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33.まだ届かぬ思い

※サナティア視点です。今回はいつもより長めです。

私にはあこがれの人がいる。



その人の名前はアリシナ・ヴェルディーン様、彼女は公爵令嬢という身分でありながら決して気取らず、逆に自分をいつも律していて、まれに見せる微笑みは「天使の微笑み」と言われるほどの人気がある。

彼女にはファンクラブというものが存在していて、この国にあるファンクラブの中で一番人気が高いとされている。



普通だったら王太子様や公爵家、侯爵家の令息達のほうが人気がありそうだが、アリシナ様の人の好さのほうが上回っているため断トツでファンクラブの人数がざっとかぞえても500人は超えているのだ。



私もそのファンクラブの一員、と言いたいところだけれど所属はしていない。

所属はしていないけれどファンではあるのだ。

ファンになったのはある出来事がきっかけだった。





あれは、6年前の私が10歳の時の話。



そのころの私は自分に自信がなかった。

いつも周りの人に出来の良い兄と姉と比べられてきた。

「ウェローズ公爵家嫡男のカルート様はとても優秀で、さらに長女のテラー様も天才と言われていますわよね。ウェローズ公爵家は安泰ですわね。それに比べて...次女のサナティア様は...ご婚約できるのかしら?」といつも陰で言われているのを知っていた。

笑われているのを知っていた。



お兄様もお姉さまも本当に優秀で私に対してもとても優しく接してくれる。

私にとってはそれが辛かった。



周りは比べてくるが決して私の家族は私を比べようとはしない。



私はいつも通りお茶会に参加するが、消極的な私には話せる人がいなかった。

一人で誰もいない席に座っていると声をかけられた。



「ここに座ってもいいかしら?」




それが、アリシナ様との最初のだった。




「え、あ、はい...。どうぞ..。」



「ありがとう。」

彼女は私に向かって笑顔でお礼を言いました。



「私はこういうお茶会とかはあまり慣れてはいないのでどこにいればいいか迷いますよね。」

彼女は他の席で話している令嬢たちを見渡しながらそう口にした。

いつも話題の中に一回は出てくるアリシナ様がこういう所に慣れていないことに驚いた。

彼女はいつ聞いても「完璧な令嬢」「心優しい令嬢」と言われていて人気がある。

そのため彼女に話しかけたいと思う令嬢は山のようにいるはずなのだ。



「...そう、ですね。私も、あまり、こういうところは...苦手で。」



貴族の令嬢はこういう行事に参加することが当たり前なのだ。

私は自分が情けなくなり、うつむいてしまう。



「私はね、こういうところが苦手でもいいと思うの。だって人それぞれ感じることは違っているのだし、それはその人の個性でしょ?」

彼女はさも当然かのように言う。



顔を上げて彼女を見ると彼女の紫の瞳にはしっかりと私が映り、自分の意志がはっきりしている目をしていた。

そのときに私は彼女に憧れを感じた。



全てを手にしていると思っていた彼女にも苦手なことがあって、それでもその苦手なことに自らたち向かっていく清らかな心に惹かれたのだ。

決して自分を高めるための努力を怠らず、何に関しても知識を貪欲に吸収していくその姿は私の目標になった。





そして私は変わった。

いや、自ら自分を変えた。



次は私から彼女に話しかけようとする一心で自分を高める努力をした。

今度は私から胸を張って「私は私です」と彼女に言いたかった。



そのための努力を私は毎日重ねた。

学園に入る前に学園で習う一通りの科目は全て入学する一年前に終わらせた。





そして、時は過ぎてルージェント学園に入学して魔力測定後の休みの期間が終わってすぐにアリシナ様のいる教室を訪ねた。

彼女の周りにはいつも仲良くしているらしい令嬢と令息達が集まって座って話していた。



私は勢いよく挨拶をする。

「アリシナ様!お久しぶりです、私のこと覚えていますか?」



彼女を含むその場の皆さんは驚いていましたが、彼女はすぐに笑顔になって答えてくれた。

「覚えていますよ、サナティア・ウェローズ様ですよね?」



私は嬉しさがこみ上げてきた。



私のこと覚えていてもらえた!



「あの、アリシナ様、私のことはサナと呼んでいただけないでしょうか?」



「ええ、わかったわ。ではサナは私のことを....」

私は彼女が言い終える前に私は答える。



「アリシナ様はアリシナ様のままで呼ばせていただいてもよろしいでしょうか?」



彼女は微妙な顔したあとに仕方ないという顔で答える。

「...いいですよ。」



私はその後、そのままその話の輪に入れてもらって5分前の鐘が鳴ったので教室に帰ろうとする。

「シェイナス、サナと一緒に戻りなさい。あなたはサナと同じクラスでしょう?」

アリシナ様は弟のシェイナスに早く教室に戻れと促した。



「...わかりました。サナティア嬢、行きましょうか。」

一瞬、しゅんとした顔になってから仕方ないという顔で私の隣に並んで彼も一緒に歩き出す。



ちょうどアリシナ様たちのいる教室が見えなくなったところで急に彼にこう言われた。

「サナティア嬢、私と婚約しましょう。私とあなたなら利害が一致していそうですから。」



「あの、そんなさらりと日常会話みたいに婚約の話を話さないでもらえますか。」

すかさずツッコミをいれてしまう。



「貴方は容姿は綺麗ですから今のうちに婚約しておかないと手遅れになりそうなので。」



「シェイナス様はいつもそんなにさらっと口説き文句を言うような方なのですね。」

私は相変わらず冷めた口調で彼と話す。



「え?本心ですよ?貴方の見た目が綺麗なのは。あと私のことはシェイナスでお願いします。」



「見た目以外は綺麗じゃないのはよくわかりました。でも、そうですね。利害は一致していそうなので婚約は悪くはないかもしれません。シェイナス、その婚約お受けいたしましょう。」

