5.少しの間の別れと新しい出会い
やっと私の書きたかったところに入ってきました!5話目です、今回も少し長めになってしまいました。
あっという間に一か月が過ぎてついにロストワール様がアル―ナス学園に行くために旅立つ日が来た。
私はロストワール様を見送るために王城に来ていた。
アル―ナス学園はルージェント学園と同じ5学年がある。
きっと次ロストワール様に会えるのは5年経った星の月あたりだろう。
少しの間の別れに私は悲しくなった。
私はロストワール様の元までゆっくりと歩く。
遠くから見たこれから旅立つ彼の後ろ姿は11歳に見えないほどだいぶ大人びて見える。
私はその時彼を遠くに感じた。
渡り廊下からまだ少し肌寒い春の風が吹いた。
彼は私に気が付いて振り返って笑みを作った。
私は涙が出そうになるのをこらえて少し速足で彼のところに向かう。
彼の元に追いつくと鏡の間へと向かう。
アル―ナス学園へは鏡を渡っていくため私はその鏡の間で彼とお別れだ。
私たちはどちらも声をかけずに静かにただ歩く音が廊下に響く。
そして少しずつ鏡の間へと近づいていってしまう。
私は今まで彼と出会ってからの約6年間を思い出していた。
婚約者になった彼はいつでも私に微笑みかけてくれた、優しくしてくれた。
彼と一緒にいる思い出は私にとっての宝物だ。
私の奥底からたくさんの感情が押し押せてきた。
本当は彼と少しの間でも離れたくなかった。
一緒の学園にだって通いたかった。
鏡の間に着いてもなかなか声を出すことができない。
私は何も言えない自分が情けなくてうつむいてしまった。
その時上から声がした。
「アリシナ、私は少しの間、貴方に会えない。...でも必ず5年経ったら帰ってきます。それまで、どうか私を待っていてくれませんか?」
私は咄嗟に顔を上げる。
彼はいつもの微笑みの中に悲しさをにじませた顔をしていた。
私は頷きながら答える。
「わかりました、待ってます。いつまでも。」
たった5年の別れなのにと他の人は言うかもしれない。
でも私にとってはそれはたったの5年ではなく長い5年なのだ。
彼は一瞬驚いでいた顔をしながら最後に一言こう言った。
「ありがとう、また5年後に会いましょう。」
そう告げた彼は光輝く鏡の中へと姿を消した。
彼が完全に消えると今まで輝いていた鏡はもとの鏡に戻った。
その時私は決意した。
次彼と会うときに彼に相応しくなれるようにいろんな人と言葉を交わし、様々な知識を身につけようと。
私はルージェント学園の校門をくぐる。
今日から私はルージェント学園の生徒になる。
これからの新しい出会いに期待を膨らませて歩き始めた。
校門からはしっかりと自分の足で歩かなければいけないため私は少し早めに学園に来ていた。
教室に入るとまだ数人の生徒しか登校していなかった。
私は休み時間に読む用に持ってきた本を開いてホームルームが始まるまで時間をつぶそうと思いしばらく本に集中していた。
誰か有名な方でも入ってきたのかクラスがざわついたため私は本をゆっくり閉じて騒ぎのもとを探した。
その騒ぎのもとにいたのは最近ガラトス男爵の養子として引き取られたルーナトルテ・ガラトス様だった。
彼女はキャラメル色の綺麗な髪の毛を横に二つに結わえていて、とても可愛らしい容姿をしていた。
貴族の令嬢たちは「平民から成りあがった小娘。」や「なぜ元平民がこんなところにいるのかしら。」と好き勝手に彼女の悪口を言っている。
その悪口を聞いた私は少し眉をひそめる。
彼女をしばらく観察していると不意に彼女と目が合う。
私は目が合った彼女に微笑みかけた。
その時なぜか彼女は驚いた顔をしている。
私は悪口を次から次へと吐く貴族のご令嬢方に一言言おうと思い席を立ちあがった。
国民のお手本とならなければいけない貴族が勝手に悪口を人に言ってはいけない。
なぜ彼女たちは根っからの貴族であるはずなのにちゃんとしたマナーが備わっていないの?
