45.ずっと、永遠に
これが本編の最終話です。
※人物が多くてすいません!
私は最後のページを見た後に本を閉じる。
一度息をついてからこう零す。
「すごいね、ここは。私の前世の話がこんなに事細かに書いてあるなんて...。」
「やっぱり、全部書いてあったんだ?」
彼は他の本を読んでいた手を止める。
「そうみたい、でもすごいよね。私の前世が公爵令嬢だったなんて。」
自分の前世に改めて驚く。
「確かに俺も前世が王子だったなんて半分信じてなかったよ。」
彼―瀬名 煌麗、元ロストワール・イグニア―も自分の前世が半分信じられなかったらしい。
机の上で肘をついて彼はまた口を開く。
「まあ確かに名前は変わっても前世と同じ姿で生まれてるっていう時点で信じるべきだったんだろうけどね。」
「そうだね、でもみんな転生してたなんて、普通は思わないよね。」
「確かに、みんな同じところに転生してるなんて思わないよね。」
お互いに頷き合っていると彼女たちがそれぞれの本を持ってやってきた。
「あ~、また二人でイチャイチャしてる!私も入りたい!」
と駆け寄ってくる彼女は蓮寺 美藍―元ミラディエ・カサルト―だ。
その隣で「いつもこんな感じだろ?」と言っているのが淳良義 雷雅―元ライアー・フィバルブ―で、さらに後ろからやってくるのが島野 咲―元ルーナトルテ・ガラトス―に、いつものように少し冷めた感じでみんなを見ている高峰 怜依―元スレイド・コルトノール―がいる。
そして同じ机で本を読んでいた絢美 咲花―元サナティア・ウェローズ―と隣にいる柊 シエル―元シェイナス・ヴェルディーン―に、時雨 佳香―元キャロル・メンティー―に、西連寺 祐貴、それに私、柊 愛梨―元アリシナ・ヴェルディーン―がここにいる。
前世で友人だった人たちが今世でも一緒にいる、それはどれぐらい奇跡が起きたらそうなるだろうか。
最初は自分の前世が完全に受け入れられなかった。
性格も名前も違う、
今でも少し信じられない部分もあるが、これは現実だ。
全員が同じ年代の同い年に生まれたのには何か意味があるのかもしれない。
煌麗とは小さい頃からの幼馴染で、それ以外の人は小学校から一緒になった。
自分が転生者だと気付いたのは3歳になった頃だった。
煌麗と遊んでいた時に急に頭が痛くなって目の前が真っ暗になった。
目を開けると病院のベットの上で、煌麗が心配そうに見ていたのを覚えている。
一週間ほど入院することになった私は面会時間外に病院の屋上に出た。
その時にある人に出会った。
それは、私に前世で加護をくれた神様、サシャだった。
「久しぶりだね。愛梨、君は前世のことを覚えてる?」
彼は笑いながら私に言う。
何のこと?前世?私に前世があったの?
考え出した瞬間に頭の中に流れてくる前世の記憶、それがアリシナとして生きた記憶だった。
そこで初めて私が転生者だったことが分かった。
私はサシャに転生のことを聞こうと顔を上げた。
そこには、誰もいなかった。
いつの間にかに病室に戻っていた私は泣いていた。
なぜ泣いているかは分からなかった。
何か、大切なことを忘れているような、そんな気がした。
でもそれが何かは分からない、一人では分からなかった。
そしてタイミングよく病室の扉が開いたと思ったら煌麗が駆け寄ってきた。
そして驚いたような顔で私を見てこう言った。
「アリ、シナ......?」
彼は私の頬に手をあてて愛おしい人を見るような年齢にそぐわない顔を私に向けた。
その瞬間、確実に私の中の何かが波打った。
なんで彼が私の前世の名前を知っているのだろうか。....彼は、ダレ?
