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「えっと……あとさ……『魔法少女』同士が戦う公開イベントに、精神操作系が得意技の『魔法少女』が出るって、明らかに変だぞ」
あたしが呆然としている最中……陽さんが、相手チームの方を向いて、そう言い出した。
「へっ?」
「理由はいくつか有る。1つ、マトモな『魔法使い』なら修行の過程で自分の心を制御する技術を身に付ける。精神操作系は対一般人用の『魔法』で、対『魔法使い』には向いてない」
「そ……そうなの?」
「そして、相手がマトモじゃない『魔法使い』だったら……昨日みたいな事になる」
「あ……あ……あ……」
「あの……昨日、何が有ったんですか?」
あたしは、ようやく、その質問をする事が出来た。
「動画は撮ってたけど……霊的・魔法的なモノはカメラに映らないからな……周囲の人間は大騒ぎしてるけど……肝心の大騒ぎの原因が映ってないマヌケな代物だ」
……なるほど……。
「で……もう1つの問題がそれだ……。精神操作系の魔法で相手を倒したとして、そんなの『映像』として面白いモノになると思うか?」
「ちょ……ちょっと待って……その……」
相手チームの「一匹狼」担当さんが手を上げて、何かを言おうとしてるけど……まだ、考えがまとまってないようだ。
「そもそも、あんた達『魔法少女』がやってる事って、コレじゃないんだろ?」
陽さんは、そう言って右手の人差し指と親指だけをのばし残りの指を曲げる。
「拳銃」のジェスチャー……そして、格闘技とかの試合や、あたし達「魔法少女」の仕事での意味は……「台本なし」「怪我人が出る事が前提」。
「言っちゃ悪いが……あくまで『見世物』なのに……見栄えがしない上に、悪いイメージが有る技が『得意技』の奴が……メインの善玉役を張れると思うか?」
そう言えば……そうだ……。
世界で初めて、普通の人達……魔法使い・超能力者・妖怪系以外って意味での……が存在を知った「異能力者」は「精神操作能力者」。
しかも、その「精神操作能力者」がやったのは……ニューヨークでの大規模テロ。
あたし達が生まれる前の話だけど……あたし達のファン層である中年以降のおじさん達にとっては……物心付いた後の出来事だ。
じゃあ……「精神操作」系の「魔法」が得意技の「魔法少女」なんてのにファンが付くかと言えば……。
無い。
無い。
無い。
絶対に無い。
普通に考えて有り得ない。
1人ぐらい「悪役」っぽい子が混ってる魔法少女チームならともかく、全員悪役の魔法少女チームにファンが付くなんて有り得ない。
イベントに行ったら「精神操作」されるかも知れない魔法少女チームのファンになる人なんて絶対に居ない。
「あ……あの……だ……だから……何が……言いたい……」
口では、そう言ってるけど、体は正直だ。
相手チームの「クール系一匹狼」担当さんの口調は、完全に冷静さを失なってる。
「何が言いたいの?」と訊こうとしてるけど……多分、次に陽さんが何を言うか、薄々、気が付いてる筈だ。
「薄々気付いてんだろ……あんた達も当て馬で、残りの1チームが勝つ『台本』になってるって事に」




