3月20日
時は戻り、3月初め。
ぼくは上司に会議室に呼び出されていた。
「カタヤマくん。君の新しいゲームの企画見たよ」
「はい!ありがとうございます!」
ぼくは期待と不安に押し潰されそうにながら、上司の言葉を待つ。
「なかなか面白いね!4月からプロジェクトを立ち上げてゲームの開発に取り掛かろうか!」
上司は満面の笑みを浮かべていた。
「ありがとうございます!」
ぼくは小さくガッツポーズをしていた。
「そこで誰か補佐を付けて前準備を始めてほしいのだが、誰か希望はあるかな?」
「そうですねぇ。…あ、タケダを補佐にして頂けませんか? 彼は大変優秀で、ぼくのチカラになってくれるはずです」
上司は「ふむ…」と言いながら顎をさすり、タケダを思い浮かべている。
「よし、いいだろう。タケダくんには私から説明しておくよ。それじゃ、4月からスムーズに取り掛かれるように準備を頼むよ」
上司はぼくの右肩をポンと叩き会議室を出て行った。
「よっしゃー!」
ぼくは拳を握り両手を天に突き上げてよろこん喜んでいた。
ぼくは会議室を出て、フリースペースに向かいキョロキョロと人を探す。
「あ、タケダ!話し聞いてくれた?」
フリースペースの端の机で作業をしているタケダを見つけて話しかける。
「あ、カタヤマ先輩。聞きましたよ!おめでとうございます!」
「ありがとう!これから頼りにしてるで!よろしくな!」
ぼくとタケダは硬い握手をする。
それから4月のプロジェクトスタートに向けて、着々と準備が進んでいた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
3月15日 ぼくは会議室にいた。
プロジェクトの準備の進捗を上司に報告していたのだ。
「カタヤマくん。準備は順調のようだな。ところで、プロジェクトリーダーとして3月20日に発令を行うことにしたよ。午前中は空いているかな?」
「はい!大丈夫です」
ぼくは即答した。
「よかった。それじゃ、頼むよ」
上司はニコリと笑った。
「あの…」
「ん?なにかな?」
「発令の後、昼からお休み頂いてよろしいでしょうか?」
ぼくは、少し上目使いで上司を見る。
「ああ、構わないけど。どうした?」
「実は、今回プロジェクトリーダーになったので、この勢いで彼女にプロポーズしようかと…」
ぼくは顔を真っ赤にしながら正直に話した。
よく考えたら正直に言う必要なかったのだが、頭がそこまで回らなかった…
「おお!そうか!ようやくカタヤマも身を固める決意をしたか!オレは心配してたんだぞ!」
まるで自分の息子の成長を喜ぶように、ぼくの両肩をバンバンと叩きながら笑っている。
こうしてぼくは、運命の3月20日を迎えることになった。