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「何で、この人達と同席しなきゃいけないの?」
食堂に行くと、もう朝食の時間は終ってて……しかも、そこに居たのは……。
「ごめん……それ、あたしも同じ事言いたい……」
「はい、まずは話がややこしくなるんで、一応、全員、自己紹介。私は笹原千明。流派は天台密教だ」
そう言ったのは金髪・短髪のお姉さん。
「あたしは関口陽。流派は修験道当山派」
続いて、もう1人のお姉さん。
「あ……僕は藤田青円……一応、日蓮宗の修法師の資格を持ってます。あと、ここの施設の職員です」
その次には……二十代後半〜三十代前半ぐらいの気が弱そうな作務衣姿の坊主頭の男の人。
「あたしは……魔法少女チーム『フラワレット・カルテット』のリーダーのプリムローズ」
この前、あたし達に決闘を申し込んで来た……ちょっと気が強めに見える以外は「魔法少女チームのリーダー」を絵に描いたようなツインテールの女の子。
「同じくネモフィラ」
他のチームの事をとやかく言えないけど……これまた「魔法少女チームの知性派の副リーダー」を絵に描いたようなロングヘアの女の子。
「『フラワレット・カルテット』のポピーですぅ」
これまた、他のチームの事をとやかく言えないけど「魔法少女チームのあざと可愛い系担当」を絵に描いたような女の子。
「同じくウィステリア」
今度は、「チームの中のクール系一匹狼」を、これまた絵に描いたようなショートヘアの女の子。
「流派は?」
陽さんからツッコミ。
「秘密」
「ねえ、本名教えて♥ あと、SNSやMeaveのアカウントも♥」
瑠華ちゃんが「あざと可愛い」系の口調で、そう言った。
「教えられる訳ないでしょ」
そう言ったのは……相手チームの「チーム中の一匹狼」担当らしいショートヘアの子。
「何で?」
「あんた達にも覚えが有る理由よ」
「わかんな〜い♪」
「そう云う芝居は、ファンの前だけにして」
その後、一応、あたし達も自己紹介をして……。
「で……昨日……何が起きたの……?」
「こいつらが……あんた達に『決闘』を申し込んで来た」
陽さんが、そう説明する。
「え? でも、もう、申し込まれて……」
「違う。その場での決闘だ」
「な……何で?」
「あなた達が要らないから……」
機嫌が悪そうな口調で、相手チームのリーダーっぽい子が答える。
「へっ?」
「久留米の次の御当地『魔法少女』を決めるイベントに必要なのは……あたし達と『スペクトラム・ペンタグラム』だけ。あなた達、引退予定のチームに出て来られたら、話がややこしくなる」
そうだよね……あたし達以外の2チームの内、勝った方が久留米の次の御当地「魔法少女」になる、って台本なのに、万が一、あたし達が勝ってしまったら……しかも、ヤクザの代理戦争を兼ねてるイベントで「2つの暴力団の代理チームのどっちも負けました」なんて事になったら……下手したら、あたし達を含む関係者の命が危ない。
「は……はぁ……そっか……なら話は簡単だね」
「じゃあ、私達は、大人しく引退するね」
「若干の問題さえ片付けばね……」
「えっ?」
「へっ?」
「どう云う事?」
「どうなってんの?」
やめる気満々のあたし達の反応に、キョトンとする相手チーム。
そっか、この子達は……運営会社の背後に居るのが暴力団だ、って気付いてないんだ。
「で……肝心の話だけど……昨日の晩、決闘を申し込まれた後に何が起きたの?」
「あんた達の流派では『守護天使』って呼ぶんだっけ……『使い魔』と言うか、陰陽道で言う『式神』と言うか……密教系で言う『護法童子』とか……」
「それが……?」
「暴走した」
え……ちょっと待って……。それ……まるで……あの山奥の「麻薬農場」で起きた……。
「な……何で……?」
「あたし達のチームの得意技は『精神操作』系……。だけど、何故か、あなたに精神操作をして、あなたの仲間を攻撃させようとしたら……あなたの心に既に別の精神操作系の魔法がかけられてた」
「な……何を……言ってるの……?」
「『精神操作』系の魔法で良く有るヤツだ。精神操作の『上書き』を防ぐ精神操作系の魔法だ。外部から心に魔法や超能力で干渉された場合、正気を失なって『火事場の馬鹿力』を出して、精神操作をした相手を殺そうとする……そんな魔法が、あんたの心にかかっていた」
そう言ったのは……千明さん。
「い……いや……ちょっと待って……あたしの心に……そんな魔法がかかってたなら……誰がかけたの?」
「そもそも、何か変だった。あんた達は『魔法使い』の常識を知らない」
あっ……そうだ。千明さんと初めて会った時の……。
「それに、強力な魔法が使えるのに自制心が無かったり狼狽えたりし易い奴が居たら危険極まりない。だから、マトモな流派では、どんなに素質が有っても自制心やセルフ・コントロールの技術を身に付けられない奴は破門される。でも、あんた達は……」
ああああ……あの「麻薬農場」……そして、これまた、千明さんと初めて会った時……。
「あんた達の師匠は何者で……どんな目的で、あんた達に『魔法』を教えた?」
……。
…………。
……………………。
「テロ組織に……」
凛ちゃんが……そう言った。
ああああ……言っていいの?
で……でも……。
「お……おい……まさか……」
「富士山が噴火した時……あたし達、関東に居て……」
「富士の噴火の後の関東でゾロゾロ出来たテロ組織や犯罪組織のどれかに……『魔法が使える少年兵』として育てられた訳か……」
「……は……はい……」
ああ、言っちゃった……。
「マズいな……おい……」
そう言ったのは陽さん……。
「最悪だ……最悪の予想が当った」
「あ……あの……どう云う事?」
「あんた達は厳密な意味では『魔法使い』じゃない」
「あ……あの……魔法使えますけど……」
「言葉は悪いが……他にマシな言い方が無いから……勘弁してくれ……」
「えっ?」
「あんた達は……魔法も使える使い捨ての人間兵器か……下手したら、使い捨ての生きた魔力袋として育てられたんだ。組織外に出すのは戦闘の時だけが前提だから、他の『魔法使い』にこんな真似をしたら喧嘩を売ってるのも同じだ、とかの『魔法使い』としての常識を教える必要も無かった。使い捨てだから……自制心やセルフ・コントロールの技術を身に付けさせる必要も無かった……。大人になってから必要な事や、組織外で生きてくのに必要な事は、何1つ教えたり身に付けさせたりしてなかった。その代りに……何かの精神操作をされてた」
……そ……そんな……。
あ……大丈夫だ……いつもと同じだ……。
パニクった時ほど……感情が麻痺して……その代りに何も行動を起こせなく……ん?
何で、相手チームも真っ青な顔になって……。
えっ?
「おい、まさか……あんた達も同じかよッ⁉」
陽さんの怒鳴り声に……カクカクと壊れた人形のように首を振り続ける相手チーム。
あはははは……。
やっぱり「魔法少女」に闇堕ちなんて……要らない……。
あたし達は……最初から深い深い深い闇の中に居たんだ……。
「運営の親会社がヤクザ」なんて、闇の入口に過ぎないような……とてもとても……とぉ〜ッても深い闇の中に……。




