の攻撃ではなかなか死んでくれない。


 まるで、大木を切り刻んていくような感覚だ。なんとか3匹の巨体を煙に変えていく。


 白磁板ホワイトボードを確認してみる。


 なんと、Lv3になっている!


 よしよしよし、このペースだと、パープルヘアーを追い越すのなんてたやすい。


「あっ」


 ナイトハットの人を忘れていた。もはや死んでいるか。


 振り返れば、地面に転がっているリュックサックへと、ひん死の巨体をひきずっていっている。


「大丈夫ですか」


「や、やぐどうを……、リュック、の……、なかに……」


 薬草。


 転がっているリュックの口を開いてみる。と、白磁板ホワイトボードが入っていた。


 どれ……。ちょっと、拝見……。




◇◇◇◇◇◇


 名前:ピンギ・ショーグ

 Lv:3 性別:男 Rank:H

 年齢:23 身長:168cm 体重:118kg

 髪:ココナッツブラウン 目:コンゴブラウン


 職業:魔法使い

 称号:鳴かず飛ばずの万年ボーイ


 経験値:47


 最大HP:11 現在HP:7

 最大MP:21 現在MP:9

 攻撃力 :7  守備力:13

 スピード:5  運:2

 スキル

 

 魔法

 フランマ デミヌ


 装備:見習い魔法使いの服 見習い魔法使いのズボン

 旅人の靴 拾った棒

 お星様のナイトハット なめし革のリュック


 所持金:72G

 預貯金:100G



MAIL:

From:プリマムギルド協会事務局

縫い物のお仕事が入っております。


◇◇◇◇◇◇





 町に戻ってくると、ピンギさんがいつも利用しているという、『トリカム屋』なる店で腹ごしらえをした。


 ハンバーガーかピザかと思ったら、立ち食いうどん屋だ。


「アニキと呼ばせてくださいッス」


 僕はまゆをひそめたが、ナイトハットをかぶったままの彼は、ダクダクと汗を流しながら、割りばしでうどんをすすっていく。


挿絵(By みてみん)


 激安ゲキヤスうどんだけあって、店内てんない冒険者ぼうけんしゃでごったがえし。


「アニキが助けてくれなかったら、オデは間違いなく死んでいたッス」


 普段はグーイばかりを相手にしているピンギさんらしい。今日は、うっかり森の中に入ってしまった。運の悪いことにイノシシグマに遭遇した。


「さっきのスキル、やばかったッス。アニキみたいなジョブの人とパーティーを組めるだなんて、ワクワクするッス」


 パーティを組むだなんて、一言も言っていない。いや、言ってしまったか、ギルドの2階で。


「ところで、ピンギさんのメールに、ものの仕事が入っています、ってあったけれど、あれは?」


 ギルドから紹介された仕事だった。服を仕立てる針仕事はりしごと、つまり内職ないしょくだった。


 ピンギさんは、モンスター狩りはたまにしかやらない。ほとんどは、冒険者がやらないような内職でGをかせいでいるらしい。


 なので、いまだ、Lv3のありさまだと言う。


「でも、Lv10ぐらいまで行けば、パーティーに参加できるッス。それまでは辛抱しんぼうッス。Rankが上がれば、大金を得られるクエストをギルドから依頼されるッス」


 Rankを上げて大金をるというのは、いわゆる「メディアドリーム」と呼ばれている。「メディア」とはなんなのかいたら、「この世界=メディア」だった。


「上級クエストの中には、100万Gも稼げるのがあるッス。オデはパトリっていう田舎の村から来たんスけど、村にいたときは野菜畑で働いていたんス。月給は900Gッス。そんなオデが上級ランカーになれば、それこそメディアドリームッス」


 ピンギさんは自分で語って自分でうなずきながら、どんぶりに残ったツユをすすっていく。


「その日暮らしの生活もイヤになったんスよね。貯金した800Gを教会に払って、ジョブを貰ったんス。そんで、プリマムに来たんスけど、ヘヘ……、ちょっと甘かったかもしんないッスね……。パーティーに参加できれば――」


「そんなことより」


 あんまりにも辛気しんきくさいので、話を変えた。


「あの人って知ってますか。大したLvの冒険者じゃないんですけど、派手な女性で、紫色の髪をした僧侶で、えーと、名前は……」


「アーモ・クラーレさん?」


「ご存知?」


「有名人ッス。去年のプリマムギルドのミス・コンテストで1位になった人ッス。そのあとパーティー志願者があとをたたなかったみたいッスね。今じゃトップランカーの人たちとパーティーを組んで、メキメキと頭角をあらわしてきている美人冒険者ッス」


「ふーん……。ああ、そう……。美人冒険者……」


「オデなんて目にも鼻にもかけてもらえないでしょうッスけど」


「ハハッ。あんな薄汚(ウスヨゴ)れ。目にも鼻にもかけないのはこっちのほうですよ。それじゃ、狩りに行きましょうか。針仕事なんて今日でやめて。アーモ・クラーレだなんていう反吐(ヘド)が出るような女のLvなんか、とっとと超えてやるためにね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