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「ねえ、お姉さん、何やってたんですか?」
「何って?」
「仕事とか……どうして、久留米に住んでるのとか……どこで『魔法』を覚えたのか……とか……」
金髪短髪のお姉さんの自家用車(中古らしい軽だけど、有名メーカーのEV)に乗ってリンガーハットで遅めの夕食。
「NEO TOKYOの自警団に入ってて、そこで『魔法』を習った。けど、上とトラブって、こっちに逃げて来たんだ」
NEO TOKYOは、日本各地に点在する関東難民が暮す人口島だけど……数百万人規模……下手したら一千万を超える「関東難民」全員が住むには、到底、足りない。
なにせ、「関東難民」とは言うけど、千葉・埼玉の一部を除く旧首都圏の1都3県に、群馬・栃木の一部、山梨・長野・静岡の大半に、愛知・岐阜の一部が廃墟になったんだから……。
「でも、さっき、当分、自宅に帰るな、って言ってましたけど……どこに泊まれば……?」
瑠華ちゃんが当然の質問。
「今日は……私と、私の知り合いの家に分散して泊まってもらおう。明日からは……私の今の勤め先かな?」
「どこです?」
「鳥栖に有る児童養護施設だ……」
「あ……あの……何で、児童養護施設で『魔法使い』が働いてるんですか?」
「DV親や人身売買をやってる犯罪組織が、チンピラを雇って『子供を取り返し』に来る事が有るんでね……警備は、かなり厳重だ。一時的に逃げ込むなら最適だろう」
「すいません……」
あたし達3人は、同時にそう言った。
「いや、いいよ……大した事じゃない」
そして、食事も終り、車で出発。
最初に到着した場所で降りたのは、あたし。
そこには、あたしと同じ位の齢のショートヘアの女の子が迎えに来ていた。
「あ……あの……あたし……」
「言わなくていい。ヤバい事に巻き込まれてるんだろ? あんたの素性は聞かずに一晩泊めろ、って、あんたをここに連れて来た友達に言われてる」