一気に頭の中に彼、ロストワール様と過ごした日々が、記憶が、頭の中に入ってきた。
なぜかその記憶を思い出した時に「ええ、帰りなさい。あなたのことを大切にしてくれる人たちがいるところに。」と言った泉の女神のことを思い出した。
私は目の前の彼が前世で私が慕っていた人、ロストワール様と重なる。
ああ、彼だ。
明確な証拠はないけれども、自分の本能、魂がそう言っていた。
前世で私と契約を交わした妖精が言っていたことを思い出す。
「アリシナ、人間の魂はね、結び付くまでに時間が必要なの。でもね、その魂同士が結びつくとなかなか離れない...いや、違うわね。離れないようになっているのよ。」
「人間の魂の結びつきにはいろんなパターンがあるんだけどね。例えば、君とロストワールの魂は完全に結びついている。まあ、獣人とかで言う番みたいなものだね。つまり、君たちはいつ、どんな時に出会っても魂同士が引き寄せ合って近くにいることが多いんだ。まあ、違う場合もあるみたいだけどね。」
「きっとアリシナは来世でもロストワールの近くに生まれることになるわ。これは絶対よ。私たちもたぶんいつか貴方の前に現れると思う。その時は.....私のことを嫌わないでね。たとえ記憶を失っていたとしても。」
その時のルーシエとウェルの顔は少し寂しいような、安心しているような、そんな微妙な顔をしていた。
私は現実に戻って口を開く。
「煌麗、貴方は...ロストワール様?」
彼は笑い泣きしながら答えた。
「...ああ、そうだよ。私はロストワールだよ。」
そのあとは二人で一杯泣いて、そのあとは顔を見合わせて笑いあった。
小学校に入った時には完全に前世の記憶がよみがえっていて、すぐに他の人たちのことが分かった。
そして、月都学園に入った私たちは夏休みの間に自分たちの記憶が正しいかを確かめに来たのだ。
―ここ、転生者限定の巨大図書館に
「やっぱり彼女も転生者なのね....愛珠海先輩も。」
私は思わずつぶやいた。
私達の二つ上の学年、1紀生にいる現生徒会長、それが白井 愛珠海先輩―たぶん、前世で会ったアズミ―だ。
彼女は生徒会として完璧に仕事をこなしていると噂のかなり、いや、人間の所業を超えるほどの実力らしい。
前世の彼女と同一人物なら納得ができる気がした。
「たぶんそうだね。」
煌麗も私と同じ意見なのか頷いている。
私は彼の手を自然と握る。
するとそれに気づいた彼も握り返してくれた。
どちらからともなく笑みが零れる。
しばらく自分の本を見る時間を取った。
何時間そこにいただろうかというくらいの時に彼が口を開いた。
「さあ、もうそろそろ帰ろうか。」
彼がそう口にするとみんなが自分の読んでいた本を元の場所に戻すとそれぞれが入ってきた扉へと向かう。
私は彼と手をつないだまま同じ扉を開く。
扉を開けるといつも通りの自分の家、自分の部屋に出た。
「煌麗、お茶飲んでく?」
「...そうだね、そうしようかな。」
私は立ち上がってお茶を取りに行った。
―私たちは再び人生をやり直し始める、自分のの目的のために
俺はお茶を取りに行った愛梨を待つ間に昔、前世のことを思い出す。
彼女が亡くなった時、俺は壊れた。
ほとんどの感情が抜け落ちた。
誰が何を言おうと誰の声も俺の心まで届かなくなった。
自分の命なんてどうでもよくなった。
何回自分で死のうとしたか分からない。
でもいつも彼女の最後の言葉が脳裏を掠めて思いとどまった。
「来世でも逢えたら、いいですね。」
そんな言葉を言われるとは思わなかったし、彼女がそう思ってくれていたことが何より嬉しかった。
彼女の妖精もこう言っていた。
「貴方が死んでどうするの?彼女の望みは貴方に生きてもらうことなのよ?」
「貴方が死んでも彼女はかえってこないよ。」
と言われた。
そんなの分かってる。
誰よりも分かってる。
母親がエルフというだけでこんなにも寿命が違うとは思わなかった。
いっそのこと普通の人間として生まれていたらと思った。
目の前が真っ暗になった俺の前に少女は現れた。
久しぶりに見たアズミは昔見たアズミの姿と変わらずそこに立っていたのを覚えている。
「久しぶりね、ロストワール。アリシナは生まれ変わることにしたみたいね。」
彼女は不思議な人だ。
いつも突然現れて、何かの助言をしてまた消える。
そしてまた出てくる、そんな神出鬼没な人だ。
俺は声が出せなかった。
驚きと彼女の言っている意味が理解できなかった。
彼女は微笑みながら続ける。
「私ね、頼んできたの。もしも、アリシナの願い、ロストワールが目一杯生きて死ぬことが達成したならば彼女と同じ世界に貴方を生まれ変わらせてほしいって、ね。」
誰に頼んだかはわからないが、彼女は嘘をついていないと思った。
俺はやっと出せるようになった声で彼女に問う。
「私は....何を、すれば、いい?」
彼女はすぐに答える。
「生きることよ。....じゃあ、私はもう行くね。」
そう言って彼女は姿を消した。
それから俺は老死するまで生き抜いた。
何代目かの王の就任をこの目で見届けた。
最後は妻の、アリシナの墓の前で息絶えた。
最後まで彼女と一緒にいたかった。
それが、俺の、前世の私の、願いだった。
そして俺は違う世界にまた生を受けた。
そして、また彼女とともに人生を歩むことができる。
これからずっと、永遠に。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。本当はもっと早く終わるはずだったのですが、なかなか最終話になりませんでした。ぜひこの作品についての感想や、評価をしてくださると嬉しいです。これで『君の大切さを知った日に』の本編を終了させたいと思います。ぜひこれから出す他の番外編の話も読んでいただけると幸いです。期間が開いてしまうかもしれませんが、続編か番外編を書きたいと思っております。『Restart black another story』は明日の20時から毎日投稿する予定です。※『Restart black another story』は『Restart』シリーズのところからページにとべます。
追記:2021年3月15日から続編を投稿していく予定です。毎日投稿にするかはまだ決めていません。




