Nexus & Nemesis (1)
「い……いや……無理‼ 無理‼ 無理‼ 絶対に無理‼」
アカリちゃんが……そう叫んだ。
「私にも無理だ」
「正義の味方」がそう言った。
「ああ……それが……こいつの数少ない欠点だ」
続いて強化装甲服を着た「魔法使い」。
「い……いや……ちょっと待って……あんた達みたいに凄い人の方が役に立つし……それに……あたしは……あんた達みたいな勇気なんて……」
「私は……勇気と云う感情を感じた事が無い」
「え……?」
「私は……どうやら……勇気と対になる感情を欠いて生まれてしまったらしい。だから……勇気とも無縁だ」
「な……何を言ってんの?」
「私は……生まれてから一度も……何かを恐いと思った事が無い。だから……何かに恐怖を感じる人の心を理解出来ない。後になって理性で考えれば……判らない事もないが……その場での、とっさの判断は無理だ」
淡々とした……静かな口調。
「たしかに……私は……ネット上で……あのダサい渾名を付けられ……『生ける伝説』扱いされてるらしい。その理由は簡単だ。他の『正義の味方』『御当地ヒーロー』に比べて、体格も経験も劣り……『魔法使い』でも『超能力者』でも無く……何の異能力も持たない私が、他の『正義の味方』『御当地ヒーロー』並の活躍が出来るのは……私にとって、俗に言う『死中に活を拾う』が……生まれ付き……さも当り前のように可能だったからだ」
ま……待って……それ……。
そうだ……。
それで……あたしが……この「正義の味方」の「中の人」だと思ってる人が……やってきた事全てが説明が付く。
「私は……戦士には成れるが……誰かを救う者には成れない人間だ。だから……探し続けていた。私が成れない……誰かを救う者に成れる人間を……」
その「正義の味方」は……頭を下げる。
「たのむ……試すだけは……試してみてくれ……」
「わかった……。やれるだけ……やってみる」
あたしは……そう言った。
「い……いや……でも……」
「アカリちゃん」
「何?」
「アカリちゃんの『使い魔』を全部出して、逃げ遅れた人や怪我人が居ないかを探して」
「で……でも……まだ、一度に一六体全部は使い込なせてないから……」
「凛ちゃんに大体の場所を教えてあげて。凛ちゃんの能力で、怪我人なんかが居る場所を特定する」
「わかった」
「わかった」
「えっと……精神操作系で……人を落ち着かせるタイプのヤツを使える人は……?」
「あたし」
弥生ちゃんが手を上げた。
「じゃあ、もし、逃げてる人達が混乱し出したら……弥生ちゃんの『魔法』を、あたしが増幅して落ち着かせる」
「うん」
「ねえ……貴方達……『魔法』だけじゃなくて、格闘技もやってんだよね?」
あたしは……スペクトラム・スカーレットの方を向く。
「あ……は……はい」
「じゃあ、怪我人を応急手当とか出来る?」
「い……一応……えっと……」
「あたし達で何とかなるか……お医者さんとかに任せた方がいいかの区別ぐらいは出来ます」
スペクトラム・ペンタグラムの「緑」がそう答える。
「よし、じゃあ、みんな……手分けして……」
「そうか……間に合ったか……念の為、確認するが、テストは、どこまで終ってる?」
横で「正義の味方」が……誰かと無線通話をしていた。
「ウチの医療チームが、あるモノを持って来た。よければ使ってくれ」




