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ぼくが死ぬまでに  作者: わたぼうし
2/20

ぼくの名前は?

ルイはぼくを上から下までゆっくりと見て言った。

「お兄さん、自分の名前わかる?」


「は?」

ぼくは何を聞かれているのか理解できなかった。

普通は、

『お兄さん、名前なんていうの?』とか

『お兄さんの名前教えて』とかだろ?

『お兄さん、自分の名前わかる?』ってどう意味だ?

ぼくが、ルイの質問の意図が分からず固まっていると


「んー?もしかしてわからない?」

ルイは首を傾げながら、こちらを見ている。


「いやいや、名前くらいわかるさ!ぼくの名前は…」

あれ?名前、なんだっけ?

ぼくは自分の名前が思い出せないことに気がついた。

頭の中にモヤがかかり、名前を思い出そうとしてもなにも浮かばない。

思い出そうと考えていると、突然、頭の中を鋭い痛みが走り両手で頭を押さえて蹲ってしまった。


「あちゃー!そこからかー!」

ルイは右手で自分の額を、ぺちっと軽く叩いて天を仰いでいる。


「お兄さんさー、ちょっとルイに付き合ってくれるかな?」

まだズキズキする頭を押さえているぼくに、ルイは何も気にしていない感じで話しかけてきた。


「とりあえずさ、今は何も考えず落ち着こうか。そしたら頭痛も治まってくるからさ。」

ルイはぼくの頭を撫でながらニコニコしている。


しばらく何も考えないようにしていると、不思議と頭痛は治まり気持ちも落ち着いてきた。


「落ち着いた?そしたらついてきて来て」

ルイは、小さな手でぼくの右手を引いて歩き出す。


「ちょ、ちょっと。どこ行くん?ぼくはいったい??」

「まぁ、いいからいいから。ルイについてきて」

ぼくはゆっくりと立ち上がり、ルイに手を引かれて歩き出す。

いつもの駅に向かう角を曲がると、急に意識が遠のく感覚に襲われた。


「ほらっ!しっかり!」

ルイはぼくの右手をきゅっと握り声をかける。


ぼくは頭を振り意識を保とうと、空いてる左手で自分の頬を叩いた。


角を曲がって数メートル歩いた所でルイは立ち止まり振り返る。

「お兄さん、ここわかる?」


そこは、道幅が5メートルくらいの歩道がない道。いつも駅に行くのに使っている抜け道だ。

目の前には電柱があり、足元に花が置かれている。

ここで事故があったのかと、思い耽っていると


「お兄さんは、ここで死んだのよ」

ルイは少し悲しそうな顔で言った。


「え?」

いま何を言った?

ぼくが死んだ?いつ?なんで?

まったく意味がわからない。


「いやいや、ぼくは生きてるし、いま君の目の前に立ってるし、こうして話してるやん!」

ぼくは混乱しながら反論した。


ルイは腕を胸の前で組み、軽く息を吐き

「んー。お兄さん自分の姿見てないの?」

少し呆れた顔で言う。


いま、そんな話ししてないんだけど…

と、思いながら

「先週、鏡が壊れたから見てないけど」

少し憮然とした感じで返事をしてしまった。


「あー、なるほどねー。」

ルイは辺りをキョロキョロし、カーブミラーを見つけると

「お兄さん、自分の姿見てみて」

そう言って、ぼくをカーブミラーの前に立たせた。


そこには頭と顔の左側が血塗れで、両腕と両膝に大怪我を負った自分がいた。

「ええ!?」


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