25 二人の恋人
メリークリスマス!!
……チュン、チュン、チュン。
スズメが鳴いている。
「ふあああああ~」
もう一度、のびをして二度寝を決め込もうとした瞬間、小ぶりだがポヨンとした弾力があるけれど柔らかくて、温かい何かを感じた。
「ん?」
何だろうと思いつつ、反対側を向く。プリンとした弾力のある何かがちょうどよく手のひらに収まる。
「んんんん?」
「おはよう……ですわ。アーク」
「ふわあああ。おはようございます。アークさん」
「へ?」
布団をめくって見れば、右側にまるで子猫のように俺の体にぴったりと身をくっつけているミュウミュウ。そして左側にそっと寄り添うように体をくっつけているテマリがいた。
「な、な、な、なんで二人とも俺の……っぐむ!!」
俺は自分の手を口に押しつけた。
待て、この状況を確認しないうちは、下手なことは言わない方がいい。
よく思い出すんだ。
昨日の夜は何をやっていた……?
確か、ミュウミュウとテマリがワインを持って俺の部屋に……。
そっとテーブルを確認すると……うわ~いったい何本飲んだんだ?
確か二人が持ってきたのは一本だったのに、テーブルには数え切れないほどの空瓶が転がっている。
思い出した。飲み始めたら、気持ちがよくなって、アイテムボックスから出しまくったんだった。
――それで?
うわああああ、覚えてねえ!!
チラッと二人を盗み見る。
……着てないっぽい。
着てないってことは、ヤッたのか!? ヤラなかったのか!? ヤラなかったのか!? ヤッたのか!? どっちだ!?
「……昨日のアークったら……まるで野獣でしたわね」
「ふおっ!?」
「うん。僕の体……壊れちゃうかと思った……」
「ぬおっ!?」
な、何があったんだ……?
俺は……何をしたんだ???
ふと気付く。シーツに赤いシミが……。
「こ、これは?」
「血……だよ」
「血? なんで?」
「それは……ねえ?」
「そうですわよ……ねえ?」
二人だけで通じ合わないでくれ! 頼む、俺にも教えてくれ――!!
「ぶっ」
「ププッ」
「え?」
ミュウミュウとテマリはそれぞれ腹を抱えて笑い転げる。
「え? え? え?」
「本当に覚えていないんですのね?」
「まったく、飲み過ぎだよ! 仕方がないなあ」
「あの? えっと? え?」
「昨日、酔ったアークがいきなりうさぎの真似をし始めたんですわ」
「うさ……ぎ……?」
「ええ。うさぎも野獣でしょ?」
「へ?」
俺はテマリを見てしまう。
「そうそう。『なでて、なでて』って、かわいかったんだよ」
確かに、前世で友達のところのうさぎは強引に、そしてしつこいくらい『なでて』って頭を押しつけてくるけれど……?
え? どういうこと?
「ずいぶん長いことなでていたおかげで、手が腱鞘炎になりそうだよ。体っていうか、手が壊れそうだよ」
……あれ? それって、俺はいたしていないって事?
「え? でも血は? シーツの血は!?」
「バカね、アーク。あなた、酔っ払ったあげくに鼻血を出したのよ」
「いったい、どんな想像をして鼻血を出したんだか……」
二人はまた顔を見合わせて「ねー」と楽しげに笑う。
ちょっと待ってくれ。今、心を整理する。
「って、整理できるか!!」
「まあ。うふふふ……」
「あはははは」
と散々笑った二人は、急にピタリと笑いを止めた。
「ねえ、アーク……」
そう言って、ミュウミュウは俺の体にぴったり体をくっつける。
「ねえ、アークさん……」
そう言って、テマリも俺の体にそっと体を添わせた。
「「私たち、いつでもアーク(さん)が望むならいいんですのよ(よ)」」
「え!?」
マ、マジ? 今度こそマジ?
「ただし……」
「ただし?」
ゴクリと俺は喉を鳴らした。
「王族である私とそういう関係になる前に、婚姻を結ばなくてはならないわよ」
「こ、婚姻!?」
思わず声が裏返る!
「別に獣人は結婚とかは気にしない人も多いけれど……でも妊娠しやすいから、いいお父さんになる覚悟を決めてね!」
「お、お父さん!?」
こちらも声が裏返る!
「アーク……」
「アークさん……」
熱っぽい二人の表情。これはイケる。けど……。
「ごめん! 俺、ダンジョンに忘れ物!!」
服を片手に走り出した俺の背中に、二人の笑い声が追いかけてくる。
からかわれたのか? それとも本気か?
まあ、いいさ。
ノーおっぱいだった前世。
けれど、今は恋人が二人もいる。
さすが異世界。
今の俺は、幸せだ!!
これにて、一応完結です。
ご拝読ありがとうございました。
需要があれば、続編も書こうかと思っております。
一応、構想としては、
アークの魔術師手としての活躍とか、アークにちょっかいをかけてくる異国のお姫様とか、テマリの魔道具作りとか、ミュウミュウの浄化無双とか、ドリアネスもアークに落ちるのかとか、イービスに救いはあるのかとかを考えております。
需要の有無は、どうか☆☆☆☆☆にてお知らせくださいませ。ぜひぜひ。




