(2)
「馬鹿か、お前らッ‼」
あたしが元の場所に戻ると……眞木さんのお姉さん……えっと、高木さんって言った方がいいのかな?……の第一声がそれだった。
高木さんとスペクトラム・スカーレットは、十数人の男の人達(内、半数以上が獣人か河童)に囲まれていて……なぜか、スペクトラム・スカーレットは高木さんの背後に隠れていた。
「何で、戻って来た」
「何でって何で?」
あたしが後部座席に乗ってるバイクを運転してる女の子が、そう返す。
「救助対象を連れて、さっさと逃げろ」
高木さんは、そう叫びながら……まず、目の前に居た獣人の腹に突きを入れ……。
よろり……。
その獣人は……目を大きく開け……おどろいたような顔になりよろめく。
「ヘルメットは取るなよ。こいつらが、この様子を撮影して、どっかに送信してるかも……ん?」
高木さんが、そう言った途端に……人間の姿の男の人が携帯電話を取り出し……。
ドゴォッ‼
バイクを運転してた女の子が、一瞬で、5発の「気弾」。5人が一気に倒れる。
「馬鹿だ……こいつら……」
「言わなきゃ良かった……」
高木さんが、既にダメージを受けてる獣人の膝を蹴ると、その膝が変な方向に曲り、獣人が倒れる。
「来い」
「ええええ……?」
高木さんは、スペクトラム・スカーレットの手を取り、その場を抜け出そうとするけど……河童2匹に阻まれ……。
「うぎゃああ……‼」
「あじいいいい……‼」
ところが、その河童2人の全身に……水ぶくれ? え? どうなってんの? 何の魔力も感じ無いのに……?
「お待たせッ‼」
あたしが乗ってるのと、おそろいのバイクに、このバイクの運転手とおそろいのライダースーツとヘルメットの別の女の子が到着。
そして、新しくやって来た女の子は……高木さんに何かを投げる。
五〇㎝ぐらいの黒い棒状のモノ……高木さんが、それを受け取ると……。
ガシャっ……。
どうやら……それは、一五〇㎝の棒を折り畳んだモノらしかった。
「伏せてろッ‼」
「は……は……は……はいッ‼」
高木さんが、スペクトラム・スカーレットにそう叫んだ瞬間……。
「ぐへっ?」
跳ね上がった棒が河童の1人の股間を直撃。
「クソ……」
続いて、高木さんに飛びかかろうとした獣人の腹を棒が突く。
でも……獣人は一撃では倒れず……獣人は棒を掴み……。
次の瞬間、高木さんが棒を手から離す。
「へっ?」
その時、既に、高木さんはコートの懐に手を入れて……何かを取り出していた。
「うわっ?」
「お……おい……」
高木さんは、次々と、周囲に居る相手に太くて長い黒い針のようなモノを投げ付ける。
「……」
何だ?
高木さんが何かをつぶやいたのに……声が小さくて聞こえない。
「おおおお……」
高木さんはスペクトラム・スカーレットの服を掴むと……片手でスペクトラム・スカーレットを持ち上げ……もの凄い勢いで駆け出す。
「私はいい。この2人連れて……逃げろ」
「阿呆かッ‼」
あたしの乗ってるバイクを運転してる女の子が、そう叫び返す。
「話は後で聞く。逃げろ‼」
「馬鹿野郎‼ キミを心配してるヤツの事も……少しは考えろッ‼」
「議論してる暇は無いッ‼」
ドオンッ‼
まただ……。
どうなってんの?
魔力を全然感じないのに……高木さんとスペクトラム・スカーレットを取り囲んでいた男の人達が、次々と吹き飛んで行く。
「あいつらは……ボクらで何とかなる。問題は、キミだ、瀾ッ‼」
「うるさい、早く行け‼ 多分、更に奴らの応援が来る」
「その通りだ……。そのチビの忠告に耳を貸すべきだったな……」
音もなく近付いてきた6人乗りのバン……多分、EVだ……。
その車から出て来た……その人は……そう言った。
「ま……師匠……」
「久し振りだな……」
轟……。
あたし達に「魔法」を教えた……テロ組織の幹部が……何故か、ここに居た。
とんでもない量の魔力が……吹き出し……。
そして……鉛色の翼の生えた男にも女にも見える身長5mぐらいの巨人が師匠の真上に姿を現す。
更に5人が……バンから出て来る。
背広姿の二〇代ぐらいの男の人が1人と……あたしと同じ位の齢の女の子が4人……。
その4人は……一見するとどこかの学校の制服に見えるけど……妙に古臭い感じで……スカートだけが異様に短い服を着て……って、3月って言っても、まだ寒いのにタイツもコートとかも無しって……ちょっと……その……。
あれ? その4人の顔に見覚えが……。
え……えっと……何年も会ってないから……確かな事は言えないけど……その4人は……師匠が育てた「魔法少女」の中で……最も優秀だった……。
「そいつらが君に、どんなデタラメを吹き込んだか知らんが……まずは、一緒に来てもらうよ。そして……ゆっくりと……」
師匠は……ゆっくりとあたしに近付き……。
ん?
何だろ?
高木さんが……手で何かの合図……でも……意味が……わからない……。
と……思った次の瞬間。
どおんッ‼
「え? うわああああ……⁉」
最強魔法少女×4と……バンの運転手らしい男の人は……何が起きたか理解出来てないようだ。
そして……理解出来てないのは……あたしも同じだ。
魔法じゃない。
多分、全て科学的に説明が付く事だ。
でも、それは、あまりに異常な事態だった……。
ごおんッ‼
「ぐ……ぐえええ……‼ ……こ……腰が……ああああ……」
突然現われた、無人かつほぼ無音、でも、かなりの速度のバイクに跳ね飛ばされた師匠は……一度、宙を舞って、そして、地面に激突した。




