(4)
「ところでさ、学校は……その……?」
「大丈夫、2人ともあたしの家に泊まったら……そろって風邪ひいちゃった事にした」
瑠華ちゃんが、そう答えた。
「あのさ、PCの接続終ったよ」
その時、食堂の大型TVの辺りで何かの作業をしていた女の人がそう言った。
身長一七〇㎝台。銀色の髪で、北米連邦の女優のメリッサ・ブノワに似た白人の外人さん……って、まさか……。
「る……瑠華ちゃん……あの人」
「うん。眞木さんのお姉さんの恋人」
「あああ……」
「美桜ちゃん……」
「あああ……」
「はい、落ち着いて、深呼吸。す〜、は〜、す〜、は〜」
「あああ……」
「駄目だ、こりゃ……」
「じゃ、再生しますよ。どのファイルですか?」
そう言って青円さんとか云うお坊さんがモバイルPCを操作する。
大型TVにはPCの画面が映り……。
「ああ、これ」
えっ?
写ったのは……どこかの公園みたいな場所……。
何かのイベントらしく……見物客らしき人達が写っていて……。
『では、第一試合の開始です』
画面の中には……陽さんと千明さんが居た。
2人とも何か密教系らしい呪文を唱え……あれ? 呪文が同じだ。
千明さんが錫杖を振る。
陽さんは印を組んだまま……。
何も起きない。
けど……だんだん、千明さんの表情が変る……。
『お……お前……ふざけた真似を……』
続いて……陽さんが舌を出して右手の中指を立てる。
「こ……これは……?」
「昔、私とこの馬鹿は……『NEO TOKYO』で、その手の『試合』をやった事が有ってな。その時のだ」
千明さんが、そう説明する。
「何が起きたんですか?」
「あたしが千明の『気弾』を千明の得意技を使って逸らした」
そう言ったのは陽さん。
「この馬鹿が付け上がるから見せたくなかったんだ……」
え……?
相手の攻撃を、その相手の得意技を使って防いだ、って事?
「それって……すごくないですか……」
「ああ、霊視能力と密教系の『魔法』に関する知識が有ればな……」
あっ……。
カメラには……霊力・魔力・気・使い魔・守護天使なんかは基本的に映らない。
その場で見てる人でも霊視能力なんかが無いと……何が起きてるか判らない。
そこまでのハードルをクリアしても……実は、もの凄い魔法の攻防が起きてたとしても……それがどれ位もの凄い事なのかは……「魔法使い」同士でないと基本的に判らない。
「『魔法少女』同士の公開対決は初めてなんだろ?」
「は……はい……」
「『魔法使い』同士の戦いと言っても……素人が見て面白いのは、こんなのだ」
画面の中では、武器を使った接近戦が始まっていた。
千明さんの錫杖が目にも止まらない速さで振われ……それに対して陽さんは防戦一方。
「青円さん、そろそろ、動画止めて」
「はい」
「おい、ここから、あたしの華麗な逆転劇が始まるんだろうがッ‼」
「セコンドのアドバイスが無かったら、勝てなかった奴が何を言ってる?」
「最後の決め技は、あたしが自分で考えたんだ」
「あの……で、この動画見せて……何が言いたいの……?」
相手チームの「クール系一匹狼」担当さんが質問。
「誰かが、3チームのリーグ戦の『台本』を書いてるなら……どのチームを勝たせる?」
「えっ?」
「3つ目のチームの女の子は……中学生ぐらいなのに、大の大人を派手に吹き飛ばしたと言ったな……。3つ目のチームの得意技は……多分、身体能力をUPさせるモノか、降魔武術……気や霊力のコントロール技術も含んだ近接戦闘術……だ」
「そ……それで……」
「どのチームの戦い方が、素人が見て普通に楽しめると思う? 汎用タイプと、精神操作特化タイプと、近接戦闘特化タイプの」
「あ……」
「台本が書かれてるなら……最後に勝つのは『素人が見て面白い』戦い方をする奴らだろう。しかも……そのチームだけ中学生……。たしか『魔法少女』って、高校卒業で引退が普通らしいな。なら、運営会社が長く稼げるのは、どこだ?」
「あ……あの……私達に、どうしろって……」
「勝負から下りろ。普通にクソだ、この勝負」




