ぼくとルイのはじまり
…ぴぴぴっ カチッ
「んんーーっ」
ぼくはベッドの上で両腕・両足を思い切り伸ばして、眠り足りない身体を無理矢理起こす。
時計を見ると午前7時ちょうど。
いつも起きる時間だ。
ぼくは朝ごはんは食べない派なのだ。
とにかくギリギリまで寝ていたいので、朝ごはんを食べることより睡眠を優先してるのだ。
慣れた手つきでネクタイを結び、身嗜みを…
そうだった、この前鏡を壊したのだった…
先週、会社の飲み会で飲み過ぎてしまいフラフラしながらお風呂に入ろうとしてた時、洗面台の鏡を割ってしまったのだった。
今はワンルームマンションの管理会社さんに修理を依頼中だった。
とりあえず顔を洗って、手探りで寝癖がないだろうと期待して部屋を出る。
ぼくのワンルームマンションから駅までは徒歩で10分。
近くにはコンビニやスーパーもあり、生活には便利な場所だ。
いつもの時間に、いつものように駅にむかう。
駅前の大通りのひとつ手前の角を曲がれば、もう駅まで数百メートルだ。
ぼくはいつものように角を曲がって、駅に向かっていった…
◇◆◇◆◇◆◇◆
…ぴぴぴっ カチッ
「んんーーっ」
ぼくはベッドの上で両腕・両足を思い切り伸ばして、眠り足りない身体を無理矢理起こす。
時計を見ると午前7時ちょうど。
いつもと同じ起きる時間だ。
今日も慣れた手つきでネクタイを結び、身嗜みを整える。
まだ鏡は割れたままなので、寝癖は無いことを祈ろう。
いつものように、いつもの道を歩いて駅へ向かう。
いつものあの角を曲がれば駅まで、もう少し。
いつもの角の手前に子供がいる。
10歳くらいだろうか?
少し色素の薄い髪色で、全体的に黒い服を着てる。
首筋辺りで切り揃えられた髪は、クセ毛なのか寝癖なのか所々跳ねている。
なぜか、顔はモヤがかかっているような、ハッキリとは見えない。
この辺は通学路じゃないのに、なぜ子供が?
不思議に思いながら横目で見てみると、なにやら子供がぼくに向かって叫んでいる。
子供とぼくの距離は数メートルも離れていないのに、なぜか声が聞こえない…
ぼくは少し迷ったが、子供に声をかけてみることにした。
「ボク、こんなところで何してるの?」
子供は、一瞬固まったかと思うと
「ルイは、女だ!!!!!」
ルイの素晴らしい右ストレートが、ぼくの鳩尾に突き刺さった。
「ぐはぁ!!」
ぼくはお腹を抱えて両膝から崩れ落ちていた…
「ああ!しまった!お兄さん大丈夫?」
素晴らしい右ストレートを放った自称少女のルイは慌ててぼくに駆け寄ってくる。
「お兄さん、ゴメンねぇ。でも、こんな可憐な女の子を男の子と間違えたらダメだよ。」
ルイは謝りながらぼくを介抱していた。
なんとか立てるようになり、改めて自称少女ルイを見る。
さっきはハッキリ見えてなかったが、ルイは黒いワンピースを着ていた。
目は大きく、長いまつげ。ふっくらとした少女とは思えないくちびる。
将来はすごい美人さんになりそうな少女だ。
首筋辺りで切り揃えられた髪は、少し色素が抜けた明るい黒髪。ところどころ跳ねたクセ毛は活発な少女のイメージだった。
ただ、顔色が病的に悪い。白いと言うより青白い。
ルイはぼくを上から下までゆっくりと見て言った。
「お兄さん、自分の名前わかる?」
「は?」
ぼくは何を聞かれているのか理解できなかった。