とてもじゃないが私はそんなに簡単に口説き文句を口にできそうにないので婚約の話にはのってみることにする。



「では、今日両家に連絡をしておきますね。」

彼はそういうとさっさと教室の中に入っていくと思いきや私に手を差し出してこう言った。



「教室までエスコートしますよ?」

少し意地悪そうな顔をした彼は私の手をひいて教室に入った。



教室に入ると女子の悲鳴が聞こえたが気にしないことにした。







それから約2年半の月日がたち私は3年生になった。



今日は鏡の月の霊の日、35日だ。

アリシナ様とルナはまだ学校に行くのは危険かもしれないので厳重な警備体制が整うまで王城で暮らしている。

警備体制が整うのは来年になる頃になるだろうと言われているので少し学校に行くのが退屈だ。



退屈ではあるが今の期間はテスト期間なのでわりと終わるのが早いのが救いではある。



早くテストなんて終わらせてアリシナ様のところに行きたい....。



明日でやっと長かったテスト期間が終わる。

テスト期間は半週間、つまり約6日ほどかけて行われる。

一日3、4科目の合計22科目と科目数が多いので、わりとゆっくりした進みのテスト期間が設定されているのだ。



テスト期間が終われば来週の48日の答案返却日と49日の終業式で今年度が終わり、次学園に投稿するのは来年になる。

星の月は完全に1か月間休みなのでその間に旅行に行く家もあるそうだ。



もちろん私は毎日登城してアリシナ様のところに行く予定だ。



私は問題を解き終わり暇だったのでこれからの計画を立てることにした。



とりあえず37日から休み期間に入るから...。



私は空いたスペースの問題用紙に予定を書いていく。

37日、アリシナ様に会いに行く。38日、アリシナ様に会いに行く。39日、アリシナ様に会いに行く。40日、アリシナ様に会いに行く。41日、アリシナ様に会いに行く。....



一通り終業式までの予定を書いたつもりだったがいつの間にかにすべての日に「アリシナ様に会いに行く。」と書かれていた。



まあ、私が書いたのだけれど...。



ちょうどタイミングよくテスト終了の鐘が鳴る。

テスト期間はHRがないのでみんなそのまま家に帰る。



私も筆記用具などを片付けていると目に前に誰かが来た。

見上げると、シェイナスだった。



「サナ、今日のテストはどうでしたか?」



「あら、シェイナス。片付けるのが早いのですね。テストはいつも通りでしたよ。」



「では今回も貴方が一位ですね。来年は私が一位を狙いますので貴方も本気を出してくださいね。」

と笑顔で彼は言う。



この人は、皮肉なことしか言えないのだろうか。



「はぁ、そうですね。次は狙いますよ。...たぶん。」

と適当に返しておく。



成績はいつもシェイナスが一位で私が二位なのだ。

私は特に競争心はないので順位は気にしないが毎回シェイナスの皮肉染みた言葉は聞き飽きたので次は本気でやろうと思ったのであった。



私は帰る準備ができたので席から立ち上がって出入り口のほうに向かう。

そしてなぜかシェイナスは私についてくる。

もう何度も聞いても「私はサナの婚約者ですから。」と言われるだけなのであきらめるてついてくることを気にしないようにしている。





この前も他のクラスの、名前は忘れたけれど、どこかの貴族の令息から「あの、ちょっとお時間いいですか。」と言われたので「早く終わるの...(ならば)」と言おうとしたのを遮ってシェイナスは「サナ、早く行かないとこの前食べたいと言っていた人気のスイーツが売り切れてしまいますよ?」と言ってきたのだ。

話しかけてきた令息は「あ、あの。シェイナス様、今僕は彼女と...。」と言いかけたが「なにか?」と言葉を遮りながらなぜかすごい笑顔で返していた。

「すいませんでした!」と言ってその令息は走り去っていた。



あの時は意味が分からなかったわ...なぜ、私に話しかけたのかしら。



走り去っていった令息などここにはいなかったかのように「サナ、行きましょうか。」と言って歩き出してそのまま有名スイーツ店に行って新作スイーツを二人で食べに行ったのだ。

シェイナスはお店の予約を取っていたらしいがそんなに急ぐ必要があったのだろうか?





私は足早に教室を出て外に向かう。

まだ季節は冬なので寒い。



外に出ると冬の冷たい風が通り過ぎた。

少し身震いしていると私についてきていた彼が待ってましたと言わんばかりのいいタイミングでストールを私の肩にかけた。

「今の時期は冷えるので気を付けてくださいね。」



彼は昔会った頃よりかは自然に接するようになった。

というかいつもアリシナ様には絶対に言わない余計なことまで言うようになったのは少し物申したいと思っている。



私は気づいている。



次第に彼に惹かれていることに、でもきっと彼はただの同志だと思っているのだろう。

まあそれでもいいと思っている。

人生は長い、だからこれから私は彼を口説いていこうとおもう。



「めずらしく気が利くのですね。私の婚約者さん?」

私はそう言い終わるとさっさと門の前に止めてある王城行きの馬車に向かう。







彼女は気づかない、置いて行かれた彼が独り言をつぶやいていたことを。







「サナ、好きですよ。」



その声は誰にも届かず、雪が降りそうな寒い曇り空へと消えっていった。

次回の投稿ではキャロル視点に変わります。次回の投稿は明日の20時です。明日は『Restart side

ストーリー』の方も20時に投稿しますのでぜひそちらの方も見て下ると嬉しいです。最終話まであと12日。

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