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ぼくが死ぬまでに  作者: わたぼうし
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ぼくの未練は…

ぼくの本当の未練は、『サヤカに幸せに生きて欲しい』だった。それは見事に果たされ未練はなくなった。

本当はぼくが幸せにしてあげたかったけど、それはもう無理な話しだ。



でも、悩んでいた。

生きている時に、こんなに悩んだだろうか?と思うほど悩んでいた。


ぼくの未練はただのわがままだったのでは?


ぼくが母親やサヤカと話したいと願ってしまったために、彼女たちはこんなにも悲しい思いをしてしまったのでは?


心の整理は出来ていなかったとしても、落ち着きだした時に悲しみを蒸し返してしまったのでは?


ぼくが話したいと思わなければ…

ルイに気づかず、永遠に死の直前を繰り返しいれば…

そもそもあの時、プロポーズをしようと思わなければ…


そんな事が頭の中をグルグル回る…



そんなぼくに気がついたルイは、ぼくの手を握り

「お兄さん、何か悩んでるね。だいたいの内容はわかるよ。今までお迎えに行った人たちと同じ顔してるから」


「……。」


ルイはぼくの正面に立ち、右手の人差し指を立てた。

「いい?きっとお兄さんは、ぼくの未練のせいでお母さんやサヤカさんを悲しませたって考えてるでしょ?」


「ぅ……」


「あのね、もしお兄さんがお母さんと話さなくても、お母さんは指輪をサヤカさんに渡していたかもしれない。サヤカさんと話さなくても、サヤカさんはいつか同じ答えに辿りつくかもしれないし、そうじゃないかもしれない。そんな事、誰にも分からないことなの。霊界の大王さまだってわからないわ」

ルイは立てた人差し指をクルクルしだした。


「でもね、お兄さんが何もしなくてずっと未練を抱えていたらどうなると思う?」


ルイはぼくの答えを聞く前に話し出す。

「お母さんは、指輪の事を誰にも言えず指輪を見るたびに悲しんでいたかもしれない。サヤカさんはいつまでもお兄さんを想い、死ぬまで1人になるかもしれない。もしかしたら、そうじゃないかもしれないけど…」


ルイは少し俯いたが、すぐにまっすぐぼくを見た。

「でも、結果としては2人にとってはこれからの未来を前向きに生きるために必要な事だったの!だから、お兄さんがした事は間違ってないの!」


少し強引な話しだなと思ったが、ルイの気持ちが嬉しかった。

「ありがと、ルイ」

そうだ、これでいい。2人は強い女性だから、きっと元気に生きてくれるはず…


そう思いリビングで話している2人を見る。


「よかった…」

ルイは微笑んでいた。


ふと、心臓の辺りが暖かく感じた。

胸の辺りを見ると淡い小さな光が出ていた。


「え?これって??」

ルイを見る。


「お兄さん、よかったね。未練がなくなったの。これで霊界に逝けるよ」

ルイは微笑んで答えてくれた。


淡い光は徐々に体中に広がり、ぼくの体は淡い光に包まれた。

体は軽くなり、足が現世から離れる感覚がした。


「そうか、ぼくはやっと本当に死ぬことができるんだね」


「さぁ、お兄さん、霊界に逝こう」

ルイがぼくの手を取ると、ぼくの体は足元から光の粒に変わっていく。


「かあさん、サヤカ、今までありがとう。…またね」


ぼくとルイは、光の粒になってリビングから消えていった。


「おばちゃん、何か言った?」


「え?サヤカちゃんが何か言ったんやないの?」

2人はリビングでキョロキョロしていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆



数年後…


ぼくは1年に1回だけ許されている現世への旅にきていた。いわゆるお盆だ。

とりあえず自分のお墓で久しぶりの現世を満喫していると、サヤカがお墓参りに来た。

いつも1人か母親と来るのだか、今年は知らない人と2人だった。


「サトル、サヤカね結婚することにしたよ。」

サヤカはぼくのお墓に手を合わせつぶやく。


「この人はタケシくん。タケシくんはサトルもまとめてサヤカが好きって言ってくれるの。サトル、約束通りサヤカの中で幸せにしてあげるね」


サヤカとタケシはお墓にもう一度手を合わせると、立ち上がり墓地の出口に向かい歩き出した。


「サヤカ。幸せそうな顔もやっぱりかわいいね」

ぼくは2人を見送りながらつぶやいた。


ふと、サヤカが振り返り

「しってる…」


「どうしたん?」

タケシは不思議そうな顔でサヤカに尋ねる。


「んーん、なーんでもなーい。行こっ!」

あはははと、サヤカの笑い声が響いていた。

ぼくが本当に死ぬまで…を読んで頂きありがとうございました。

これで完結となります。

拙い文章で読み難かったと思いますが、お付き合いいただきありがとうございました。

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