(4)
「ごめん……今日も泊めて」
事務所を出た後、あたしは瑠華ちゃんに言った。
「また、お姉ちゃんと喧嘩したの?」
「うん……。この仕事やめろって言われて……いつもの事……」
「私も瑠華ちゃん家に泊まっていい?」
凛ちゃんがそう言った。
「うん……2人とも、今日は、あたしん家に泊まりな」
外は、すっかり暗い。
西鉄久留米駅前のバス停で、バスを待つ。
一〇分以上待って、ようやくバスが来る。……最終便だ。
「ねえ……やめられるかも知れないよ……この仕事」
瑠華ちゃんがバスの中で、そう言った。
「えっ?」
「市役所の広報の打ち合わせの資料に書いてあったけど……『関東難民』には、生活支援だけじゃなくて、富士の噴火の時の怪我や病気の後遺症の医療補助も出るみたい」
「そっか……」
「でもさ……何て呼べばいいんだろうね?」
「凛ちゃん、何が?」
「私達が『魔法少女』をやめたら……魔法が使えるだけの普通の女の子の事、何て呼ぶのかな?」
「わかんない……」
「いつか……あたし達が……『魔法少女』だった事を世の中が忘れ去って欲しいと思っても……忘れてくれるのかな? 世の中の他の人達は……」
瑠華ちゃんの……いつもの辛辣な意見。
やがて、瑠華ちゃん家の最寄りのバス停に到着……。
「変じゃない?」
あたしで小声で瑠華ちゃんに言った。
「うん……」
この時間に、あたし達の他に3人、同じバス停から降りた。
三〇代〜四〇代ぐらいの男の人が2人に、二〇ぐらいだけど……髪型は「金髪に染めた五分刈り」の女の人。
よりにもよって、男の人2人がフード付きの上着を着てて、しかも、そのフードで顔を隠してる上に……女の人も、何故か首を傾げた後に、やたらとゴツい登山用らしいリュックサックから帽子を取り出して顔を隠す。
「う……嘘だよね……」
青がシンボルカラーの凛ちゃんが顔を青くしてる……何て冗談を言ってる場合じゃない。
あからさまに怪しい人達が3人、あたし達の後ろから付いて来て……。
ブツブツブツブツ……。
後ろに居る男の人2人が……何かを呟いてる。
魔法系の力は感じないので……その手の呪文なんかじゃない……多分だけど。
「ね……ねえ……あの人達……その……」
「男の人達は『魔法使い』系じゃないみたい……多分だけど……」
凛ちゃんが、そう言った。相手の「気」「霊力」を「観」る魔法を使ったらしい。
「『男の人達は』?」
「女の人は……」
「おい……」
瑠華ちゃんが住んでる団地の近くまで来た時、女の人が声を出した。
「そこの2人、誰の許可を得て、その子達を撮影してる?」