39.春と夏の変わり目に
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※アリシナ→ロストワール→アリシナの視点です。
私は鏡に映る私を見る。
そこには、白いベルラインのドレスを着た私が映っている。
薄くピンク付いた唇に綺麗に見えるように施されたメイクはティナの力作だ。
鏡の前でくるりと一回転してみるとフワリとレースが舞う。
下から上にかけて綿密な白バラの刺繍がされていてとても綺麗だ。
「ドレスに見劣りしてしまいそうですね。」
とつぶやくと壁に控えていたティナが口を開いて抗議した。
「それはあり得ません、今のお嬢様は世界で一番綺麗です。」
私はクスリと笑う。
「それは言い過ぎよ、だってこのドレスはカルーシャ様が作った特注のものよ?」
カルーシャ様というのはイグニア王国で一番人気のデザイナーだ。
そんな彼女が手掛けたドレスにかなう人はなかなかいないだろうとアリシナは思ったのだ。
ちょうどその時、扉のノック音が聞こえた。
「アリシナ様、入ってもよくて?」
ミラの声だ。
「ええ、どうぞ。」
私は扉の横に立っていたメイドに目配らせをする。
開いた扉から友人が入ってきた。
「っ...アリシナ様、綺麗です....。...ああっ」
と入ってきた瞬間に目を見開いたあとに何かを崇めるかのように手を握りしめ泣きだしたキャロルはそう言って後ろに倒れそうになるところにすかさずアンバー様の手が伸びる。
「キャロル、危ないよ?あと、そんなに今から泣いているとメイクが崩れてしまうよ?」
アンバー様の言う通り泣いたせいでメイクが崩れかけている。
まあ、それでも綺麗な顔をしているからメイクが落ちたところでどうなるというわけではないと思いますが...。
「アリシナ様、本当に綺麗ですわ。今日の主役ですものね、さすがですわ。」
とミラがなぜか自分のことのように何度もうなずいています。
「少しまだ早いですが、おめでとうございます。...お綺麗です。」
目を輝かせて私のことを見ているサナはそう言った。
シェイナスも微笑みながら言う。
「お姉さま、おめでとうございます。とてもお綺麗ですね。」
「アリシナ、おめでとうございます。すごく...綺麗です。」
そう言ったルナは少し涙ぐんでいる。
涙ぐむルナに寄り添うスレイド様は既に夫婦ですと言わんばかりなほど距離が...近いですね。
「皆さん、ありがとうございます。」
と私は感謝を込めて言う。
さらに、扉の開いた廊下の方からミルクティーブロンドの髪が見えた。
彼女は微笑みながら口を開く。
「おめでとう。幸せになってね。」
そう口を動かして、私以外の誰にも気付かれない間に彼女は姿を消した。
すると今度はロストワール様が微笑んで、いや、ニコニコ顔でやってきて言う。
「アリシナ、きれいです。そして...他の皆さん結婚式にご参加いただきありがとうございます。しかし、私がまだ会っていない花嫁を誰が先に見ていいと言いましたか?」
彼がみんなに向ける笑顔が怖いです。
「ロストワール様、今回出席できなかった方から祝電が届いています。そちらに目を通しておきませんか?」
私は祝電を手に取って彼に見せた。
「そうだね、そうしようか。...命拾いしたみたいだね?」
と最後に意味深なことを言っていたが気にしないほうが良さそうだ。
数時間後、教会の扉の前に私は立っていた。
ゆっくりと扉が開くとともに拍手の音が聞こえた。
みんなが立ち上がってこちらを向いて拍手をする。
道の端には孤児院の子供たちが楽しそうに花びらを散らしている。
アリシナがこの半年間でいろんなところの孤児院に行っていた時に会った子供たちだ。
祭壇の方には神父様とロストワール様がいる。
私は途中でお父様の腕から手を離した。
その時のお父様は少し寂しそうな、嬉しそうな、そんな顔をしていた。
私はロストワール様の腕に私の手を絡めてまた祭壇へと歩き出す。
「ロストワール・イグニア、貴方はアリシナ・ヴェルディーンを妻とし、健やかなるときも、喜びのときも、悲しみのときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、ともに助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
と神父様がロストワール様に問う。
「はい、誓います。」
「アリシナ・ヴェルディーン、貴方はロストワール・イグニアを夫とし、健やかなるときも、喜びのときも、悲しみのときも、夫を愛し、敬い、慰め合い、ともに助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
今度は私に問う。
「はい、誓います。」
その後は指輪を交換して、触れるだけの誓いのキスをした。
披露宴が園庭で行われていろんな方に賛辞を受けた。
結婚式が終わりついに今日、私は王城の住人となった。
私とロストワール様の部屋は相部屋とそれぞれ相部屋につながる自室が用意されている。
私は王城のメイドが張り切って私の肌をツルツルに磨き上げたので疲れてしまった。
キングサイズの天蓋付きのベッドに腰を下ろす。
とりあえず私はロストワール様を待つことにした。
今日は待ちに待った結婚式だった。
ウエディングドレスで着飾ったアリシナはそれは女神のように輝いて見えた。
先に私以外の男が彼女のウエディングドレス姿を見たのは許せなかったがアリシナがあまりにも綺麗だったので今の今まで忘れていたが、許さない。
