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「神の御前で噓をついたアナニヤへの神の審判だ! 見よ!」
「神の天使に打たれて死んだのだ! それでも天使は吊し首にせねばならん」
ハーマン・メルヴィル著『ビリー・バッド』より
「みんな……薄々……思ってただろうけど……やっぱり……」
試合当日の楽屋で、瑠華ちゃんが携帯電話の画面を見ながら、そう言っていた。
「状況証拠は揃ったね。急に、全員、居なくなったと思ったら……何故か、久留米で活動してる『正義の味方』が広島に現われた」
『広島県を実効支配している暴力団・神政会とNeo Tokyo Site02の自治会の双方の広報部門は、昨日、両者が講和協定の交渉に入った事を発表しました』
ゴールデン・ウィークの少し前から起きていた広島の暴力団と、広島沖に有る「関東難民」向けの人工島の自治会・自警団の抗争。
それを、「正義の味方」達が、無理矢理、鎮圧したらしい。
どうやら……日本各地から広島に集まってきたらしい「正義の味方」の中には……。
「ね……ねえ……でもさ……」
今度は、凛ちゃんが自分の携帯電話の画面を見せる。
そこに表示されてるのは……。
この久留米を中心に活動している「正義の味方」の中でも……デビュー1年ぐらいで「生きた伝説」と化した「護国軍鬼4号鬼」。
全ての発端になった……あの山奥の麻薬農場の事件の時に遭遇した人だ。
でも……その装甲は……あっちこっち破損していた。
一体……相手は……何なんだよ?
この人でも……ここまでのダメージを食らう敵って?
「あ……そうだ……2人とも朝御飯食べた?」
その時、凛ちゃんが、急に、そんな事を言い出した。
「じゃあ……着替える前に、朝御飯にしようか? 何か、露店が出てるらしいんで買ってくるね」




