(6)
「何でッ⁉」
江見さんに、今、起きた事を連絡していた瑠華ちゃんが、そう叫んだ。
「どうしたの?」
「絶対に警察には連絡するな、って」
頭を抱えたくなったけど……ウチの「会社」は、元は「ヤクザのフロント企業」だ。
まぁ、被害者の立場でも警察に捜査されたらマズい事は山程有るだろう……。
「何か……事情が有りそうだな……」
「あ……あの……お姉さん、同業者ですよね……?」
そう言った凛ちゃんに対して、金髪短髪のお姉さんは……。
「あのな、あんた達、どんなロクデモない師匠に付いたんだ? それとも、まさか我流か?」
「えっ?」
「同業者の可能性が有る誰かを下手に『魔法』で探るな。相手が本当に同業者だったら、因縁付けてると見做されるぞ」
い……言われてみれば……。
「魔法」で何かを「探る」場合、相手に対して「力」を放っている。
もし、その相手が同業者なら、当然、「魔法を使って自分の事を探った」事に気付かれる。
そして、その中には「同業者が魔法を使って自分の事を探った」事を嫌に思う人の結構居るだろう。
でも……何で、あたし達の師匠は……そんな「業界の常識」を教えてくれなかったんだろう……?
「あの……それで……このおじさん達の記憶を精神操作系の『魔法』で消すなんてのは……」
凛ちゃんの一言で、その場が凍り付いた。
「や……やめろ〜ッ‼」
「お……お前ら……本当に『魔法少女』なのかぁ〜ッ⁉」
これが……凛ちゃんの問題点だ。
本当に「知性派」じゃなくて「普通の人が考える『知性派』を演じている」だけなので……時々、「一見、知性的かつ現実的。でも、良く良く見れば、普通の人が考える『知性的』『現実的』のパターンに沿っただけの何も考えてない安易な発想」をやる事が有る。
「え……えっと……やめといた方がいい。問題点が2つ有る。そこまでやるには、こいつらを拉致って、何日か手間をかける必要が有る。そして、精神操作された奴は……精神操作された通りには動いてくれるが、術者が思った通りに動いてくれる訳じゃない。ヘボが作ったコンピューターのプログラムと同じだ」
「あの……おじさん達……」
瑠華ちゃんは、しゃがむと、地面に倒れてる危ないおじさん達に話し掛ける。
「お……お兄ちゃんだろッ‼ お兄ちゃんと呼べ‼ 大体、お前ら、俺達『地元民』のお情けで、ここに住んでるんだろうがッ‼ この難民どもがッ‼」
「すいません……もうすぐ、ウチのマネージャーさんと弁護士さんが来るそうなので……ゆっくり話し合って下さい。告訴する気は無いそうなので……」
「えっ⁉」
「そう言えば……あんた達、御当地『魔法少女』じゃなかったっけ?」
「は……はい……」
「ストーカー系のファンに自宅や事務所を突き止められたようだな……当分、自宅に帰るのはマズいぞ……」