私は悪口を言う令嬢に向かって声をかけた。
「皆さん、人の悪口は言ってはいけませんよ?ご自宅の家庭教師にも習いましたよね?」
あたりは静まり帰って悪口を言っていた令嬢たちは慌てだした。
「あの、アリシナ様申し訳ございません。違うんです...ええと、悪口を言い出したのは...。」
一人の令嬢が話し出して口ごもる。
私はため息を吐いた。
あまり自分の家の権力には頼りたくないのですが....。
「今回は聞かなかったことにします。でも、次またそのようなことを口にした場合は私のお父様にご報告させていただきます。」
私のお父様はこの国の宰相で周りの貴族からは王家の次に強いとされている。
そのお父様をこんなところで出すのは本当はよくないけれどこの方法が一番相手を黙らせられるだろう。
「あ、ありがとうございます。アリシナ様尊大なご配慮、ありがとうございます。」
悪口を言っていた令嬢は逃げるように教室を後にした。
その様子を見ていた他の貴族もだんだんと自分の教室に戻っていく。
私はまだ教室の出入り口に立っていた彼女に向き直り口を開く。
「さっきのご無礼なことは貴族を代表して私が謝罪いたします。」
私は頭を下げた。
令嬢の統率が取れないのはすべて上流貴族の責任になると私は考えている。
だから、貴族を代表して公爵令嬢としての私は頭を下げた。
そうすると彼女は焦ったように口を開いた。
「あ、あの、どうか顔をお上げください。貴方のような上流貴族の方が頭を下げるなんてだめ..してはいけないと思います。」
最近貴族になった彼女は、貴族の話す言葉に慣れていないのか慌てながらも頑張って貴族の言葉でしゃべろうと努力していた。
私は思わずクスリと笑う。
「え?」と言いながら彼女は私の顔をまじまじと見る。
「申し訳ありません。あまりにも必死だったのでつい...ふふっ。」
私は笑いを止めて挨拶をした。
「私はアリシナ・ヴェルディーンです。これからよろしくお願いします。何かわからないことがあったならぜひ私に聞いてくださいね。」
彼女はまた焦ったように口を開く。
「私はルーナトルテ・ガラトスです。えと、よろしくお願いします。」
「ええ、よろしくお願いしますね。ルーナトルテ様」
「えっと、すいません。おこがましいかもしれないんですが様は付けずにどうかルナとお呼びいただけますか?」
私はまたクスリと笑う。
「わかりました。ではルナ、私のことはアリシナと呼んでくれるかしら?」
「ええ?!それはちょっと...いいのですか?」
私は彼女の反応が面白かった。
最初見た時は悪口を聞いてもまったく気にしないすごく気の強い子なのかと思いきや、話してみると小動物のようになってしまうのが面白かった。
私は微笑んで答える。
「ええ、ぜひ。私、実は名前を呼び捨てで呼びあえる友人が欲しかったのです。」
考えていた彼女は頭の中でやっと回答が出たらしくこう答えた。
「...わかりました。」
私たちはまだ教室の出入り口で喋っていたため入ってきたクラスメイトが驚いた顔をしている。
きっと2つの意味で驚いているのだろう。
1つ目は教室の出入り口で話していること、2つ目は公爵令嬢の私と男爵令嬢の彼女が話していること。
私はこれからの未来いろんな人と交流していきたいと思っていた。
だからこのことは私の思いが初めて叶って、一歩を踏み出せた時だったのかもしれない。
私たちは座る席が自由だったので隣同士に座ってそれからしばらく他愛もない話をした。
その時間はロストワール様と話す時間と同じぐらい楽しく、この学園でもうまくやっていけそうだと私は感じた。
話しているとチャイムが鳴り入学式が始まって今日は終わった。
今の季節は春で少し暖かい風が吹いている。
その日の夜は綺麗な満月で、これからの学校生活を表しているようだ。
私はこれからの学園生活を思いながら自分の寮の部屋で深い眠りについた。
この時まだ私は気づいていなかった、着々と裏で大きな事件が動き出そうとしていたことに。
次回の投稿は明日の20時です。本編を投稿するまであと4日。




