(2)
「ただいま〜」
我ながら、何の感情もこもってない、雑な「ただいま」だ。
「おかえり……」
出迎えたお姉ちゃんも暗い顔だ。
体も顔も小学校高学年にしか見えない。けど、大学生。
原付を運転してると……いつも警察に止められる。
笑い話でも萌え系のマンガでもない。
約十年前の富士の噴火の時、首都圏が壊滅し政府も消え去った事によるゴタゴタで、いくつもの新興のテロ組織・犯罪組織が生まれた。そして、当時、関東に住んでたあたしたち姉妹は「将来の構成員」を求めていた、そんなテロ組織の1つに捕まった……。
「魔法」の才能があったあたしは、そのテロ組織の「魔法使い」から「魔法」を教えられ……そうでなかったお姉ちゃんは、将来的に「少年兵」として使う為に成長抑制剤を投与された。その結果が……今のお姉ちゃんの姿だ。
「やっぱり、あの仕事やめてよ。来年、卒業だから、その後は、私が働くから」
「その話、何度もしたよね?」
「でも……」
「『でも』? 何?」
「妹がエロ同人作家の餌食にされてるの嫌なんだよ。冗談抜きで」
「何? お姉ちゃん、そんなの読んでんの?」
「何、話を逸らしてんの?」
「だからさ……お姉ちゃんの治療費、誰が払うの?」
「正義の味方」が、あたし達を誘拐したテロ組織を壊滅させて以降、お姉ちゃんは……マトモな体になる為に、病院通いを続けているが……経過は……まぁ、見ての通りだ。
「もう……私、このままでいいよ」
「えっ? 何、言ってんの?」
「もし、いつか……好きな男の人が出来て、結婚しても……その人の子供を産めなくていい」
「悪い冗談はやめて。もう、この話は無し」
そう言って……あたしは自分の部屋に駆け込む。
「ちょ……ちょっと待って……」
お姉ちゃんは……もう二〇……でも、子供の頃に投与された成長抑制剤のせいで……まだ生理は来ていない。
あたしは……自分の部屋の鍵をかけて……ベッドにうずくまり、耳を塞いだ。