今度会ったらよく言っておこうと思った。
自室で夜着に着替えた私は彼女がいる相部屋へと向かう。
扉を開けると彼女がベッドの上に座っていた。
私に気づくと彼女は私に微笑みかけた。
ああ、やっと、やっと彼女と結婚できた。....本当に、長かった。
私はアリシナが座っている隣に座った。
「アリシナ、愛してるよ。」
「ええ、私もです。」
どちらからともなく唇を重ねた。
彼女の頭を手で押さえてさらに深く唇を重ねる。
私はどこかで理性が途切れた、というか途切れていた。
窓の外からは、鳥のさえずりが聞こえる。
横には疲れて寝ている彼女の姿があった。
ちなみに私はすごく元気です。
...彼女を押し倒したあたりまでは覚えている。
いや、全て覚えているが、自制が効かなかった。
誰に言い訳しているのかわからなくなった私は思考を放棄することにした。
横ですやすやと眠る彼女の髪を人房取ってキスをする。
起こさないように彼女の頭をなでて頬にまたキスを落とす。
もう、絶対に離さない。
再びベッドにもぐりこんで彼女を抱き寄せて二度寝をしようとするとタイミングよくノックが聞こえた。
「朝食のお時間です。」
と外からメイドの声が聞こえた。
彼女はその声で目を覚ましてしまった。
目をこすってぼんやりとあたりを見ている。
私は深いため息をついた。
「....入れ。」
仕方なく起き上がってベッドから離れる。
「...朝食をお持ちいたしますね。」
察しの良い昔から彼女の世話をしていたメイドはそう言うと朝食を取りに行った。
やっと頭が冴えてきたのかアリシナは私の方を見て今日も微笑む。
「おはようございます。ロストワール様。」
「おはようございます。アリシナ、良く眠れましたか?」
とよく眠れたはずもないのに私はそう聞いた。
彼女は昨日のことを思い出したのか顔をほんのり赤くさせてからこう言った。
「まぁ、それほどに...よく眠りました。」
と微妙な顔で言う彼女に思わず笑ってしまった。
彼女は頬を膨らませて言う。
「少々ずるい質問ですよ、一番貴方がわかっていますのに...。」
彼女はいつもの綺麗といった感じよりも可愛いという言葉が似合うだろう。
私はそんな彼女のいままで見たことがなかった一面をまた愛おしいと思うのであった。
ーーーそれから、4年後。
いろんなことがありました。
私の結婚式の一か月後にはミラの結婚式が、そしてまたその一か月後にキャロル、さらにその一か月後にルナが次々に結婚した。
未だに彼女たち、彼らを狙っていた貴族の令嬢令息が何人嘆いたのかは計り知れないだろう。
それほどに彼女たちには人気があった。
いや、結婚した今でもその人気ぶりはすごい。
そして、その一年後には更なる被害者が、なんと、卒業してすぐの冬に、サナとシェイナスの結婚式が執り行われた。
いきなりの結婚式の知らせを一か月前に受け取った私も驚いたほどだ。
王太子妃になった私には二人の子供を授かっていた。
一人目は、今3歳の第一王子バーデン・イグニア、バーデンはこの国を建国した初代王からとったものだ。
父親譲りのブロンドの髪と私の瞳と同じ紫色の瞳をしていてまだまだ子供という外見をしているが、なぜか三歳にして異国語と母国語を完全マスターしてしまうほど才のある子供だ。
二人目は、去年生まれたの第一王女クリスティア・イグニア、私の銀髪とロストワール様の透き通ったスカイブルーを受け継いだかわいらしい子だ。
実はもう一人、いや、二人、私のお腹の中にいる。
魔力で鑑定したところ、双子なんだとか。
バーデンはフルク様がすごく気に入っていてよく自分の執務室に連れて行っているのをお父様に止められているのを見るのだ。
フレア様は今からクリスティアが大きくなったときに使うための服選びをすごく楽しそうに選んでいた。
私はゆっくりと王城の園庭を歩く。
渡り廊下の方から見覚えのある影が2つ見えた。
二人はこちらに駆け寄ってくる。
「アリシナ様~!」
と言って走るように早い足でくるのはサナ。
「アリシナ、お久しぶりです!」
と言いながらゆっくりやってくるのがルナ。
「二人ともお久しぶりですね。」
私は二人に笑顔を向ける。
きっとこんなに王太子妃と文官たちが話しているのを見たら驚くことでしょう。
最初は私の護衛も驚いていましたが、最近は慣れたのか何も言わずに後ろに控えているようです。
「最近はなかなか会えませんでしたね。また今度ここでお茶会を開きましょう。」
私たちは定期的にお茶会を開いていた。
しかし、私の懐妊が続いてまったためお茶会はなるべく控えるようにしていたのでなかなか会うことができなかったのだ。
あと1か月後に出産予定なのでお茶会ができるのもそのあとになるだろう。
「再来月にお茶会を開くのでぜひ来てくださいね。」
と二人に言うと二人共喜んでくれた。
「お体には気を付けてくださいね。」
「再来月のお茶会で元気なアリシナに会えることを楽しみにしています。」
二人はそれぞれそういうと自分の仕事に戻っていった。
再び園庭を歩くと人影を見つけた。
ピンクがかったブロンドにアイスブルーの瞳、そして私の最愛の人。
彼は私に気が付いたみたいでこちらに向かって歩いてきた。
「外に出ても大丈夫なのですか?...心配ですね、私も一緒に歩きますよ。」
と言って私の隣を当然のように歩く彼は自然に私の手を握って歩き出す。
春と夏の陽気が混ざった風が二人を包んだ。
王城の園庭を歩く二人は幸せそうな顔をしながら手をつないで歩いている。
きっと、この先もずっと。
次回の投稿は明日の20時です。最終話まであと6日。




