(8)
「な……何……これ?」
えっと……本日何回目の「何これ?」だろ?
ドアに内側から鍵がかかってた仮設トイレの片方で……そのドアが吹き飛んでた。
仮設トイレに拳銃を撃ち込もうとしてたヤクザさん1名が……大怪我を負ってるらしい。
「だから……何が起きてんだッ‼」
顔だけは温厚そうなお爺さんのブチ切れまくった声。
「どいてッ‼」
「お……おい……何だ、その物騒な『魔法の杖』は?」
師匠の声を無視して、魔法の杖の尖った先端を、もう1つの鍵がかかったトイレのドアの端に突き刺し……。
「ちょっと待って」
葵ちゃんが……あたしに魔法をかける。
葵ちゃんの得意な魔法は……精神操作系の中でも、味方を支援するタイプ。
葵ちゃんの魔法で、一時的に「火事場の馬鹿力」を出せるようになったあたしは……。
「おりゃあああッ‼」
魔法の杖をバール代りにして、ドアをこじあけ……。
「な……なに……これ?」
「え……えっと……予想は付いてたけど……」
トイレの中には……龍虎興業の組長さんの成れの果てらしい……河童の焼死体が有った。
「あ……あれ……」
続いて……ヤクザさんの1人が、うろたえたような声……。
たしかに……この状況じゃ……えっ?
ヤクザさんが指差してるのは……河童の丸焼きが入ったトイレとは反対の方向……。
そこに有るのは……。
筑後川。
でも……。
冬でも……筑後川がこんな事になったのは見た事がない。
しかも、今は5月。
更に……誰かが魔法を使った気配は感じなかった。
それに……こんな事が可能な魔法なんて聞いた事が無い。
でも……それは起きていた。
現実に起きていた。
筑後川が凍り付いていた。




