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ぼくが死ぬまでに  作者: わたぼうし
18/20

あの日…

ピピピ…カチっ


ぼくはいつもより30分早く起きていた。

今日は運命の3月20日!


今日の予定は、午前中にプロジェクトリーダーとして発令を受け、昼からは大阪に帰る。


夕方、サヤカと大阪で待ち合わせし、夜景のキレイなレストランでプロポーズするのだ!


昨日の夜から緊張して睡眠不足気味だか、テンションが上がっているからか全く眠くない。


昨日の晩から何度も確認したが、もう一度確認する。


「新幹線の切符…ある! レストランの予約…OK! 婚約指輪…よし!」


ぼくは部屋の中央にある、小さなテーブルの上に置いている小さな箱を手に取った。

小さな箱は上半分が赤く、下半分が白い。フェルト生地なのか手触りのいい質感だ。

上半分の赤い部分をパカッとあけると、中には小さなダイヤが付いた指輪が輝いていた。


ぼくは指輪を見て、サヤカが喜ぶ姿を想像しニヤニヤしてしまう。


真剣な表情に戻りそっと蓋を閉めて、指輪の入った小さな箱を胸のポケットに大切にしまう。


7時になり、忘れ物が無いか確認していつものように駅に向かった。


駅前の大通りの一つ手前の道を曲がり、しばらく歩くと駅に到着する予定だった。


ほとんどのクルマは大通りを利用するので、ぼくはクルマが少ないこの道をよく利用していたのだ。

角を曲がり数メートル歩いた所で、後ろからのエンジン音に気がつき振り向いた。


目の前にはクルマがいた。

とっさに両手で体を守るが、なんの役にも立たない。

気がつくと、ぼくは空中にいた。

クルマに跳ね飛ばされたのだ。

運転してしたのは、70歳代の男性だった。

跳ね飛ばされた瞬間、ぼくと男性は目が合ったのだ。

男性は目と口を大きく開け、ひどく強張った顔をしていた。


ぼくは地面に叩きつけられた。

体中が痛いと言うより、熱い。

もう何がどうなっているのかわからなかった。


ふと、目の前に小さな箱が落ちていた。大切な、とてと大切な指輪の箱だ。

地面に叩きつけられたときに、胸ポケットから飛び出してしまったのだろう…

ぼくは右手を伸ばそうとするが、腕が動かない。

それでも必死に、少しずつ腕を伸ばしやっと箱を掴むことが出来た。


右手を胸の前に戻し、箱を握りしめる…


だんだんと、体の痛みが和らいで遂にはどこも痛くなくなった。

すると今度は強烈な寒さが訪れてきた。寒くて、とても寒くて体を抱きしめて寒さに耐えようとしたが、体が動かない…

周りでは何やら騒がしが、もう、目も見えなくなってきた…


ただ、寒さと暗闇だけがぼくを包み込んでいた…


そして、なにも分からなくなった…

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