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ぼくが死ぬまでに  作者: わたぼうし
11/20

未練探しのセオリーは?

そろそろみんな仕事が終わる時間帯となり、駅前の居酒屋はお客さまを迎える準備をしている。

そんな中、ぼくとルイは無言で歩いていた。


「お兄さんさぁ、確か未練わかったって言ってなかった?」

ルイが沈黙を破る。少しイライラしてるようだった。


「うっ…」

ぼくは言葉に詰まり俯く。


「なにが、『ルイ、もしかしたら分かったかもしれない。』よ!全然わかってないじゃない!て、ゆーか、アレが未練なわけ?そりゃさ、他人の未練なんていろいろだよ?もし、お兄さんがアレで霊界に逝けるなら何も言わないさ!でも、逝けないじゃん!つか、アレじゃ未練じゃなくて、ただのネタじゃない!」

ルイは一気にまくし立てて、肩で息をしている。


会議室を出たあと、ぼくの体?霊体?には何も変化が起きなかった。

当然、霊界に逝けそうな雰囲気もなく、ただぼくが楽しくて終わったのだ。


「いやぁ、ぼくのproject MMがどうなったか知りたかったし、ちょっとルイにも自慢したかったし…」

頭をポリポリと掻きながら言い訳する。


「はぁ…」

ルイは呆れて小さな右手で頭を押さえている。


「で?他に未練ないの?」

少し冷たい目でルイが見ている。


「んー?」

空を見上げながら考える。

キレイな夕焼けが見える。そういや、こうやって空を見上げたことって久しぶりな気がする。

ふと、周りに目を向けると居酒屋や喫茶店の窓にぼくとルイが映っていた。


「ルイ、周りにぼくたちの姿が映ってるけどええの?」

ぼくたちの姿が映っている喫茶店の窓を指差した。


「ん?あぁ、大丈夫だよ。生きてる人は、ルイたちが見えてないから」


「え?なんで?」


「ルイたちと、生きてる人たちとは存在する『次元』?が少しズレてるの。同じ次元ならお互いに見えるけど、ルイたちはズレた次元に存在するから生きてる人には見えないの」

ルイは両手の人差し指を立てて、少しズラしながら説明する。


「次元か…」

ちょっと心躍るワードが出てきて浮かれてしまう。


「そんなことより未練は?」

ルイの声にトゲがある。また少しイライラしてきたようだ。


「あ、ごめんごめん。それが、思いつかへんねん…」

バツが悪く俯いてしまう。


「それじゃセオリー通りに、ご家族に会いにいってみる?」


「うーん、そうしようか」

未練を思いつかないぼくはルイに従うしかなかった。


「お兄さんのご家族はどこにいるの?」


「大阪だよ。ここからだと電車と新幹線で1時間半くらいかな」

ここから新幹線の駅がある岐阜羽島までは、電車で10分くらい。岐阜羽島から新大阪まで50分、そこからまた電車で20分くらいでぼくが生まれ育った街があり、母親が一人で住んでいる。


「新幹線!?」

ルイの声がワントーン上がり、目を輝かせている。


「ああ、少し遠いけど今から移動しても夕飯の時間には間に合うよ」

この体になってお腹は空かないのはありがたいが、食べる楽しみがなくなり少し寂しい。


「新幹線かぁ…」

心なしかルイはソワソワしているようだ。


「ルイ、新幹線好きなん?」

小さな子供を見るような目でルイに聞いてみた。


「え?いや、まぁ?キライじゃないけど?あまり乗った事ないってだけだし?」

ルイは口を尖らせ、早口になる。


クスッと笑い

「じゃ、今から大阪行こうか」


「な!なによ!お兄さんのために行くんだからね!勘違いしないでよ?」


「わかってる、わかってる」

ぼくはルイの頭をポンポンと叩きながら笑っていた。


「ぶー」

ルイは口を尖らせて横を向いてしまった。



こうしてぼくたちは未練を探しに、大阪で一人暮らししている母親に会いに行くことにした。




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