(7)
「おい……大丈夫か……」
膝をついたあたしに……高木さんとスペクトラム・スカーレットが駆け寄る。
「商品として必要なのは……お前の体だ。魔力を吸い取り……生き人形に変えてやる……」
薄れていく意識の中で聞こえるのは……吐き気がするような台詞。
あたしの守護天使の姿が薄れ……代りに、相手の守護天使の体が大きくなっていく……。
「おい、下手な真似をするな……この術が中途半端な所で途切れると、何が起きるか……うわぁッ?」
えっ?
轟音と共に……男の人が吹き飛ぶ。
そして……。
緑色のライダースーツの人が2人に……キャプテン・アメリカ風のライダースーツの人が1人。
「しっかりして……」
あれ?
緑色のライダースーツの人が、あたしを抱え起すと……。
もの凄い力が……あたしの体に注入された……。
「な……何?」
「逃がさないよ」
男の人に残り2人が近付き……。
「ま……まず……いや……助かった」
その時……男の人と一緒に来た4人の魔法少女の守護天使が舞い降り……。
「これで……お前ら、全員、終りだあああああッ‼」
その叫びと同時に……4体の守護天使の悲鳴。
4人の魔法少女の守護天使が……苦しみ出し……そして……姿が薄れ……。
代りに……男の人の守護天使が更に巨大化。
「クソメスガキどもがあッ‼ 全員、わからせてや……あ……」
突然、男の人の髪が抜け落ち始めた。
続いて、男の人の皮膚に無数のあかぎれのような傷が出現し……顔色もどんどん悪くなる。
「な……なんだ……何が……起き……?」
その場に一体だけ残った……男の人の守護天使が突然苦しみ始め……あれ?
私の守護天使は……どこに……?
「何が起きてる?」
「え……と……予想外の事……」
「予想外?」
「あの……この子が、そいつに力を吸い取られてたんで……ボクが、この子に力を補充してあげたら……その……」
「だから……その結果……何が起きた?」
「ええっと……だから……その……色んなモノが混じり合って……化学反応を起こしスパーク……みたいな……」
「おい、理系の大学に行くつもりの人間の台詞か、それ?」
「だからっ……えっと……そいつが使ってたこの子の霊力を奪い取る魔法が途中で中断された上に、ボクがこの子に霊力を補充したせいで……そいつの使い魔に吸収された……この子の使い魔が……逆に内部から、そいつの使い魔を吸収してるみたい……」
「へっ?」
「そいつの使い魔だけじゃない。そいつの使い魔はさっき……あそこに居た4人の女の子の使い魔も吸収してた」
「はぁ?」
「6体の使い魔と……ボクが、この子に注入した『大地の気』が混じり合って……何かが……」
生まれた……。
その子は……男の人の使い魔を内部から食い破り……出現した。
ドラゴン。
巨大な鳥。
羽毛恐竜。
そのどれにも見える……虹色の怪獣が……。
「どうやら……俺の守護天使が……こんな姿に進化したようだな……。おい、すぐに、こいつら……おい、待て……」
その子は……口を開いた。
とてつも無く、強大な霊力を吐き出そうとしていた。
自分が……その子の主人だと勘違いしている男めがけて……。
「やめなさいッ‼」
あたしが叫ぶと……その子は……攻撃を中断。
そして……。
霊力の奔流になって……あたしの体に吸収された。
「お……おい……待て……。か……返せ……それは……俺のだ……返せ。返せ……返して……お願いです、返して下さい」
残念ながら……あたし達の流派の「魔法使い」は……「守護天使」を失なうと「魔力検知」なんかの基本的な魔法しか使えなくなる。
「もう……この人は……大した魔法は使えなくなってる。放っておいても何も出来ない」
「じゃあ……行くか……」
「お……おい、待て……そんなの有りか? 返せ……この泥棒……何年も何年も修行して得た俺の力だぞ……返せ……このクソメスガキ‼ てめえ……才能も無けりゃ、何の努力もしてねえクセに……俺の力を横取りかよ‼ ふざけんなッ‼ ふざけんなッ‼ ふざけんなッ‼ ふざけんなッ‼ 世の中、絶対に間違ってるッ‼」
背後からは……男の人のみじめな泣き声が響いていた。




